【全国高校サッカー選手権大会 決勝 大津vs青森山田】予約していた優勝旗を青森から取りに来ただけの話

大一番の高揚感と宴の終わりの寂寥感が交錯する

12月28日に開幕した高校サッカー選手権もいよいよ決勝戦。

チーム内で新型コロナウイルスの感染者が出たという理由で、
関東第一が出場辞退したという悲しい出来事はあったけど、
有観客で大会最後の試合を迎えることが出来たのは、素直に喜ばしいことだと思う。

そんな去年に続きコロナ禍の中で開催された大会の決勝戦を戦うのは、
プレミアEASTの青森山田とプレミアWESTの大津。

東の横綱vs西の横綱と形容するに相応しい、実力伯仲の好カードになったけど、
蓋を開けてみたら拍子抜けするような試合展開になってしまった。

相手の弱点を突くのではなく強みを破る

大津は準決勝の関東第一戦が不戦勝だったので、
準々決勝の前橋育英戦から中5日で迎えた決勝なのに対し、
準決勝の高川学園戦から中1日で決勝を戦う青森山田は日程面で不利なので、
先に点を取って優位に試合を進めたいのは後者だろう。

前半キックオフの笛が鳴ると果敢に大津陣内に攻め入り、
何度もセットプレーのチャンスを獲得する青森山田。

ただ、大津のセットプレーのディフェンスは、
ニアポストに身長191cmの9番小林が立つので、ニアサイドで勝負するのは難しいし、
さらにGKの佐藤も191cmの長身を生かしたハイボールの処理が持ち味なので、
ファーを狙ったキックもキャッチされる可能性が高い。

準々決勝の前橋育英戦を見て、
大津からセットプレーで得点するのは非常に難しそうだという印象を持ったのだけど、
その大津のゴールをセットプレーでこじ開けてしまうのだから、
さすが青森山田と言わざるを得ない。

青森山田のCKの場面で、青森山田の9番名須川がバスケットボールのスクリーンのように、
ニアポストの小林に体を当てて動きを封じると、
名須川の後ろから走り込んだ5番丸山が頭で合わせて、ゴールネットを揺らしてみせた。

青森山田はこの先制点に至るまで何度もセットプレーのチャンスを獲得して、
その都度違うパターンのセットプレーを仕掛けて大津のディフェンスを揺さぶってきたけど、
なんとか持ち堪えていた大津の守備はついに瓦解してしまったね。

さらにその3分後には、先制点の影の立役者となった名須川がゴールネットを揺らし、
青森山田の2点リードで試合はハーフタイムへ。

個を伸ばしても超えられない組織の差

青森山田相手に前半で2点ビハインドというのは確かに厳しい展開だけど、
前々回の大会では、青森山田が前半を2点リードで折り返すも、
後半に3得点を挙げて逆転した静岡学園が優勝を飾ったということもあったので、
諦めるのはまだ早い時間帯である。

逆転を期す大津は、後半開始直後からギアを上げて青森山田陣に攻め入り、
何度かセットプレーのチャンスを獲得するも、得点を上げるまでには至らず。

逆にロングスローの流れから松木にヘディングシュートを決められてしまった。

準決勝の高川学園戦で脚を痛めて昨日は歩くのもやっとだったという話だけど、
この試合の松木を見てケガしていると思った人はどれだけいただろうか。

痛みを押して試合に出場することを、
美談のように扱う日本のマスコミにはうんざりしているところがあるので、
将来がある選手にはあまり無理してほしくないのだけど、
やはりこの松木玖生という選手はスペシャルだなと思わざるを得なかったね。

3点ビハインドを追いかける展開となった大津だけど、
小林を目掛けたアバウトなロングボールが前線に飛んでいくだけの攻撃では、
追いつくどころか1点返せそうな気すらせず、
後半33分に青森山田の17番渡邊にゴールを許し、ジ・エンド

大津って練習時間のほとんどが個人練習ということもあってか、
個々の選手は良い選手が多いけど、
その個をチーム力に還元出来ていないという印象は昔から強い。

地方の公立高校にも関わらず多くのプロ選手を輩出しているのは、
この個を伸ばす練習方法あってのものなので、そこを否定するつもりは毛頭無いけど、
これまで夏冬併せてタイトルを獲ったことのない大津が悲願を達成するには、
チーム力の熟成は避けて通れないんじゃないかと思うね。

波乱が無い大会もそれはそれでいい

第100回を数えた記念すべき高校サッカー選手権の優勝旗を手にしたのは青森山田。

一番強いチームが順当に優勝したという予定調和の結末に、
面白みの無さを感じている人もいると思うけど、
決勝戦の舞台で2年続けて引き立て役を演じてしまっていただけに、
今大会の青森山田の優勝に懸ける気持ちは相当なものがあっただろう。

今日ばかりは、そんな青森山田の絶対王者の名に相応しい戦いぶりを素直に賞賛したいと思う。

「青森山田を止めろ」の流れは、
高体連だけでなくJユースも巻き込んで向こう何年も続きそうだけど、
そんな潮流にも負けずに青森山田がラスボスとしての地位を確立し続けられるのか。

これからも日本サッカーのユース年代の戦いを注視していきたいと感じた、
2022年の成人の日でした。

大津04青森山田
’37 丸山大和
’40 名須川真光
’55 松木玖生
’78 渡邊星来