【全国高校サッカー選手権大会 開幕戦 早稲田実業vs広島国際学院】年の瀬の千駄ヶ谷に勝利の紺碧の空は響かず

4年ぶりに戻ってきたあるべき姿の選手権

岡山学芸館が県勢初の全国制覇を果たした前回大会から1年、
今年も高校サッカー選手権の季節がやってきた。

今大会は決勝が開催される成人の日が1月8日なので、
例年以上に大会期間が短く過密日程になっているけど、
選手たちには熱く激しい戦いを期待したいね。

また、今年の5月にコロナが5類移行されたことを受け、
感染症対策の多くの規制が撤廃されたことで、
入場行進する選手たちやスタンドで応援する生徒たちの口元にはマスクは無く、
ようやくコロナ禍以前の選手権の風景が戻ってきた。

とは言え、名古屋高校の田中主将の選手宣誓の中にもあったように、
この世代の選手たちはコロナ禍によって制限がある中でのプレーを強いられてきたので、
4年ぶりに何も規制の無い状態で行われる晴れ舞台では、
自分がこれまで磨いてきたものを思う存分発揮して欲しいと思う。

早実の名前はサッカーでは効果は持たない

開会式後に行われる開幕戦のカードは、
東京都B代表の早稲田実業と広島県代表の広島国際学院の初出場対決。

早稲田大学はサッカーの名門だし、
早実自体も野球やラグビーなど全国クラスの部活動がある高校なので、
早実のサッカー部が一度も選手権に出たことが無かったのは少々意外だった。

なので、早実がどんなサッカーをするのか想像できなかったのだけど、
意外にも5バックでゴール前を固く守り、
個人技に長ける9番久米と10番戸祭の2人で相手ゴールに迫るという、
長谷川健太のチームのようなサッカーをする高校だった。

一方の広島国際は、GK1番片渕もビルドアップに加わりながら、
大きく蹴らずにじわじわと前進するという対極なスタイルのチームだった。

試合の入りこそ、国立に詰めかけたエンジを身に纏うファンの後押しを受けた早実が、
広島国際のビルドアップのミスを突いて相手ゴールに迫る場面はあったものの、
訪れたシュートチャンスを久米が立て続けに外してしまい、先制ならず。

すると、徐々に落ち着きを取り戻した広島国際の選手たちが攻勢を強めると、
前半28分に早実陣内でスローインを獲得。

このスローインをロングスローに見せかけて手前にいた23番岡田に渡すと、
岡田のクロスを6番長谷川がファーで折り返し、
最後は11番野見が押し込んで、広島国際が先制。

予選から無失点だった早実にとっては今大会初失点となったね。

この得点で勢いに乗った広島国際は、立て続けに早実ゴールにシュートを浴びせるも、
早実のGK1番高村がことごとくストップし、
なんとか最少失点でハーフタイムを迎えることに成功。

もしGKが高村じゃなかったら前半で試合は決まっていたかもね。

盛り上がっただけで終わった試合終盤の攻防

早実の森泉監督は、ハーフタイムで2番根本に代えて12番森を投入し、
DFラインの選手を入れ替えてきたけど、
試合の流れは変わらず、依然広島国際のペースで進む。

すると、2番藤井のロングスローを、長谷川がニアで逸らすと、
これがゴールマウスに吸い込まれ、後半12分に広島国際に追加点。

ここまで生まれた2得点の起点はいずれもスローインだということを考えると、
やはり高校サッカーでスローインは貴重な得点源だなということを、再認識させられたね。

その後も広島国際が試合の主導権を握って試合を進めていたけど、
お互いに運動量が落ちて選手間の距離が間延びしてくると、
早実が広島国際陣内に攻め入る回数が増えてくる。

まあ、2-0とリードしていて、試合時間も残り10分ぐらいなのに、
リスクを冒してゴールを目指す広島国際の試合運びもどうかと思ったけど、
スタンドに詰めかけた早実ファンに試合終盤の盛り上がりをプレゼントするという意味では、
広島国際はある意味エンターテイナーだったのかもしれない。

実際、セットプレーから早実の選手にシュートを打たれる場面はあったものの、
片渕を中心とした守備で最後までゴールラインは割らせず、クリーンシートで試合終了。

早実の応援団に負けない大迫力の声援で、青い選手たちを鼓舞していた広島国際の応援団に、
2回戦進出という良い知らせ届ける事が出来たね。

例年より暖かいのは気温だけではない

斯くして火蓋が切られた102回目の高校サッカー選手権。

明日から関東の各地で繰り広げられる熱戦を勝ち抜き、
再び国立競技場に戻ってきて優勝旗を手にする高校はどこになるのか。

今大会も熱い冬の戦いを存分に楽しみたいと思います。

早稲田実業02広島国際学院
’28 野見明輝
’52 長谷川蒼矢