【全国高校サッカー選手権大会 開幕戦 國學院久我山vs前原】コマザワッソ

今年も熱い冬が始まる

高校サッカー選手権が行われる年末年始のこの時期は、
個人的に一年で一番楽しい時期である。

僕が贔屓にしているガンバ大阪の試合を見ることももちろん楽しいのだけど、
ガンバは僕の生活と密接になりすぎているので、感情移入が過ぎるあまり、
試合内容によっては逆にストレスを溜めてしまうこともある。

その反面、ガンバの試合ほど感情移入しない分、
フラットな視点でサッカー観戦を楽しめる選手権は、
純粋に僕の嗜好を満たしてくれるコンテンツである。

選手は過密日程で大変かもしれないけど、2年後に控える100回大会を前に、
選手ファーストで大会方式を見直すという話も出て来た。

今回で98回を数える伝統のある大会だけど、過去の慣習に縛られることなく、
この魅力的な大会をより良いものにアップデートしていって欲しいと思う。

連戦がもたらしたのは疲労ではなく高いインテンシティ

例年、開会式の後は、東京都の代表が開幕戦を行うのがこの大会の慣習なのだけど、
今大会も例に違わず、東京都B代表の國學院久我山と、沖縄県代表の前原が対戦した。

今年度の久我山の試合は、6月に鹿島で行われた関東高校サッカー大会で1試合観戦したけど、
4年前の選手権で準優勝した時を彷彿とさせるコレクティブなサッカーをしていたので、
東京都Bの決勝で久我山が勝利して全国行きの切符を掴んだと聞いた時に、
6月に見た試合の事を思い出して、当然だろうなと納得した。

東京都Bの決勝で帝京を応援していたオールドファンには申し訳ないけども。

ただ、今大会の久我山の懸念材料は、ただでさえも過密日程の選手権なのに、
今大会が始まる数日前まで、プリンス関東の入れ替え戦を戦っていること。

もしかしたら、選手権の開幕戦の時点で、
選手は既に疲弊しきっているのでは?という懸念もあったけど、
そんな心配は杞憂だったよう。

むしろ、自分たちと同じぐらいの強さの相手と連戦を繰り広げていたので、
高いインテンシティを持ったままこの試合に臨むことが出来た。

対する前原については、あまり情報は持ち合わせていないのだけど、
前半に試合に入り切れず、そのまま立て直せずにズルズルと大量失点を喫してしまったあたり、
もしかして沖縄県リーグが終わってから、真剣勝負の公式戦はやっていないのでは?

順当に久我山が勝つだろうなと思って見始めた試合だったけど、
予想外に大差がついたのは、単純な実力差に加え、
真剣勝負の場数にもあったような気がしてならない。

1対1の局面が増えるミラーゲームの功罪

久我山のサッカーは4−3−3の布陣で、右サイドの10番戸坂のところで攻撃の起点を作って、
左サイドの7番山下が斜めにペナルティエリアに侵入して仕留めるという形が基本と見た。

4年前に選手権の決勝に進出した時は、現・長崎の名倉巧が、
4−2−3−1のトップ下の位置で攻撃の全権を握っているような感じだったけど、
今大会のチームは、アンカーの6番福井がバイタルエリアを埋めつつパス回しの交通整理を行い、
インサイドハーフの14番田中と8番大窟が広い範囲を動き回って、
攻撃を活性化させている感じだった。

この中盤3人の関係性は、ガンバの倉田、井手口、矢島の3人を想起させるものがあり、
田中と大窟に関しては2年生ということで、
来年度も継続的にチェックしたいと思わせられる選手やったね。

前原も久我山と同じ4−3−3の布陣を敷いていたけど、
終始自陣に押し込まれる展開が続いていたせいか、
普段はどういうサッカーをしているのか把握できなかった。

苦し紛れに前線にクリアしたボールが味方に通ってたまたまカウンターになる形しか、
攻撃らしい攻撃は出来なかったからね。

前年度の沖縄代表の那覇西は、この日と同じ駒沢陸上競技場で、
地元の駒澤大高をPK戦の末に破り、「沖縄県勢もやるじゃないか」という姿を見せたけど、
今年度の前原の敗北は、前年度の那覇西の健闘にモヤをかけるものだったように思う。

1月13日まで続くドラマ

いよいよ明日から1回戦がスタート。

個人的には青森山田の連覇は固いと思っている今大会だけど、
未熟な高校生の大会であるが故、何が起こるのかわからないのがこの選手権という大会。

今年の冬はどんなドラマが見られるのか、今から楽しみでならないね。

國學院久我山80前原
’6 山下貴之
’11 山下貴之
’23 山本航生
’52 山下貴之
’60 山本航生
’64 戸坂隼人
’66 河原大輔
’70 山本航生