【全国高校サッカー選手権千葉県大会 決勝 流経大柏vs市立船橋】絶対に負けられない相手はすぐ近くにいる

2019年1月12日

 

両雄は全国では並び立たない

高校野球では大阪桐蔭と履正社という、
ともに全国制覇を狙えるだけの力がある両雄が、
甲子園の大阪府代表の1つの切符を争っているけど、
高校サッカーでは千葉で同じ状況が発生している。

千葉のサッカー強豪校として全国的な知名度を誇り、布啓一郎、石渡靖之、朝岡隆蔵と、
監督が代わりながらもそのブランド力を落とすことなく、
長く高校年代のサッカーを牽引し続ける市立船橋。

市原緑や習志野の指揮官として市船と鎬を削っていた本田裕一郎を招聘し、
2000年代に入って、市船と並んで千葉県を代表する強豪校へと成長した流通経済大柏。

今季も申し合わせたかのように、第97回全国高校サッカー選手権千葉県大会の決勝で、
両雄は相まみえた。

選手権行きの切符を手にしたのは流通経済大柏

本田裕一郎のサッカーははっきり言って無骨だ。
パスワークで試合を支配するわけでもなければ、
流れるようなカウンターでゴールを陥れるわけでもない。

日々の鍛錬で鍛え上げられた体躯を赤いユニフォームで纏った屈強な選手たちが、
泥臭くゴールを奪い、体を張ってゴールを守る。

長年、同じ県内の強豪である市船を上回るべく、
プロセスよりも結果にこだわってきた本田裕一郎のサッカー観が投影されたのが、
流通経済大柏のチームスタイルではないだろうか。

この試合で決定機を何度も逸し続けた市船に対し、
セットプレーからのこぼれ球と相手選手のミスを、
抜け目なく2得点に繋げた狡猾な戦いぶりは彼らの真骨頂だった。

育成年代でこのような結果主義的な戦い方をするのは賛否両論あるかもしれない。
ただ、もはやその勝利に対する執着心に様式美すら感じる。

辛酸を舐めた名門

市船は2年連続で千葉県大会の決勝で流通経済大柏に屈し、
選手権行きの切符を逃してしまった。

前半45分はプランがハマらなかったのかほとんど何もさせてもらえなかったり、
後半に何度も訪れた決定機をモノに出来ないだけでなく、自らのミスで追加点を許すなど、
名門校にあるまじき試合運びの稚拙さが目立った。

近年、湘南ベルマーレの杉岡大暉や、アルビレックス新潟の原輝綺など、
ボランチから後ろのポジションでは有望な選手を輩出している反面、
名古屋グランパスの和泉竜司を擁して全国制覇を達成して以降、
年々、前線のタレントの質が落ちているような印象を受ける。

プレミアEASTでも流通経済大柏の後塵を拝している現状に、
高校サッカーの歴史に名前を刻んできた名門が黙って引き下がる姿は見たくない。
来季は市船ブルーのユニフォームが千葉だけでなく、
全国の覇権を取り戻すことを期待している。

選手権に向けて

地区予選でこれだけのレベルの高い試合が見られるという贅沢さがある反面、
お互いに全国制覇を狙えるだけの力がありながら、
どちらか一方が予選で姿を消してしまうもったいなさという、
2つの感情が交錯するのが選手権の千葉県大会決勝の面白さである。

昨季は流通経済大柏が埼玉スタジアムの決勝で前橋育英と相対した。
今季も同じ県内の強力なライバルを退けて全国へ勝ち進んできた流通経済大柏が、
選手権を盛り上げてくれるだろう。

流通経済大柏20市立船橋

’14 熊澤和希
’79 岡本竜