【YBCルヴァンカップ 決勝 柏レイソルvsサンフレッチェ広島】力技で聖杯を手繰り寄せたミヒャエル・スキッベ

これで見納めの秋の風物詩
初タイトルを目指すアルビレックス新潟の挑戦を退けて名古屋グランパスに聖杯をもたらし、
長谷川健太がタイトル請負人の面目躍如を果たした昨年の決勝から1年、
今年もルヴァンカップの決勝の日がやってきた。
Jリーグ開幕以降、長らく秋の風物詩として行われてきたリーグカップの決勝も、
来年からの秋春制へのシーズンに伴い、現行フォーマットでの開催は今年が最後。
そんな記念すべき一戦で千駄ヶ谷の空に聖杯を掲げるのは、
柏レイソルか?それともサンフレッチェ広島か?
2025年11月1日の昼下がりに御厨貴文主審のキックオフの笛が鳴った。


前半で試合を決めた3発の飛び道具
直近の公式戦3試合連続無得点の広島に対し、
直近3試合で11得点を挙げている柏ということで、
戦前のチーム状態は柏の方が良いんじゃないかという印象を受けていた。
(柏の11得点のうち5得点はガンバ相手というのが悲しいところだけど・・・)
序盤から、布陣を可変させながらボールを握って試合を進める柏に対し、
広島は3-4-2-1の布陣で相手のミス待ちカウンター狙いという試合展開からも、
柏の今年1年で積み上げてきたものに対する自信のようなものも感じられたしね。
まあ、先日のガンバもこの日の広島と似たようなコンセプトで柏に挑んだと思うんだけど、
広島の場合、前線の3人(木下、中村、ジャーメイン)のプレスの掛け方が上手く、
特にジャーメインはサイドバックと見紛うような守備を見せていたのに対し、
ただ後ろで人数を揃えて柏の攻撃を傍観していただけのガンバとは月とスッポンだったね。
そんな一進一退の両者の攻防は、前半の中盤から思いもよらぬ形で動いていく。
右サイドの高い位置で広島がスローインを得ると、
中野のロングスローを荒木がYAVAYヘディングでねじ込んで、前半25分に広島が先制。
さらに、前半38分には東が左足で見事な直接FKを決めて追加点を奪うと、
アディショナルタイムにはまたしても中野のロングスローの流れからジャーメインが決め、
なんと前半だけで3得点を奪って試合の大勢を決してしまった。
昨今のサッカー界では、ポジショナルサッカーが持て囃され、
和式洋式論争で後者が正しいような論調が多くなされるけど、
(東のFKを除いて)スマートとは言えない力技で2つのゴールを奪ってしまったあたり、
結局のところサッカーに正解なんてないんだなと思わされる前半だったね。

遅かったエースの反撃の一発
前半で3点ビハインドを背負うという苦しい展開を強いられた柏は、
後半頭から戸嶋、瀬川、垣田に代えて小西、仲間、細谷を投入。
ただ、前半と選手を入れ替えても試合展開はあまり変わらず、
中野のロングスローから何度も広島に決定機が訪れる。
広島は、ロングスローの時に佐々木を小島の前に立たせて自由を奪い、
他の選手をフリーにするというプレーを前半から何度もしてきたけど、
結局、柏の知将リカルド・ロドリゲスを以ってしても、
最後までこの広島の戦い方への最適解は見出せなかったね。
(まあ、そもそも柏は高さがある選手が少ないので打てる手も無いか・・・)
あとはこのまま試合を終わらせるだけという広島だったけど、
柏のパスワークに走らされる場面が長かったうえ、
決勝戦の独特の緊張感もあってか、試合が進むにつれて脚を攣る選手が増えていく。
ここまで柏対策がズバリ的中していた広島の指揮官のミヒャエル・スキッベだけど、
後半30分を過ぎても交代カードは中村に代えて中島の1枚だけと、
ここに来てリーグ戦でも垣間見える交代の遅さが出てしまう。
すると、DFラインの裏に抜け出した細谷が、
追いすがる屈強な荒木を右手でブロックしながらゴールを決め、
後半36分にようやく柏が1点を返す。
細谷のゴールでようやく試合が始まる前の元気さを取り戻した柏のサポーターだったけど、
さすがに堅守の広島相手にここから2点を挙げることは難しく、広島が逃げ切りに成功。
2週間前にガンバが完敗した柏相手に、広島があっさり勝ってしまったことで、
若干複雑な心境だけど、公式戦3試合連続無得点と決して良いとは言えないチーム状態の中、
きっちりとチームに柏対策を落とし込んで遂行させたスキッベは、
やはり名将だなと思わざるを得ない試合だったね。

2025年シーズンのオーラスはまだ終わらない
かくして、現行フォーマットで行われるリーグカップの決勝は、
広島が3年ぶり2度目の優勝を飾って幕引き。
ただ、ルヴァンカップは終わったけど、柏はリーグ優勝を射程圏に捉えているし、
広島も天皇杯の準決勝に勝ち残っているので、
両チームとも2025年の日本サッカーをまだまだ盛り上げてくれそうやね。
そして、来たる2026-27シーズンに、
リーグカップがどのような形式で開催されるのかという点も含め、
今後の日本サッカーの行く末を楽しみに見守りたいと思います。
柏レイソル1ー3サンフレッチェ広島
’25 荒木隼人
’38 東俊希
’45+2 ジャーメイン良
’81 細谷真大










