【明治安田生命J1リーグ29節 川崎フロンターレvsガンバ大阪】斬られ役を演じるために等々力に行ったわけではないのだけど

ホームでの戦いをもう一度

もう随分と前のことのように感じられるけど、8月にホームで行われた川崎戦は、
今季のガンバのベストパフォーマンスと言っても良いような内容だった。

DFラインからパスを繋ぐ川崎に対し、猛然と前線からプレスを仕掛け、
高い位置でボールを奪って繰り出すショートカウンター。

また、マイボール時は、川崎の前からの守備に対し、簡単にロングボールに逃げず、
素早いパス回しでプレスを掻い潜るビルドアップ。

結果的にゴールだけが奪えずに0-1で敗戦を喫したけど、
宮本監督が3バックでやりたいサッカーってこれなんだなと思った8月1日だった。

しかしながら、涼しく始まった夏が本来の暑さを取り戻すにつれてプレスの威力が落ち、
DFラインからのビルドアップも研究されてミスが目立つようになると、
勝利から見放され、結局3バックはお蔵入りになった。

あれから4か月近くが経ち、等々力に乗り込んだガンバの前に立ちはだかったのは、
2020年のJ1リーグ王者に王手をかけている川崎。

順位表が示す通り、ただでさえも実力差があるのは明らかなのに、
川崎は前節から中3日に対し、ガンバは中2日とコンディションの差も明白。

ただ、今のガンバに8月のホームでの戦いを再現出来れば、
川崎の今節での戴冠に待ったをかけることも可能じゃないかと、
淡い期待を抱いていたのだけど、その期待は脆くも打ち砕かれることになる。

点と点をボールが結ぶ

前節の浦和戦で故障した小野瀬と藤春のケガの具合が心配だったけど、
藤春が左SBでスタメン出場する一方で、小野瀬は欠場し、右サイドは福田が先発。

ただ、メンバー以上に気になったのが、
自陣でブロックを敷いて守ってワンチャンス狙いという戦い方。

この日のガンバは、コンディション面での不安も加味してか、
ホームでの対戦の時のように前からボール奪いに行くことはほとんど無く、
チームとしてのベクトルが後ろ向きのような印象を受けた。

そんな敵陣にスペースが少ない状況でも、
次々とチャンスを作り出す川崎のサッカーの質は流石の一言で、
ガンバが何も出来ずにいる間に、登里のピンポイントのアーリークロスを
レアンドロ・ダミアンに決められ、先制を許してしまった。

思えば、ホームでの対戦の時に唯一許した失点も、
三笘の横パスを大島がダイレクトでシュートするという技ありの得点だったように、
上手く守っていても、出し手と受け手の2人だけの関係性で、
あっさりと先制点を奪ってしまうのだからひとたまりもないね。

ただ、今回は失点したとは言え、まだ最少得失点差だったので、
1点ビハインドを背負っても大幅に戦い方を変えることは無かったのだけど、
前半終了間際にセットプレーから家長にゴールを決められ、
2点ビハインドとなったことで、後半から否応にも前に出ることを余儀なくされてしまう。

この敗北から何を学ぶか

後半から倉田をトップ下の位置にコンバートするなど、
1点返すべく宮本監督は手を打ってきたけど、後半も最初に試合を動かしたのは川崎で、
カウンターから裏のスペースへドリブルで抜け出した三笘が、
中にいた家長に折り返すと、これを家長が右足で決めてこの日2点目。

家長はさらに後半28分にも右足でゴールを決めて、なんとハットトリックを達成。

左利きなのにシュートは右足の方が上手いというのは、
ガンバにいた時から変わらないね。

それにしても、今月は元ガンバの選手にハットトリックを達成されるのが2回目なんですが、
そんなに恩返しされるほど恩を売った覚えは無いんですけど。

家長の3点目のゴールの前後で奥野、川﨑、塚元、
さらに後半38分には唐山と若い選手が次々と投入されたけど、
これは勝利を目指してというよりは、将来に向けた投資も兼ねての采配だろう。

この試合を見る限り、川崎との差はそう簡単に埋まりそうにないけど、
いつかこの大敗は無駄ではなかったと言えるように、
後半から出場した若い選手達には、J1王者との対峙から何かを感じ取って欲しいと思う。

まだシーズンは終わっていない

サッカーに興味のない人から、「Jリーグの魅力って何?」と訊かれると、
僕は、「チームの実力差が拮抗していて、どこのチームが優勝するかわからないところ」
と答えるようにしている。

確かに、競技としてのレベルは欧州や南米のリーグの方が高いけど、
セリエAはユベントス、ブンデスリーガはバイエルンミュンヘンなど、
優勝するクラブはたいてい決まっていることが多いから、
シーズン終盤の優勝争いのハラハラドキドキ感を味わうのが難しいからね。

しかしながら、今季のJリーグには上述のような魅力は無かったように思う。

それは決して圧倒的な戦績でリーグを制した川崎が悪いのではなく、
川崎に独走を許したその他17チームの責任なので、
来季は、川崎を除く全てのチームの監督が、
川崎に勝つためにはどうすればいいのか知恵を振り絞って考えなければいけないね。

この大敗のショックはすぐには癒えそうにないけど、
我々が今季ここまで18の勝利を積み上げ、現時点で2位につけていることは紛れもない事実。

そこに関しては胸を張り、自信を無くすこと無く、
直近のホームでの鳥栖戦に勝利すべく、良い準備をして欲しいと思います。

川崎フロンターレ50ガンバ大阪
’22 レアンドロ・ダミアン
’45 家長昭博
’49 家長昭博
’73 家長昭博
’90 齋藤学