【国際親善試合 日本vsコロンビア】見どころの多い敗北

2023年1月1日

日本で一番人気のあるサッカーチーム

Jリーグの試合が開催されるスタジアムの中で、最大のキャパシティを誇るのが、
今回、日本代表とコロンビア代表の試合会場となった日産スタジアム。

2002年の日韓W杯の決勝の会場として新横浜に建設されたこのスタジアムは、
ピッチとスタンドの間に陸上トラックが隔たり、
緩いスタンドの傾斜が試合の臨場感を削いでいる。

700億円と言われるその莫大な建設費に対して、
サッカーの魅力を提供できる場所とはお世辞にも言い難い場所である。

現に、このスタジアムを本拠地としている横浜Fマリノスの試合で、
この巨大な箱が満員になることはまずない。

もし、この場所に埼玉スタジアムや豊田スタジアムのような、
巨大なサッカー専用スタジアムが完成していたら、
マリノスは浦和に匹敵するだけの観客動員数を誇るクラブになっていたかもしれないと、
個人的に思っている。

しかし、日韓W杯の負の遺産とも言えるこのスタジアムを、
満員に出来るチームが一つだけある。

日本代表チームだ。

サッカーの本場である欧州に目を向ければ、
代表チームよりも人気のあるクラブというものが存在するけど、
日本にはまだそんなクラブは無いし、今後も出てこないかもしれない。

それだけに、サッカーに興味のない日本人に対してサッカーへの門扉を開くという意味で、
日本代表チームが果たす役割はこれからも大きいと思う。

しかしながら、日本代表の活動は限定的だし、試合もいつも日本で開催されるとは限らない。

個人的には、この日のスタジアムに詰めかけた観客のうち、1人でも、
自分の住んでいる場所の近くに気軽に試合観戦に行けるクラブが存在し、
そのクラブを応援する魅力に気づいて欲しいと思う。

そんな人が1人でも多く増えていくことが、
この国のサッカー文化が熟成に繋がると思うから。

ロシアW杯以来の再戦

この日の対戦相手のコロンビアは言わずもがな、
昨夏のロシアW杯のグループステージ初戦で日本と対戦し、
大迫の決勝ゴールで日本が勝利した相手である。

ただ、覚えている人も多いと思うけど、あの試合は、
前半開始早々にカルロス・サンチェスがペナルティエリア内の故意のハンドで一発退場になり、
そのハンドで獲得したPKを香川が決めて先制するという、
日本にとってラッキーな試合展開だった。

ところが、結果的に日本が勝利したものの、その後、試合の主導権を握っていたのは、
1人少ないはずのコロンビアだったということに、
この南米の強豪の凄さを見せつけられた試合でもあった。

ロシアW杯の時のコロンビアと比較すると、
この試合でのコロンビアは7割から8割ぐらいで流しながらプレーしている印象だったけど、
最後のところでは日本の選手に自由を与えていない印象だった。

日本はたくさんシュートは打っていたけど、ペナルティエリア外からのものが多くて、
なかなかエリアの中では仕事をさせてもらえなかったね。

ただ、それはコロンビアも同じだったように思う。

シュートが何度かポストかクロスバーを叩いたように、
決定的な場面は日本よりも多かったと思うけど、
冨安と昌子は、ファルカオとハメス・ロドリゲスを擁する強力な攻撃陣相手に、
よく守っていたと思う。

結果的に、冨安がペナルティエリア内で不運なハンドを取られて、
そのハンドで献上したPKをファルカオに決められて決勝点になってしまったけど、
同じ不運がコロンビアに起きてもおかしくない試合展開だったし、
昨夏のロシアで日本に味方したツキが、この日はコロンビアに味方したと言えるだろうね。

日本の新旧10番

後半15分を過ぎたころ、ウォーミングアップエリアからベンチに戻った香川が、
大型スクリーンに映し出されると、スタンドから大きな歓声が上がった。

ロシアW杯以来、日本代表の試合からは遠ざかっていた香川だったけど、
やはり日本代表の10番を長年背負ってきた男にかかる期待というのは、
すごく大きいんだなというのを再認識させられたね。

ロシアW杯後は、所属のドルトムントで満足な出場機会を得られず燻っていた香川だったけど、
今冬に期限付き移籍したトルコのベジクタシュでコンスタントに試合に出場していることで、
コンディションは随分と良さそうに見受けられた。

昔の香川って、トップ下というポジションで紹介されることは多かったものの、実際は、
1トップの選手の周りを衛星のように動き回るセカンドトップの色の強い選手だったけど、
この試合ではボランチの位置まで下がってゲームメイクをする場面も多くて、
若い頃とプレースタイルが変わったなという印象を受けたね。

香川がピッチに入ってから、ほとんどのチャンスが香川経由で生まれていたあたり、
今後は、日本代表の新しい10番像をピッチで見せてくれるんじゃないだろうか。

ただ、森保体制になってからずっと10番を背負ってきたのは、
この日も定位置である左サイドで先発出場した中島翔哉。

背番号こそ10番から8番に変わったものの、
マーカーをいとも簡単に剥がしてしまうドリブルと、パンチ力のあるミドルシュートという、
プレースタイルには全く変化は見られなかった。

この試合で日本が得点を挙げるなら中島だろうなと感じるぐらい、
得点の匂いがプンプンしていて、観客もそれを察知したのか、
中島がボールを持つとスタジアムのボルテージが1段階、2段階上がるような雰囲気だった。

残念ながらこの試合で日本は得点を挙げることは出来なかったけど、
この試合での中島のプレーは金を払って見る価値のあるものだったように思う。

ポルティモネンセから欧州の強豪クラブへのステップアップが期待されながら、
今冬の移籍市場でカタールのクラブに移籍したことについては、
残念に思っている人もいると思うけど、
ポルトガルやFC東京にいた時と変わらずに楽しそうにプレーしている中島を見ていると、
本人が良ければそれでいいのかなと思えるね。

ボリビア戦で宇佐美と堂安の共演を

ボリビアって、高地のホームでは圧倒的な強さを発揮するけど、
アウェイでは平凡なチームになるという印象がある。

それだけに、コロンビア戦は、
現時点で考えられる日本のベストメンバーで臨んだ試合だったけど、
ボリビア戦は若干メンバーを入れ替えてくるんじゃないかと推察している。

僕はガンバサポーターなので、当然、期待するところは
ガンバユースの歴代の至宝である宇佐美と堂安が一緒にピッチに立つ姿だけど、
私情を抜きにしても、夏の南米選手権に向けて実りのある強化試合にしてほしいね。

日本01コロンビア
’19 ラダメル・ファルカオ