【明治安田生命J3リーグ30節 藤枝MYFCvsガンバ大阪U-23】蹴球都市に沈んだヤングガンバ

サッカーの音

コロナ禍によってスタジアムからサポーターの歌声が消えて久しいけど、
それによって今までスタジアムで聞こえなかった音が聞こえるようになった。

監督がピッチにいる選手に向かってかける声、ピッチの中で選手同士が掛け合う声、
ボールを蹴る音、選手同士がぶつかる音、好プレーに自然と起こる拍手。

例えスタジアムに歌声は無くとも、サッカーというスポーツが発する音は、
サッカーが本来持っているスポーツとしての魅力を発信しているような気がして、
コロナ禍での応援スタイルは決して悪いことばかりではないと感じている。

その一方で録音したサポーターのチャントをスピーカーから流したり、
叩いて応援するためのスティックバルーンやハリセンをサポーターに配るクラブもある。

それらのクラブはスタジアムの雰囲気を盛り上げたいと思ってやっているんだろうけど、
そもそもサポーターの歌声は、戦況に応じて抑揚やテンポが変わる生き物のようなもので、
BGMのようにスピーカーから一定の音量で流れる機械的なものではない。

なので、スピーカーからサポーターのチャントを流すという行為は、
サポーターのチャントはBGMと変わらないと言っているようで、
個人的にはあまり好きではないのよね。

この日、U-23の試合の観戦のために訪れた藤枝は、蹴球都市を自称するだけあって、
J3のクラブながらサッカー専用スタジアムを持ち、
街のいたるところにサッカーを感じられる素晴らしい場所だった。

しかしながら、そんな蹴球都市を代表するクラブが、
スピーカーから流すサポーターの歌声やハリセンの音によって、
スタジアムの雰囲気を作り出していたことに残念な気持ちを覚えたね。

あ、でも、試合後にホームゴール裏から出された、
「ありがとうU-23」の横断幕に関しては感謝します。

前線にパワーを

9試合ぶりの勝利を目指して藤枝に乗り込んだU-23のスタメンは、
GKにイ・ユノ、DFラインは右から松田、タビナス、山口、
中盤は右から村上、伊勢、菅野、黒川、シャドーの位置に高木と中村仁郎を置き、
1トップに坂本が入る3−4−2−1の布陣を採用。

今治戦で故障した黒川と、理由は不明だけどU-23の大阪ダービーを最後に
ピッチから離れていた伊勢がスタメンに復帰したね。

対する藤枝の指揮官の石崎監督と言えば、
柏の監督時代に採用していた前線のプレスからのショートカウンターが印象的だけど、
藤枝ではブロックを敷いて守って、1トップにシンプルに当てるというサッカーを
志向しているみたいやね。

それにしても、その当てる1トップがデカモリシとは、ヤツも随分偉くなったもんだな。

ただ、前節の盛岡戦でも露呈してしまったように、
軽量級揃いのU-23はこの手の相手は苦手である。

幸い、藤枝の選手が決定機でGK正面にシュートをする場面が多かったので、
無失点で前半を折り返すことが出来たけど、馬力不足でシュートまで持ち込めない
坂本と中村仁郎のプレーを見ていると、
後半に得点をあげることも望み薄だと思わざるを得なかったね。

今のU-23にとって失点は命取り

後半に入っても前半と戦況は変わらなかったのだけど、ガンバのゴール前の混戦で、
伊勢の足に当たったボールがイ・ユノの前に転がると、
これをキャッチしたイ・ユノがバックパスの反則を取られてしまい、
ペナルティエリア内でFKを与えてしまうことに。

伊勢は意図的にイ・ユノにパスをしたわけではないんだろうけど、
いつぞやのトップチームの試合で
林瑞輝が同じようなプレーでバックパスの反則を取られたことがあったので、
イ・ユノには、反則を取られるかもしれないキャッチを選択するのではなく、
セーフティに大きく蹴り出して欲しかったね。

ただ、この手のペナルティエリア内でのFKって、案外、決まらないことが多いのだけど、
直前にデカモリシとの交代でピッチに入っていた吉平にきっちりと決められ、
先制を許してしまった。

壁がキッカーに詰めるタイミングを見る限り、壁に入った選手とイ・ユノの間で、
上手くコミュニケーションが取れていなかった感じだったね。

ビハインドを背負った森下監督は、高木に代えて荻野を投入して4バックに移行したり、
黒川に代えてフィジカルに長けたシン・ウォノを投入するなどの采配を見せたけど、
前半から見られていた攻撃陣のパワー不足は最後まで解消されず、
2試合連続で無得点での敗戦を喫してしまった。

まだ4試合あるか、もう4試合しかないか

唐山、川﨑、塚本といった、今季前半のU-23の攻撃を支えていた選手たちが、
トップチームを主戦場にするようになってから、U-23の前線が駒不足になっているね。

だからと言って、彼らにまたU-23でプレーしてもらうのも、
セカンドチームの本来の目的を考えると本末転倒なので、
今いる選手たちでなんとかするしかない。

今季で活動休止するU-23のチームに残された試合はあと4試合。

サッカー選手としてのキャリアはU-23が終わっても続いていくだろうから、
前述の攻撃陣だけでなく、このチームでプレーする全ての選手にとって、
この残り4試合が有意義なものになってほしいね。

藤枝MYFC10ガンバ大阪U-23
’64 吉平翼