【カタールワールドカップ 決勝 アルゼンチンvsフランス】輝かしいキャリアの最後のピースを手にした神の子

2023年1月1日

悲願かそれとも偉業か

季節外れのフットボールの祭典も、
ついに決勝戦のアルゼンチンvsフランスの1試合を残すのみ。

数々の栄光を勝ち取ってきた神の子が、
その輝かしいキャリアで唯一手にしていない黄金のトロフィーを掲げるのか、
それとも、新時代の旗手に名乗り出たレ・ブルーの10番が、
半世紀以上達成されていないのワールドカップ連覇の偉業に導くのか。

その行く末を見届けるべく世界中のサッカーファンの視線が、
カタールのルサイル国立競技場に向けられている。

メッシは難なくワールドカップを手にすると思われた

歴史に名を刻むべく、トーナメントを勝ち上がってきた両国のスタメンは以下の通り。

2014年のブラジルW杯の時は負傷の影響で決勝のピッチに立てなかったディ・マリアを、
この大一番でスタメン起用してきたアルゼンチンのスカローニ監督。

対するフランスは、準決勝のモロッコ戦後に体調不良者が続出して、
決勝に出場するメンバーがどうなるか心配されたけど、
スタメンの選手には影響は無かったようで、
ディシャン監督は現時点のベストと言ってもいい11人をピッチに送り出してきた。

今大会の初戦でサウジアラビアに敗れたり、PK戦の末にオランダを降したりと、
お世辞にも順調とは言えない足取りで決勝まで辿り着いたアルゼンチンに対し、
グループステージからその攻撃力を見せつけつつ、
上手にターンオーバーしながら決勝に辿り着くべくして辿り着いたフランスということもあり、
戦前の予想では、フランスが試合の主導権を握るものと思われた。

ところがその予想に反し、試合の主導権を握ったのはアルゼンチン。

ディマリアの左サイドから何度もフランスのゴールに攻め入ると、
ディマリアがデンベレに倒されて得たPKをメッシが決め、
前半23分に幸先良くアルゼンチンが先制に成功。

さらに、前半36分にもカウンターからディマリアがゴールを陥れ、
前半のうちにアルゼンチンが2点リードするという、予想外の展開になった。

反撃に出たいフランスだけど、デ・パウル、マカリスター、フェルナンデスの、
アルゼンチンの3センターがフランスの中盤を完全に封じ込め、エースのエムバペが完全に孤立。

これを見たディシャンは、前半のうちにジルーとデンベレに代えて、
テュラムとコロムアニを投入するという荒療治に出るも効果は出ず、
ハーフタイムを挟んでも状況は好転せずといった具合でにっちもさっちもいかず、
フランスのこの試合のファーストシュートは後半25分まで待たなくてはいけなかった。

メッシに何としてもワールドカップのタイトルを獲らせてあげたいという、
アルゼンチンの選手たちの気迫溢れるプレーも素晴らしかったけど、
それ以上にフランスの選手たちのパフォーマンスの悪さが目立ち、
近年のワールドカップの決勝で一番の凡戦になりそうな雰囲気が漂っていた。

スーパースターがスーパースターである所以

そんな低調なフランスのパフォーマンスを劇的に変えたのが、
グリーズマンに代えてコマンを投入するという選手交代だったと思う。

この試合では終始試合から消えていたとは言え、
キープレイヤーであるグリーズマンを交代せるのはギャンブルだと思ったけど、
何とこの交代策が見事に的中。

これまでトップ下のグリーズマンを経由していたボールが、
中盤を省略して前線に到達するようになったことで、
アルゼンチンのストロングポイントである中盤の守備力が無力化すると、
おあつらえ向きのスペースがある状況でエムバペが躍動。

後半35分にPKを決めて1点を返すと、その1分後にはテュラムからの難しい浮き球のパスを、
上手く体を倒した見事なボレーシュートでファーサイドに叩き込み、
あっという間に試合を振り出しに戻してみせた。

レ・ブルーの若きエースの活躍で、死の淵から延長戦に持ち込んだフランスだったけど、
セレスティ・ブランコのエースがこの状況を黙って見ているわけがない。

フェルナンデスのパスを受けたラウタロ・マルティネスのシュートは、
ロリスに防がれてしまうも、こぼれ玉をメッシが押し込み、
延長後半3分にアルゼンチンが再びリードを奪う。

これで勝負あったかのように思われたけど、
延長前半にモリーナとの交代でピッチに入っていたモンティエルが、
エムバペのシュートを腕でブロックしてしまいPKを献上。

このPKをエムバペが決め延長後半13分に再度試合は振り出しに。

目まぐるしく状況が変わる試合終盤の展開に、
後半30分までの凡庸な試合は一体何だったのかと思ってしまったけど、
その中でエムバペがハットトリック、メッシが2得点と、
活躍すべき人が活躍するのはさすがスーパースターだなと思い知らされたね。

結局、試合は延長後半でも決着がつかず、勝敗の行方はPK戦へ。

PK戦はくじ引きのようなものとよく言うけど、この試合のPK戦に関しては、
今大会を順調に勝ち上がってきたフランスよりも、
オランダ戦でPK戦の末に勝利したアルゼンチンの方が一日の長があったように思う。

4人全員が決めたアルゼンチンに対し、フランスはコマンとチュアメニが外してしまい、
アルゼンチンの勝利で試合は決着。

これまで代表では輝けないと言われてきたメッシだけど、昨年のコパアメリカ優勝に続き、
悲願のワールドチャンピオンのタイトルを母国にもたらしてみせた。

英雄・マラドーナと常に比べられ、
ワールドカップを獲得することを義務付けられてプレーする重圧は、
我々凡人には到底想像がつかないものがあったはず。

ただ、今回ワールドカップを獲得したことでその重圧からは幾ばくか解放されたと思うので、
これからはもっと自分のために楽しんでプレーしてほしいなと思うね。

対するフランスは敗れはしたものの、
ベンゼマ、ポグバ、カンテといった主力がケガなどで軒並み不在にも関わらず、
これだけ強力なチームが完成する層の厚さはすごいとしか言いようがない。

若い選手も多いし、4年後のワールドカップでも優勝候補になり得るだろうね。

このブームを一過性のものにしないために

初の中東開催となったワールドカップも、これにて終幕。

大会前は、ワールドカップ関連の報道の熱量の無さに危機感を覚えていたのだけど、
日本がドイツやスペインに勝利したこともあって、
終わってみれば結構盛り上がったと感じた大会だったんじゃないだろうか。

ただ、ベスト8進出という目標は今回も達成出来なかったので、
次回の北米3カ国共催のワールドカップでは今度こそ壁を破ってほしいね。

まあ、そうは言っても今から4年後のことを話すのは気が早すぎるので、
今は、ワールドカップで温まったサッカー熱を、来季のJリーグに繋げていけるように、
1サポーターとして微力ながらも引き続き国内のサッカーを盛り上げていきたいね。

アルゼンチン33フンス
     PK