【明治安田生命J1リーグ17節 松本山雅vsガンバ大阪】長い眠りからようやく目覚めた激情の虎

2020年11月1日

ファンウィジョ、雌伏の時を経て

昨季、序盤戦から苦しい戦いを続けていたガンバが、
終盤に9連勝を達成し、J1に残留することが出来たことついて、
ファンウィジョの活躍無しには語れない。

今季もこの韓国人ストライカーの得点力を計算してチームを編成していたはずだろうけど、
代表とクラブの掛け持ちで疲弊した背番号16は本来のキレを失い、
リーグ戦で3ヶ月もゴールから見放される苦境に立たされることになってしまった。

今季のガンバの序盤戦の低迷の要因はいくつか考えられるけど、
ファンウィジョの不調もその一因に数えられるだろうね。

ここ数試合のファンウィジョのプレーを見ていると、ゴールから見放されていることで、
「自分が獲らなきゃ」という気持ちが先行しすぎて、
周りにフリーの味方がいてもパスを出さず、チャンスを潰しているように見受けられたので、
先発から外した方がいいのではと思っていた。

しかしながら、残留争いの行方を占う一戦で、信州の地に二度に渡り響き渡った咆哮は、
激情の虎の復活を十分に予感させるものだった。

左サイドからカットインしてシュートという、
自身と同じストロングポイントを持つ宇佐美の復帰で、
前線のポジション争いはさらに激化しそうだけど、
韓国代表でもスタメンを張る26歳がそう簡単にスターターの座を譲るはずがない。

そう言えば、ファンウィジョの契約が今月一杯って書いていたメディアがあったけど、
実際のところどうなっているのだろうか?

スタメンで自身の価値を示した遠藤保仁

この試合では、これまでアンカーを務めていた矢島がインサイドハーフに上がり、
遠藤がアンカーのポジションを務めることになった。

同じ陣形で戦っていた湘南戦の後半が、テンポ良くパスが回っていたことと、
松本が相手だからある程度自分たちでボールが握れると踏んで、
遠藤の守備面のリスクを受容してこの布陣を採用したと思われる。

矢島にしても、一列前の方が動きやすそうに見えることを思うと、
そうなってくると今季のガンバの編成でアンカーのポジションが出来るのが、
39歳の背番号7だけになってくるというのは、この布陣の継続性を考慮すると、
それもそれで問題のような気がするのだけども。

ただ、この試合では、湘南戦ほど遠藤の支配力は発揮されず、
松本の前線からのプレスに苦しんでマイボールをロストし、
シュートまで持ち込まれる場面が多々見られた。

幸い、松本の選手たちが、シュートチャンスで東口にパスをするという、
サッカーと似て非なるスポーツをやっていたせいで失点には繋がらなかったけど、
お世辞にもガンバは良いサッカーをしているとは言えない展開だったように思う。

しかしながら、後半、セットプレーから飯田にゴールを許して試合を振り出しに戻され、
試合の流れが悪くなりそうな時間帯に繰り出されたあの倉田へのピンポイントのループパス。

あのワンシーンだけで、
この百戦錬磨のベテランをスタメンで起用する価値はあったと言えるだろうね。

あ、あのプレーで電池が切れてしまったのはご愛嬌ということで。

食野も”仕上げ”要員なのか?

前節の湘南戦で、後半アディショナルタイムに劇的なゴールを決め、
チームを勝利に導いた食野だったけど、
この試合ではスタメンに抜擢されたものの目立った活躍も無く、
後半29分にアデミウソンとの交代でピッチから退くことになった。

この試合では、再三、田中達也が右サイドを破ってクロスを上げていたけど、
ファーサイドへ逃げる動きをするファンウィジョに対し、
ニアに誰も走り込んでいないという場面が何度か見られた。

こういう時、食野はマイナスの位置でグラウンダーのクロスを待っていることが多いのだけど、
そういうポジショニングを取るとペナルティエリア内の人数が少なくなってしまうので、
マイナスの位置に走り込むのはインサイドハーフの選手に任せて、
食野はニアサイドに飛び込んできてほしい。

ガンバにはかつてリンスや長沢といった仕上げ要員がいたけど、
言い方を変えれば、彼らは、相手の選手の足が止まって陣形が間延びし、
プレスが緩くなった試合終盤にならないと持ち味を出すことが出来ない選手でもある。

まあ、本格的にFWの選手になったのは今季からなので、
まだMF的な動きが抜けないのは理解できるけど、
食野がジョーカーの域から抜け出すために、
ドリブルシュート以外のFWとしての武器を会得して欲しいね。

今年こそ悲願の鬼門突破へ

これで大阪ダービー以降、3勝3分と負けなし。

連続クリーンシートこそストップしたものの、
久しぶりに複数得点を挙げることも出来たので、
ここに来てようやくギアが上がってきた感じだね。

次節は2001年以来勝てていないアウェイでのFC東京戦。

ファストブレイクをストロングポイントとしている彼らに対し、
今節のマリノスのように高いDFラインを敷くのは藪から蛇なので、
三浦を中心にDFラインを上手くコントロールしながら戦って欲しい。

絶望的に良いイメージの無い飛田給だけど、
今度こそは良い気分で帰途に着くことが出来る…と思いたい。

松本山雅13ガンバ大阪
’26 ファンウィジョ
’60 飯田真輝
’63 倉田秋
’82 ファンウィジョ