【明治安田生命J1リーグ26節 サンフレッチェ広島vsガンバ大阪】ブーストしたと思ったらバーストした

道半ばで終焉を告げた冒険

今回の片野坂監督の解任と松田コーチの監督就任を受けて思い出した話がある。

あれは2001年の話だったか、当時、柏レイソルのGMを務めていた久米一正が、
低調なチームの起爆剤としてシーズン真っ只中にヘッドコーチとして招き入れたのは、
かつて清水の監督を務めいていたスティーブ・ペリマンだった。

ヘッドコーチとは名ばかりで、誰がどう見ても実質の後任監督だったペリマンは、
翌月に正式に監督に就任するわけだけど、結局、チームを浮上させるまでには至らず、
ペリマンに追い出されるように監督の座を追われて柏を離れた西野朗が、
新天地として舞い降りた大阪の地で何を成し遂げたかは、
このブログで改めて書くまでもないだろう。

片野坂さんの今後の監督キャリアで、
西野さんがガンバで成し遂げたことと同じことが出来るかは片野坂さん次第だけど、
短い間とは言えガンバのために粉骨砕身の思いで戦ってくれた、
片野坂さんの明るい前途を祈っている。

そして、松田新監督とともに新たなスタートを切るガンバの今節の対戦相手が、
かつて松田さんと片野坂さんが共にプレーしたマツダサッカークラブの流れを汲む、
サンフレッチェ広島というのも何だか不思議な巡り合わせである。

功を奏した弱者の戦い方

好調・広島のホームに乗り込むにあたり松田監督が選んだガンバのスタメン11人は以下の通り。

監督が松田さんに代わったのである程度自分の色は出してくるだろうなと思っていたけど、
パトリックとレアンドロ・ペレイラの2トップという、
片野坂さんがやってきたことを全否定するぐらいの変化を加えてきた。

残り10試合で出来ることは限られているけど、
片野坂さんがやろうとしていたサッカーと比べると、
松田監督のサッカーは使い古されたやり方ではあるもののやることはシンプルなので、
各々のタスクがはっきりして状況が好転する可能性もあるんじゃないだろうか。

そんな松田監督の狙いはさっそくピッチ上で結果として現れる。

東口のゴールキックをパトリックが競り合い、こぼれ球を食野がペレイラへ展開すると、
ドリブルで前進したペレイラからのパスを受けたパトリックのシュートはミスに終わるも、
こぼれ球をペレイラが決めて、前半2分でガンバが先制に成功。

松波さんも片野坂さんも、ペレイラをターゲットマンとして起用していたけど、
この得点に繋がったドリブルのように、ちょっと下がった位置で、
自由にボールを受けさせてあげる方がペレイラの持ち味は生きるみたいね。

カッコいい得点ではなかったけど、狙い通りにゴールネットを揺らすことが出来たので、
もう少し余韻に浸りたいところだったのだけど、
前半11分に満田のクロスからナッシム・ベンカリファにヘディングシュートを決められ、
スコアを振り出しに戻されてしまった。

ベン・カリファのヘディングシュートは上手かったけど、
三浦は、CBの自分がポジションを放棄してあそこまでサイドに出たら、
ボールを奪えないとどうなるかまで頭が回らなかったんだろうか。

その後は、広島に一方的にボールを支配され、
いつ逆転されてもおかしくないような試合展開が続いたものの、
パトリックとペレイラの分まで守備に奔走するファン・アラーノと食野の両翼の奮闘もあり、
勝ち越しゴールは許さない。

すると、広島の攻撃を食い止めたガンバが自陣からカウンターを発動し、
ファン・アラーノとの接触で倒れている野津田を横目に一気に前線にボールを運ぶと、
ファン・アラーノからのパスを受けた齊藤がミドルシュートを突き刺し、
前半37分にガンバが再びリードを奪う。

