【明治安田生命J1リーグ12節 ガンバ大阪vsセレッソ大阪】大阪ダービーでガンバに新しい風が吹いた

2020年11月1日

この試合だけは絶対に譲れない

昨季の終盤に9連勝を達成したことで、
シーズン開幕前は今季のガンバに対する期待値は高かったように思う。

ところがその期待に反して、今季のリーグ戦11節終了時の勝ち点はわずかに8で、
順位も16位と低迷。

クルピ前監督時代の昨季序盤も苦戦を強いられたけど、
それでも11節終了時点では勝ち点10を挙げていたことを考えると、
期待を大きく裏切る結果になってしまっていると言わざるを得ない。

今節は、金曜日の試合で鳥栖が広島に勝利し、昼間の試合で清水が大分に引き分けたことで、
ガンバは暫定ながら最下位という状況で大阪ダービーを迎えることになった。

試合前に今のガンバのチーム状態の悪さを揶揄するような横断幕が、
アウェイゴール裏に掲げられていたけど、
これまでの大阪ダービーの戦績を引き合いに出すのも虚しくなるほど、
ガンバの今季の成績はそんな風に言われても仕方がないものである。
(て、言うか横断幕の字が汚すぎるのは何とかならんのか)

ダービーなんだから相手チームをからかうような横断幕を出すのも別に構わないし、
大ケガした選手を励ますためのコレオを作るのも結構だけど、対岸のピンクの連中は、
今まさにこの試合を戦おうとしている選手たちを鼓舞するつもりはないのだろうか。

知っていたけどいけ好かないヤツらだ。やはりこの試合だけは絶対に譲れない。

ドラスティックに変更が加わったスタメン

敵将のロティーナは計算高い監督である。

対戦相手を綿密に研究し、入念に対策を立て、
相手の良さを消すような戦い方を志向してくる。

しかし、前節、最下位の鳥栖に大敗を喫したガンバは、
宮本監督が大阪ダービーに向けて大幅なメンバー変更を示唆したこともあり、
誰が出場するのか全く読めないところがあった。

その宮本監督の言葉通り、この試合のガンバのスタメンは、
高尾、三浦、菅沼の3バックに、WBは右に小野瀬で左に福田。

中盤は、アンカー矢島の両脇に高江と倉田を配し、
2トップにアデミウソンとファンウィジョという、
ガンバサポーターですら予想がつかないメンバーを送り込んできた。

これには、さすがのロティーナでも対策を立てるのが難しかったんじゃないだろうか。

ただ、この布陣は、一昨季の前半にもトライしたものの、
アンカーの遠藤の両脇のスペースをカバーできなかったり、
両WBの藤春とオジェソクのMFとしての能力の低さも相まって頓挫した経緯があるので、
2年前とはメンバーは異なるものの、どう出るかというのは正直なところ未知数だった。

ビルドアップは右サイドから

急造感が否めないスタメンだったので、DFラインの裏を取られてピンチを招くなど、
最初はギクシャクする場面も多かったけど、
時間が経つにつれて徐々に歯車が噛み合っていった。

個人的にこの日のスタメンのミソは、右CBの高尾と左WBの福田だったように思う。

通常、ガンバの攻撃の組み立てって左サイドで行われることが多いけど、
本職は右SBの高尾を右CBで起用した意図は、
この試合では攻撃の組み立てを右サイドから行うというもの。

このやり方は、同じ布陣にトライした一昨季の長谷川監督時代には見られなかったものだけど、
宮本監督はJ3の監督時代に、左サイドから攻撃の組み立てを行うために、
中盤の選手の嫁阪を左のCBで起用したこともあったし、
もともと宮本監督の戦術の引き出しにあったものを
満を辞してこの試合で採用してきたというところだろうね。

現にこの試合の高尾は、小野瀬の後ろのスペースに回り込んで積極的にパス回しに参加し、
見事なフィードを高江に通して倉田の決勝ゴールの起点にもなった。

本業ではないCBとしての守備もリーチの長い手足を使って無難にこなしていたし、
J1デビュー戦ということを考えれば十分に合格点を与えられる出来だったように思う。

スピードアップは左サイドから

そして、右サイドからビルドアップを行えば、
必然的にセレッソの選手はガンバの右サイドに寄ってくるので、
左サイドの選手にはスペースが与えられる。

そのスペースを存分に生かして躍動したのは左WBの福田。

試合序盤は守備の対応でドキドキさせられたけど、
ここ数試合、左サイドのオジェソクのところで攻撃が停滞する場面が多かったので、
ドリブル突破やパス交換でグングン前にボールを運ぶ姿には爽快感があった。

まあ、もともと名門・東福岡で10番を背負っていた選手なので、
攻撃のところでこれぐらい出来るのは予想の範囲内ではあったのだけど、
試合終盤になっても全くと言っていいほど運動量が落ちないのには驚愕。

左WBとして、守備の際にはDFラインと同じぐらい深い位置まで戻り、
攻撃の際には矢のように前線に駆け上がって、ペナルティエリア内に切り込んでいく姿には、
2014年の三冠達成時の阿部と大森の両サイドを思い起こさせるものだった。

試合終盤の決定機を決めきれなかったのは課題だけど、この試合の福田は、
今後も継続してプレーを見たいと思わせるようなパフォーマンスだったね。

今度こそ大阪ダービーでの勝利を良い流れにつなげる

ここまで良かったことばかり書いているものの、
ピンチが無かったかといえばそんなことはなくて、
何度か「やられた!」と思った場面もあったけど、
そこにことごとく立ちはだかったのは我らが背番号1、東口順昭。

前節では、原川のCKに対して目測を誤り、クエンカに先制ゴールを許してしまうなど、
らしくないプレーを見せていたけど、この試合の東口は僕らの知っている頼れる守護神だった。

チャンスがありながら追加点をなかなか奪えずにいた展開の試合を、
しぶとくウノゼロで勝ち切ることが出来たのは、
東口がゴールマウスを守っていたからに他ならないだろうね。

ただ、昨季も一昨季も、吹田での大阪ダービーで会心の勝利を挙げて、
良い流れが出来そうな雰囲気を作っておきながら、
直後の試合で不甲斐ない試合をしてしまってフイにしてしまった経緯があるので、
次節の札幌戦では三度目の過ちは絶対に阻止したいところ。

特に、今回の大阪ダービーは、抜擢した若い力が躍動して手にした勝利ということで、
今後、ガンバが世代交代していく過程でも重要な一戦だったように思うので、
何年か後に「あの時の大阪ダービーがターニングポイントだったよね」と言えるように、
この試合で生まれた良い流れを次につなげていきたいね。

ガンバ大阪10セレッソ大阪
’55 倉田秋