【全国高校サッカー選手権大会 開幕戦 成立学園vs津工業】やはりサッカーは3−2の試合が面白い

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カタールワールドカップが終わってしばらく暇を持て余していたけど、
日本サッカーの冬の風物詩、高校サッカー選手権の季節がやってきた。

Jリーグが始まってから優秀な中学生年代の選手がJユースに流れるようになり、
一時期は高校サッカーの価値が疑問視されていたこともあったけど、
ここ最近は、プレミアEAST /WESTに高体連のチームが増え、
再度、高校サッカーの価値が上がっているように感じる。

今大会に出場する選手たちの中から、2年後のパリオリンピック、
4年後の北米3大陸共催のワールドカップのピッチに立つ選手が出るかもしれないので、
それがどの選手になるか色々と想像を膨らませながら、
寒空の下で行われる熱い戦いを見届けたいと思う。

年の瀬の新国立で躍動するブルー

開幕戦のカードは東京都B代表の成立学園と三重県代表の津工業の対戦。

両校ともプリンスリーグには所属しておらず、都道府県リーグで戦っているけど、
関東の強豪クラブチーム出身者が多い成立学園と、地元出身者のみの津工業では、
実力の差が大きいんじゃないかと思っていた。

試合の入りこそ成立学園が緊張からかパス回しがもたつく場面があったけど、
試合が進むにつれてインサイドハーフの7番陣田のゲームメイクと、
左ウイング9番渡辺のドリブルで何度も津工業陣内に攻め入り試合の主導権を握る。

しかしながら、この試合で1トップに入った18番の柏田がほとんどボールに触ることが出来ず、
成立学園は試合を支配している割にはペナルティエリアに入っていく場面はほとんど無かった。

対する津工業は守勢を強いられる時間が長かったものの、中盤でボールを引っ掛けてから、
10番庄司のドリブルを活かしたロングカウンターで成立学園のゴールに迫るなど、
成立学園とそれほど変わらない数の決定機を作っていた。

成立学園としてはこの時間帯で得点出来ないと苦しい試合になりそうな気配があったけど、
左サイドをオーバーラップした瀧川がペナルティエリア内に進入してクロスを上げると、
右サイド8番武田のシュートのこぼれ球を陣田が押し込み、前半35分に成立学園が先制。

さらにその5分後にはアンカーでプレーする10番八木のCKから、
11番を背負うCBの佐藤が打点の高いヘディングシュートを叩き込み、追加点。

優勢に試合を進めながら得点出来ない時間が長かった成立学園だけど、
2点リードという理想的な展開で前半を折り返すことが出来たね。

勝負は下駄を履くまでわからない

前半を2点リードで折り返した成立学園の勢いは後半になっても衰えず、
右サイドから津工業のゴール前を横切るようなパス回しから、
左サイドの渡辺がニアサイドをぶち抜き、後半4分に3点目のゴールをGET。

背格好や背番号9、深い切り返しで左サイドを何度もドリブルで突破する渡辺に、
カタールワールドカップでの三笘の姿を重ねた人は僕だけじゃないと思うけど、
それもそのはずで、選手名鑑を読むと渡辺の好きな選手は三笘とのこと。

これからどういうキャリアを進むのかは知らないけど、今後が楽しみな選手だなと思ったね。

3点差がついたので勝負ありかなと思っていたら、なんとここから津工業の反撃が始まる。

右サイドから送られたクロスを9番の増山が右足で決めて後半21分に1点を返すと、
(3番大川のクリアが間に合ってゴールラインは割ってなかったように見えたんだが・・・)
後半33分には庄司のクロスから途中出場の24番鳴川がヘディングシュートを決め、
なんと1点差まで詰め寄った。

その後は、後半の序盤までの成立学園の勢いはどこへやら、
津工業の猛攻を成立学園が受けるというこれまでとは真逆の試合展開に。

成立学園としてはコーナーキープでもいい状況なのに、
無理に攻撃に出てカウンターを食らう場面が何度か続いたので、
こんなことしていたらいつスコアが振り出しに戻ってもおかしくないと思ったけど、
津工業の反撃は2点止まりで終了。

後半途中までの楽勝ムードから一転して薄氷を履むような辛勝になるという、
稚拙な試合運びはやっぱり高校生だなと思ったけど、
昨年の関東第一と中津東の試合や、3年前の國學院久我山と前原の試合のように、
ここ最近の高校サッカー選手権の開幕戦は大差がついて大味な試合になることが多かったので、
オープニングゲームから最後まで手に汗握る試合が見られたことは良かったね。

成立学園の2回戦の対戦相手は、日本文理と立正大淞南の勝者ということで、
どちらが勝ち上がってきてもクセの強い相手という印象があるけど、
今大会の成立学園はタレントが揃っているような印象を受けたので、
ベスト4に進出した昨年度の関東第一のような躍進が期待出来るんじゃないだろうか。

以前の光景が戻ってくるのはいつ?

開会式で選手全員がマスク姿で入場行進をしている光景は改めて見ても異様だけど、
今年は陸上トラックのメインスタンド側にも選手が行進するようになったし、
指定されたエリアのみとは言え、試合中の声出しやブラスバンドでの応援が戻ってきた。

先日まで開催されていたカタールワールドカップで、
スタンドでマスクを着用していた観客は皆無だったことを考えると、
日本はいつまでこんな感染症対策をしているのかと思うことはあるけど、
年を経るごとに状況が改善されてることは前向きに捉えようと思う。

まあ、色々思うところはあるけども、
今年はどんな熱い試合が見られるのか楽しみしている自分もいるので、
選手の皆さんには悔いの無いようにアグレッシブな戦いをしてほしいね。

成立学園32津工業
’35 陣田成琉
’40 佐藤由空
’44 渡辺弦
’61 増山万太
’73 鳴川幸輝