齊藤と対峙していた野上とGKの大迫が、
2人ともファーサイドのシュートコースを消しにいったところの逆を突いて、
ニアサイドに蹴り込んだ技ありのシュートだったね。

シュート数でも大きく差をつけられ、ボールも広島が7割近く保持するという前半だったけど、
スコアを見ればガンバが1点リードで終えることが出来た。

裏目に出た選手交代

ホーム・広島戦以来の勝ち点3を目指して迎えた後半、
松田監督はペレイラに代えて鈴木武蔵をピッチに送り出した。

まあ、ペレイラは先制ゴールを決めたものの、
その後の劣勢の試合展開でも全く守備をしないところを見ると、交代もやむなしなんだけど、
代わりに出てきた鈴木武蔵の守備の貢献度がペレイラとさほど変わらなかったのは、
松田監督にとって誤算だったんじゃないだろうか。

後半も前半と同様に広島に押される時間が続くも、
森島のシュートが柏のオフサイドで取り消されるというラッキーもあり、
なんとかガンバがリードを保ったまま後半の飲水タイムを迎えたのだけど、
ここから一気に崩れてしまう。

野津田のミドルレンジのパスを受けたベン・カリファに決められ、
後半27分にスコアを振り出しに戻されると、
その4分後には、左サイドに開いて満田からのパスを受けたベン・カリファに、
コントロールショットでサイドネットを揺らされ、あっという間に逆転。

後半37分には満田にも決められ、わずか10分間のあいだに、
1点リードが2点ビハインドになってしまった。

そもそも前半から劣勢を強いられていたので、
いつ失点してもおかしくない試合展開だったのだけど、一連の失点のケチのつけはじめは、
ファン・アラーノと食野に代えて山本と倉田を投入したタイミングだったように思う。

松田監督としては、前半から攻守にかなりハードワークしていたファン・アラーノに代えて、
球際の強度と運動量を維持する狙いで山本を投入したんだろうけど、
広島の2点目の場面では野津田へのマークが甘くなり、4点目の場面では柏に振り切られるなど、
完全に守備の穴になってしまっていた。

本職がボランチの山本にサイドハーフの守備力を求めるのは酷だと擁護することもできるけど、
そもそもサイドハーフが本職の小野瀬が出ていればこんなことになっていなかっただろうに、
その小野瀬はベンチにも入っていなかったのはなぜだろうか。
(トップチームにコロナの陽性者が出たというニュースを見たけど小野瀬なのかな?)

また、山本と倉田は攻撃面を期待されて投入されたところもあると思うけど、
こちらもさっぱり力を発揮出来ず、挙げ句の果てには後半43分にも松本にゴールを許し、
終わってみれば今季ワーストの5失点で惨敗。

監督交代で流れが変わるかなと淡い期待を持っていたけど、
やはりそんなに甘くないなと現実を突きつけられた結果になってしまったね。

あんな時代もあったねと

ガンバでの初陣はなかなかに苦しいものになってしまったけど、
大阪に来たばかりにも関わらず、火中の栗を拾うような格好で、
ガンバの監督の仕事を引き受けてくれた松田監督には感謝しかない。

かつてヴィッセル神戸や栃木SCの監督としてガンバを苦しめた手腕を、
今度はガンバをJ1に残留させるために振るってほしい。

そして、松田監督のガンバでの2試合目となる次節のカードは、
長谷川健太率いる名古屋グランパスとのアウェイゲーム。

かつてガンバで3冠を成し遂げた敵将が、残留争いに苦しむ古巣に温情をかけてくれるのか、
それとも無慈悲に奈落の底に突き落とすのか、
それは来週の土曜日の豊田スタジアムで試合終了の笛が鳴ってから明らかになるだろう。

サンフレッチェ広島52ガンバ大阪
’2 レアンドロ・ペレイラ
’11 ナッシム・ベンカリファ
’37 齊藤未月
’72 ナッシム・ベンカリファ
’76 ナッシム・ベンカリファ
’82 満田誠
’88 松本泰志