【高円宮杯プレミアリーグファイナル 青森山田vs名古屋グランパスU-18】ディフェンディングチャンピオンに死角無し

2022年7月31日

今年もやってきた真の高校年代日本一を決める戦い

J3のピッチで研鑽を積んだ選手の多いガンバユースが、
先月行われたJユースカップの決勝で、
名古屋のU-18に0-4で敗れ去ったのは衝撃だった。

そんな名古屋のU-18について伝え聞くところによると、
攻撃的でとても魅力的なサッカーをするとのことだったので、
ガンバユースを破ったスペクタクルなサッカーを堪能できるかもという期待を込めて、
高円宮杯プレミアリーグのファイナルの舞台である埼玉スタジアムを訪れた。

そんな僕の期待は一応満たされたけど、名古屋の選手たちのサッカーよりも、
前年度の高校サッカー選手権覇者である青森山田の選手達の試合巧者ぶりの方が、
深く印象に残った試合だった。

赤のスペクタクルを封じ込んだ質実剛健の緑

キックオフの時の選手の並びを見て、
名古屋の布陣はオーソドックスな4-4-2か?と思ったのだけど、しばらく見ていると、
左サイドは、今季マリノスが採用したことで話題になった偽サイドバックで、
右サイドはオーソドックスなサイドバックという左右非対称の布陣ということに気づいた。

そこにサリーダラボルピアーナ(2枚のCBの間に
ボランチの1枚が落ちてくるビルドアップのやり方)も組み合わせていたし、
試合が始まって10分も立たないうちに、
「お、こいつら面白いサッカーやってるな」と思わせてくれた。

そんな名古屋に相対する青森山田は、オーソドックスな4-2-3-1で、
戦術的な目新しさは無かったのだけど、
連動した前線からのプレスで名古屋のビルドアップを攪乱させると、
近年の高校サッカーの代名詞となったロングスローからあっさりと先制点を挙げてみせた。

青森山田は前半のうちにもう1点加点し、
前半のうちに試合を決めてしまいそうな雰囲気すらあったのだけど、
前半終了間際に名古屋にもたらされた1点が、後半の名古屋の反撃の呼び水になった。

スーパー1年生・松木玖生

2点ビハインドになってからの名古屋は、ボランチの1枚の田邊を菱形の頂点にシフト。

さらには、サリーダ・ラボルピアーナをやめて、
前方のスペースへどんどんボールを送り込むようになったのだけど、
これによって、名古屋の右サイドの榊原が、
スペースのある状況でドリブルを試みる機会が増え、
青森山田の守備陣の脅威になっていた。

そんな状況で後半14分に名古屋が試合を振り出しに戻し、
このまま逆転か?と言うムードも漂っていたのだけど、
流れを再び青森山田に持ってきたのはボランチの松木。

ペナルティエリアの左45度でパスを受けると、
誰もがシュートを打つと思ったタイミングで深く切り返し、
左足でDFの股を抜いてファーサイドに決めたシュートは技ありの一言。

前半に3-0に出来る場面でシュートミスをしてしまったけど、
このゴールで帳消しにできたと言っても過言じゃないだろうね。

そう言えば、この試合の前に、
埼玉スタジアム前の広場で、松木安太郎がトークイベントをやっていて、
その中で、「青森山田に松木っていう選手がいるんだけど、
プレーも苗字もすごくいいんだよ」と言っていたんだけど、
そんな安太郎の期待に玖生は見事に応えたね。

しかも玖生はまだ高校1年生。

日本のサッカー界で松木と言えば松木安太郎だけど、
10年後には松木と言えば松木玖生という日が来るかもしれない。

間違いなく起こりそうな予定調和

その後も名古屋はCBの鷲見を前線に上げるなど、
パワープレーも辞さない姿勢で猛攻を試みたけど、
青森山田はそんな名古屋に対してバタつく様子も無く、のらりくらりと逃げ切ってみせた。

サッカーに於けるルーズベルトゲームと言ってもいい、3-2というスコアよろしく、
名古屋のスペクタクルな攻撃と、青森山田の狡猾な試合運びの両面を見ることが出来て、
どちらのサポーターでもない人でも十分に楽しめる試合だったんじゃないだろうか。

名古屋のU-18はこの試合で今季の活動は終わりになると思うけど、
青森山田は連覇を期して臨む高校サッカー選手権があるね。

この試合を見る限りでは青森山田の連覇は固いと思うのだけど、
予定調和はつまらないので、どこかの高校が今月の30日から始まるトーナメントを、
面白くしてくれることに期待したいね。

青森山田32名古屋グランパス
’12 田中翔太
’27 後藤健太
’41 村上千歩
’59 村上千歩
’62 松木玖生