【明治安田生命J3リーグ28節 ガンバ大阪U-23vsブラウブリッツ秋田】快挙の引き立て役になったヤングガンバ
優勝はよそでお願いします
J3を圧倒的な強さで制してJ2に昇格したチームと言えば、
2015年のレノファ山口が記憶に新しいところだけど、
今季のブラウブリッツ秋田の快進撃はその山口をも凌ぐ。
前節終了時点で無敗(19勝8分)で失点はわずかに8。
今季ここまで先制された試合無しというのは、
出会い頭の失点も多いサッカーというスポーツに於いて驚異的だ。
小気味良いパスワークをベースにした攻撃サッカーを志向していた山口に対し、
秋田のサッカーはフィジカルと走力をベースにした質実剛健なサッカー。
その姿はどことなく長谷川健太監督時代のガンバを想起するところもあり、
懐かしい気持ちにさせてくれる。
観客数水増しが発覚するというスキャンダルもあったけど、
今季、秋田の選手たちがピッチで見せていた戦いには嘘偽りはない。
そんな秋田は、今節、ガンバ大阪U-23に勝利すればJ2昇格が決まり、
他会場の結果次第ではJ3優勝も決まるという状況で、
パナソニックスタジアム吹田にやって来た。
今季の秋田の戦いが素晴らしいのは認めるけど、
アウェイチームが優勝する姿を目の前で見ることが好きだなんて言うモノ好きは、
さすがにいないだろう。
U-23の選手達には、パナソニックスタジアム吹田での戴冠を阻止すべく、
今季まだ一度も負けていない秋田相手に、
臆することなく立ち向かってほしいところだ。
ユースの選手たちが頑張っている時に限って
とは言ってみたものの、この試合のU-23のスタメンは、
11人中7人がユースの選手という構成。
布陣は3-4-2-1で、GKはイ・ユノ、DFは右から當間、タビナス、平川、
中盤は右から村上、荻野、菅野、シン・ウォノで、
ツーシャドーに高木と中村仁郎を置き、1トップに坂本という並びだった。
さすがにこのメンバーで秋田に立ち向かうのは
厳しいんじゃないだろうかと思っていたけど、
意外と戦えていたことに良い意味で期待を裏切られた。
先日の讃岐戦で、シン・ウォノに代わって投入されたものの、
低調なパフォーマンスに終わった平川だったけど、
この試合では3バックの左で堂々とプレーしていたのが印象的だった。
こういう短期間で選手が伸びる様子を見て取れるのが、
このU-23チームを追いかける醍醐味である。
ただ、発足して5シーズン目を迎えたU-23チームでは、
これまで多くのユース所属の選手たちが飛び級でJ3のピッチでプレーしてきたけど、
ユースの選手たちが頑張っている時に、
U-23が主戦場の選手がミスをして足を引っ張るという光景は珍しくも無かった
この試合でも例外は無く、GKのイ・ユノからパスを受けたタビナスが、
前を向こうとしたときにスリップしてボールを奪われると、
これを叩き込まれ、先制点を献上してしまった。
タビナスの高い身体能力を生かしたディフェンスや、
最終ラインから積極的に縦パスを狙う姿は魅力的だけど、
いかんせん、最終ラインでの軽率なミスが多すぎる。
FWの選手であれば10回シュートミスしても1回決めればOKだけども、
DFは10回完璧なプレーをしていても1回ミスればNGなので、
豪胆さの中にも慎重さを意識してプレーして欲しいね。
チーム一のクラックは最後尾に
前半41分にも秋田にゴールネットを揺らされるものの、
これはオフサイドにより取り消され、命拾いした状況でハーフタイムを迎えたU-23。
後半の早い時間帯に同点に追いつきたいところだったけど、
逆に後半15分に追加点を許し、ビハインドは2点になってしまった。
この状況を受けた森下監督は、平川とシン・ウォノに代えて松田と山口を投入し、
布陣も3-4-2-1から4-1-4-1に変更。
これにより、U-23は攻撃で良い形が作れるようになり、
中村仁郎や坂本に決定的なチャンスが訪れるも、秋田のGKの田中雄大に防がれてしまった。
今年はU-23が絡まない試合でもたまにDAZNで秋田の試合を見ているのだけど、
シュートストップも然ることながら、安定感のあるハイボールの処理、
高い精度のキックなど、今季の秋田の一番のタレントはこのGKじゃないだろうか。
結果的にU-23はそんな田中雄大の前にゴールを挙げることが出来ず、秋田が勝利し、
他会場で長野が鳥取に敗れたため、
秋田がJ2昇格、J3優勝を果たすことになったけど、
来季、秋田がJ2で上を目指すには、この背番号21の残留は必須だろうね。
2020年のJ3の象徴にエールを
東京への一極集中が進み、人口減少に悩む地方自治体は少なくない。
その中でも人口減少率が1位で、将来的に消滅すると言われている市町村もあり、
雪国という土地柄か冬になると外出する機会が少なく、
運動不足と塩分の高い食生活が相まって、健康に問題を抱える県民も多い。
東京に住んでいると秋田県からはなかなか良いニュースが聞こえてこないけど、
今回のブラウブリッツ秋田の無敗でのJ3優勝&J2昇格は、
久々に秋田から全国に発信されたポジティブなニュースじゃないだろうか。
J2の戦いは甘くないけど、来季のJ2のピッチでも快進撃を続けて、
「去年のJ3のチームはこんなに強いチームを相手にしていたのか」と、
J2のチームを驚かせてほしいね。
また、ガンバ大阪のU-23は今季で活動を停止するので、
目の前で戴冠を見せられた悔しさを晴らす機会は訪れないけど、
この試合に出場した選手たちのサッカー人生はまだまだ続く。
残り少なくなってきたU-23チームでの活動を悔いなく終われるように、
残りの試合を1試合1試合気持ちを込めて戦ってほしいね。
ガンバ大阪U-23 0-2 ブラウブリッツ秋田
’34 中村亮太
’60 中村亮太