【天皇杯決勝 ガンバ大阪vsヴィッセル神戸】タイトルを獲るにはまだ足りないものがあるということ

雌伏の日々にさよならを

当時Jリーグ史上最高と謳われた川崎フロンターレの前に、
1-0というスコア以上の絶望的な差を見せつけられた2021年の元日から4年、
大阪の青黒が賜杯を手にするチャンスが巡ってきた。

振り返れば思い出す、屈辱にまみれた直近3シーズン。

今季の我々はシーズン終盤までACL出場権を争う戦いが出来ているので、
近年と比べれば恵まれた1年を過ごしているけれど、
だからと言って何かを手に入れた訳でもない。

この日の対戦相手であり、現在J1リーグで首位に立つヴィッセル神戸は、
わざわざ説明するまでもなく手強い相手だけど、
ここを乗り越えて千駄ヶ谷の空に賜杯を掲げた先に、
新たなガンバ大阪の歴史が待っているはずだ。

背番号7の不在を嘆いていても仕方ない

遠藤保仁が飛田給の空に賜杯を掲げて以来、
9シーズンぶりの戴冠を期すガンバ大阪のスタメン11人は以下の通り。

決戦前のガンバサポーターを激しく動揺させた宇佐美貴史肉離れの報せにより、
前線はCFに坂本、トップ下に山田の組み合わせ。

大阪ダービーなどでアカデミー出身選手を起用するなど、
大一番で浪花節の采配を執ることがあるポヤトスだけど、
倉田に関しては浪花節云々関係無く、
直近のパフォーマンスで左ウイングのスタメンを勝ち取ったと思う。

序盤からボールを握ったのはガンバだったけど、
そもそも神戸はボールポゼッションに固執しないチームなので、
ガンバが有利に試合を進めているという印象は無かった。

それでも山田のクロスからダワンのヘディングシュートが枠外に外れた時は、
ゴールはそう遠くないと期待させられたけど、
お互いに慎重になって決定機が少なくなるであろうカップ戦の決勝では、
少ない決定機をいかに決め切るかが勝敗を分けるポイント。

結果的に、この場面で決め切れなかったことがこの試合の分水嶺だったように思う。

その後も右SBからボランチの位置に絞ってポジションを取る半田を使いながら、
ポゼッションを高めて戦うことが出来ていたガンバだけど、
決定的なチャンスを作り出すまでは至らず。

対する神戸は武藤と酒井が縦に並ぶストロングサイドから攻撃を仕掛けてくるも、
倉田が先発起用に応える体を張った守りで凌ぎ、試合はスコアレスでハーフタイムへ。

ポジションに拘らず色々な場所に顔を出す宇佐美がいないことで、
この日のガンバはポヤトスが本来やりたいサッカーは出来ているんだろうけど、
「ポヤトスのサッカーだけでは手詰まりになる」という宇佐美の発言にあるように、
まさに手詰まりになっていたのがこの試合の前半だったのかなと思ったね。

勝てるチャンスがあった試合だからこそ芽生える感情

お互い選手交代無く迎えた後半だったけど、ポヤトスは後半に入ってほどなく、
倉田に代えて先日オカマを掘られたウェルトンを投入。
(ザスパ群馬のスタッフの交通事故の件があったばかりなので、無事に試合に出られて何より)

こんなに早く選手交代のカードを切るなら、
交代回数にカウントされないハーフタイムで交代させればいいのにと思ったけど、
そのウェルトンはいきなり対面の酒井を1対1でぶち抜くなど、アクセル全開。

しかしながら、ウェルトンのマイナスのクロスを受けて、
ペナルティエリア手前から放ったダワンのシュートは前川に防がれてしまい、
ここでも先制点を挙げることに失敗。

それでも、ここからウェルトンがいくつもチャンスを作ってくれると期待したのだけど、
ここで吉田監督が、井出に代えて中盤の選手ながらターゲットマンになれる佐々木を投入し、
中盤を省略してシンプルに前線にロングボールを送り込む戦いにシフトしてきた。

これにより、ガンバが自陣に押し込まれる時間が長くなると、
佐々木目掛けて放り込まれた前川のロングボールを中谷が潰し切れず大迫に繋がれると、
大迫のパスを受けた武藤のグラウンダーのクロスを福岡がクリアし切れず、
こぼれ球を宮代に押し込まれてしまい、後半19分に痛恨の先制点を献上。

1点ビハインドになったガンバは、山下と山田に代えてジェバリとアラーノを投入し、
ウェルトンを右サイドに回し、ウェルトンと初瀬をマッチアップさせる戦い方にシフト。

しかしながら、これも初瀬に代えて対人の守備にストロングがある本多の投入で、
ガンバの右サイドに蓋をされてしまう。

さらに、試合終盤にガンバがパワープレーを仕掛けてきたのを見て、
大迫に代えて山口を投入してロングボールの出どころを潰してくるなど、
ガンバのやることなすこと全て対策済といった感じで完全に手詰まりに。

吉田孝行って、三木谷会長が連れてくる外国人監督が上手くいかずに解任された時に、
暫定監督として監督の座に据えられる都合の良い存在という印象が強かったけど、
雑な扱いでもめげずに勉強を続けることで、
監督として大きく成長したんだなと思い知らされたね。

結局、ガンバは最後までゴールを割ることが出来ず、9年ぶりのタイトル獲得とはならず。

奇しくも4年前の同じ舞台で川崎に敗れた時と同じスコアになったけど、
今回は決められるところで決めておけば勝者に回ることが出来た試合だっただけに、
4年前よりも悔しい気持ちが湧いてくる。

とは言え、この悔しさを経験出来るのもここまで勝ち上がったチームの権利なので、
この悔しさが青黒の選手たちの今後のサッカー人生の糧になってくれることを願う。

まだ2024シーズンは終わっていない

こういうゴールが遠い試合展開になってしまったので、
どうしても宇佐美不在がクローズアップされてしまう。

ただ、今季残り2試合、その宇佐美を欠いた状態で臨むことになるので、
戦える選手たちは顔を上げて来週のアウェイ新潟戦を見据えてほしい。

宇佐美がベンチに下がってから勝ち越しゴールを挙げた先々週の磐田戦のように、
11月最後の日のビッグスワンのピッチに立つ青黒の選手たちは、
きっとやってくれるはずだ。

ガンバ大阪01ヴィッセル神戸
’64 宮代大聖