【東京オリンピック 準決勝 日本vsスペイン】三度潰えた決勝戦への挑戦

2023年1月1日

2012年の勝利をもう一度

自国開催のオリンピックでの金メダルを目指す若き日本代表が準決勝で相対するは、
優勝候補のスペイン。

ヨーロッパの国は得てしてオリンピックを軽視しがちだけど、
スペインはEUROに参加したA代表組も含めてベストメンバーで今大会に臨んでいる。

何れにせよ、日本サッカーが現状からもうワンランク上を目指すために、
超えなければいけない壁としてこれ以上無い相手だ。

ロンドンオリンピックの初戦でスペインと対戦した時は、
前半終了間際のイニゴ・マルティネスの退場で数的優位になり、
セットプレーから大津が挙げたゴールを守り抜いて勝利することが出来たけど、
その再現が出来るかどうか。

シュート1本に対する執着心

埼玉スタジアムで行われた歴史的一戦に臨んだ日本の11人は以下の通り。

ニュージーランド戦を累積警告で欠場した酒井が復帰したのと入れ替わるように、
ニュージーランド戦で警告を受けた冨安が累積警告で出場停止となったけど、
その冨安を除けばベストメンバーといっても差し支えない顔ぶれだろう。

試合は、戦前の予想通りボールを支配するスペインと、
ひたすら耐えてカウンター狙いの日本という構図。

日本がこの試合に勝つには、
数少ないチャンスをいかに確実に決められるかにかかっていたわけだけど、
延長も含めた120分間で日本のチャンスらしいチャンスと言えば、
後半の早い時間帯に訪れた旗手のパスから林のミドルの場面と、
延長前半終了間際に中山のクロスから前田がヘディングシュートを放った場面ぐらいだろうか。

いずれも簡単なシュートではなかったけど、
これを決められるかどうかが勝負の分かれ目だったね。

守備に関しては、これまでの日本であれば簡単に失点していたような場面でも、
キャプテンの吉田をはじめとした守備陣の体を張った守りでスペインに得点を許さず。

吉田がPKを取られたかに思われた場面もVARによって取り消され、
却って吉田のナイスディフェンスが際立つ格好になったね。

また、ボランチで起用した時と比べると寄せの甘さが目立っていた板倉のCB起用も、
今大会で回数を重ねるごとに格段に良くなってきた。

中山も左SBとして開花しつつあるし、
大会前は開催の意義が取り沙汰されていた東京オリンピックだけど、
何年か後に若手の成長のターニングポイントになった大会として、
非常に意味のあるものになるんじゃないだろうか。

ベンチも含めた世界との差

この試合について議論を呼んでいるのが、90分の戦いを終えた後、
久保と堂安を2人同時にベンチに下げた采配。

スペイン相手に一矢報いることが出来そうな2人の交代は、
僕も正直クエスチョンマークが頭に浮かんだんだけど、
僕はどちらかと言うと後半20分に林をベンチに下げ、
上田を投入した采配の方がまずかったように思う。

ビルドアップ能力に優れるスペインのDFラインに、
前半から積極的にプレッシャーをかけ続けていた林を下げ、
守備面での貢献度が低い上田を最前線に置いたことで、
日本の2列目の守備の負担が増えてしまったので、
あのまま久保と堂安を延長まで引っ張っても120分持たなかったんじゃないだろうか。

上田ではなく前田を最前線に置いて、前線からの守備の強度を維持出来ていれば、
久保と堂安は余力を残した状態で延長を戦うことが出来たと思う。

なんか、上田を全否定するような書きっぷりになってしまったけど、
元を辿れば、久保と堂安がベンチに下がると、
一気にチーム力が下がってしまう選手層の薄さが根本原因なんだけどね。

この試合で唯一のゴールを挙げたスペインの選手はマルコ・アセンシオ。

得点力の無いMFの代表格でもあるアセンシオに決勝ゴールを決められたのは、
はっきり言って不覚だったけど、レアル・マドリードという、
世界のトップオブトップのチームでプレーする選手をオーバーエイジで招集して、
ベンチに置いておけるという選手層の違いが、
この試合の結果にそのまま出てしまったように思う。

非常に悔しいけど、これが日本と世界の差。

ただ、その距離は僅かながらも確実に詰まっている。

メダリストになる可能性は残されている

銅メダルを懸け、3位決定戦に回ることになった日本の対戦相手は、
グループステージの2節でも対戦したメキシコ。

その時の試合では2−1で勝利を収めることが出来たけど、
スペイン戦後の燃え尽きたような日本の選手たちの表情を見ていると、
どれだけのモチベーションでメキシコ戦に臨むことが出来るか心配である。

ただ、試合後に久保が語った、「麻也さんと宏樹くんにメダルを持ち帰ってほしい」
という言葉が嘘でないなら、もう一度気持ちを引き締め直して、
8月6日の埼玉スタジアムでの一戦に臨んでくれるだろう。

日本01スペイン
’115 マルコ・アセンシオ