【UEFAチャンピオンズリーグ決勝 パリ・サンジェルマンvsバイエルン・ミュンヘン】イレギュラーなシーズンの順当な王者

イレギュラーなシーズンの決勝

例年は5月下旬から6月上旬に行われることが多いチャンピオンズリーグ決勝だけど、
今大会はコロナ禍による中断期間があったため、8月下旬というイレギュラーな時期に行われた。

そんなイレギュラーなシーズンの大会を象徴するかのように、
ライプツィヒやリヨンといったクラブがベスト4に名を連ねたけど、
結果的に決勝のカードがパリ・サンジェルマンとバイエルン・ミュンヘンになったのは、
両者の力量を考えれば順当と言えば順当だった。

近年、中東マネーをバックボーンに戦力強化を進め、フランス国内で敵無しのパリは、
そろそろビッグイヤーを獲得してクラブのブランド力をさらに高めたいところ。

対するバイエルンは、
昨年11月に成績不振でシーズン途中にニコ・コバチ監督が辞任するという、
ドイツの絶対王者らしからぬイベントが発生したけど、
それでも終わってみればリーグ8連覇を達成するあたり、やはり地力の高さは疑いようが無い。

フランスとドイツの絶対王者同士の対戦なので、実力伯仲の白熱した対戦になるかと思いきや、
予想に反して、ここまで実力差があるのかと思わされるような試合展開になったね。

これぞトップオブトップの戦い

当たり前だけど、つい7時間前までJリーグの試合を見た後に、
UEFAチャンピオンズリーグの決勝というトップオブトップの試合を見ると、
攻守の切り替えの早さや球際のインテンシティの高さ、
止める蹴るという基本技術の高さに圧倒される。

コロナ禍の影響で、今大会の決勝はポルトガルのスタジアムで無観客で行われたけど、
往々にして試合のテンポが上がらない無観客試合に於いて、
これだけのクオリティの試合が繰り広げられるいうのは、
UFEAチャンピオンズリーグという舞台が選手を駆り立てるのかもしれない。

また、昨季のトッテナムとリヴァプールの決勝然り、
ここ数年のチャンピオンズリーグ決勝は、お互いの様子を伺うような時間帯は存在せず、
キックオフの笛と同時にオープンな展開になるけど、今季の決勝でも例外は無かったね。

結果的に前半はスコアレスで折り返すことになったけど、
ケイラー・ナバスが守るゴールに襲い掛かる赤いユニフォームに対し、
臆して守りを固めることなく真っ向から立ち向かう紺のユニフォームという構図は、
とても見応えがある試合展開だった。

ドイツの絶対王者の底力

試合が動いたのは後半14分。

右サイドの浅い位置からキミッヒがクロスを上げると、
ファーサイドでフリーになっていたコマンがヘディングで叩き込み、バイエルンが先制。

キミッヒがボールを持った時に、
パリの守備のブロックが全体的にボールサイドに寄ってしまったため、
ファーサイドにいたケーラーが1人でレヴァンドフスキとコマンを見なければいけないという
ミッションインポッシブルな状況になってしまった時点で勝負ありだったね。

また、スコアラーのコマンはパリの育成出身にも関わらず、ゴールを決めた後、
古巣に遠慮することなく喜びを爆発させていたのには思わず苦笑してしまったけど。

1点ビハインドとなったパリは、ベラッティやドラクスラーといった攻撃のカードを切るも、
最後までノイアーの守るゴールを割ることが出来ず、
バイエルンが7シーズンぶり6度目のビッグイヤーを獲得。

まあ、バイエルンの戦力を考えると、優勝したこと自体は意外でもなんでもないのだけど、
昨年、成績不振でニコ・コバチが辞任した時期は、
お世辞にもうまくいっているとは言えなかったのに、
ここまで立て直したのは見事としか言いようがない。

選手時代も目立った結果は無く、ニコ・コバチの後を受けて監督に就任して以降も、
暫定監督感が拭えなかったハンス・ディーター・フリックは、
もしかしたら指導者としてはとても有能なのかもしれない。

最高峰の戦いの弊害

準々決勝でバルセロナ相手に8得点を挙げたことからもわかるように、
今のバイエルンの強さは欧州でも頭一つ抜けている感がある。

ただ、今大会でベスト4に残れなかったイギリス、スペイン、イタリア勢が、
この状況を傍観しているとは思えないので、
来期のチャンピオンズリーグでは彼らの逆襲に期待したいね。

と、言いつつ、コロナ禍に終わりが見えない現状では、
例年と同じレギュレーションで世界最高峰の戦いが見られるようになることが、
一番の願いだけども。

パリ・サンジェルマン01バイエルン・ミュンヘン
’59 キングスレイ・コマン