【国際親善試合 日本vsメキシコ】霧の中に消えた勝機
再び失われつつある日常
ヨーロッパで新型コロナウイルスの感染が再拡大しているという話は、
先日のパナマ戦後のブログでも書いた通り。
パナマ戦が終わってからも感染状況は悪化の一途で、
日本がメキシコと対戦するオーストリアでも、先日、ロックダウンが宣言され、
グラーツで開催される国際親善試合の開催可否の行方が取りざたされていた。
幸いという表現が適切なのかどうかわからないけど、
日本とメキシコの試合は開催される運びとなったけど、
徐々に本来の姿を取り戻しつつあったサッカーのある日常が、
また失われていっているように思える。
果たして来春再開予定のカタールW杯予選や来夏開催予定の東京オリンピックは、
予定通りに開催されるのだろうか。
健康第一というのはもちろんなのだけど、
新型コロナウイルスによってスポーツのカレンダーが蝕まれていく様子は、
これ以上見たくないのだけども。
崩せそうで崩せない試合巧者・メキシコ
先日のパナマ戦は3バックで臨んだ日本だったけど、メキシコ相手には4バックを採用。
2005年のコンフェデレーションズ杯や、2012年のロンドン五輪など、
メキシコとは定期的に対戦している印象があったけど、
実際は2013年のコンフェデレーションズ杯以来、7年ぶりの対戦だとか。
当時の日本はザッケローニ監督のもと、近年では最も内容のあるサッカーをしていたけども、
「良いサッカーをしていても勝てるとは限らないよ」というレクチャーを受けたのが、
3戦全敗で終えたコンフェデレーションズ杯だった。
W杯のプレ大会で手痛いレクチャーを受けたにも関わらず、
「自分たちがやっているサッカーは間違いない」と盲信して突き進んだ結果が、
2014年の本大会でのグループリーグ敗退だったと思っている。
当時と比べると、今の日本は守備に重きを置き、
現実的なサッカーをやっていることもあってか、
この試合では、ボールを握って攻めようとするメキシコに対し、
カウンターを狙う日本という構図になったね。
まあ、この日の日本は鈴木武蔵と伊東純也を前線に起用したので、
必然的にカウンター狙いになるところはあったのだけど、
これがこの日のメキシコ相手にハマり、日本が主導権を握って試合を進めることが出来た。
しかしながら、そんな日本の前に立ちはだかったのが、
メキシコの象徴とも言えるGKのオチョア。
原口のミドルシュートや鈴木武蔵との1対1を防ぎ、日本に得点を許さない。
逆に日本としては、この良い時間帯に得点出来なかったことが、
結果的に自らの首を絞めることになってしまったね。
選手の個の力以上に試合に流れを変えた監督の采配
前半はアンカーを配した4−3−3で戦っていたメキシコだったけど、
1シーズンだけとは言え、スペインの名門・バルセロナでも指揮を取り、
昨年からメキシコを率いる”タタ”・マルティーノは、前半の低調なパフォーマンスを受け、
後半から4−2−3−1に布陣変更し、日本相手にミラーゲームを仕掛けてきた。
ミラーゲームにしたことで必然的に1対1の局面が増え、
個の力で劣る日本が徐々に劣勢に追い込まれていく。
さらにそこに、選手交代での森保監督の悪手も加わり、
完全にメキシコに主導権を渡してしまった。
前半の決定的なチャンスでシュートを決められなかったものの、
相手の裏のスペースへ走ってロングボールを受けて起点を作れる鈴木武蔵を下げ、
南野を投入したことで、攻撃の形が作れなくなってしまったね。
南野は、起点となる選手の近くで間受けするのが得意な選手なので、
最前線で鈴木武蔵と同じ役割を担うのは無理だろう。
そもそもの日本とメキシコの実力差を考えると失点するのも時間の問題で、
ヒメネスのターンからのトーキックシュートや、
1対1を確実に決めるロサーノの決定力もさすがだったけど、
采配によって試合の流れを明け渡してしまった感が否めない。
2点ビハインドになってから久保や浅野を投入して得点を目指したけど、
2点リードしてあまり前に出てこなくなったメキシコ相手に、
前線にスペースが無いと生きない浅野を投入して何が出来るのか。
後半に入ってグラーツのスタジアムに立ち込めた霧は、
前半と打って変わって突如視界不良になった日本の戦いを暗示しているかのようだったね。
痛みが伴う定期的なレクチャーを終えて
この試合で今年の日本代表の活動は終了。
10月のオランダ遠征でのカメルーン戦、コートジボワール戦、
そして今月のオーストリア遠征でのパナマ戦と、直近の3試合で、
2勝1分で失点0と良い調子で来ていたけど、最後の最後で手痛い敗戦を喫してしまった。
メキシコは定期的に日本に手痛いレクチャーを施してくれるけど、
先述の2013年のコンフェデレーションズ杯の時然り、
そのレクチャーを次の戦いに上手くいかせているとは言い難い。
アジアでは強豪だけど世界的にはまだまだという、
この試合でメキシコが教えてくれた日本の立ち位置を再認識して、
これから続くW杯予選に謙虚に臨んでほしいね。
(そもそもW杯予選が予定通り開催されるのか怪しいけども…)
日本0−2メキシコ
’63 ラウル・ヒメネス
’68 イルビング・ロサーノ