【明治安田生命J1リーグ27節 名古屋グランパスvsガンバ大阪】ようやく抜けた長いトンネル
豊田スタジアムのホーム側ベンチから何を思う
広島に大敗を喫し、松田浩新体制の初戦を勝利で飾ることが出来なかった我らがガンバ大阪は、
今節、かつての指揮官である長谷川健太率いる名古屋グランパスとアウェイで対戦。
守備は人数をかけてリトリートし、攻撃は少ない人数で手数をかけずに攻めるという、
いわゆるファストブレイクと呼ばれた長谷川健太のスタイルは、
西野朗監督時代のパスサッカーに慣れ親しんでいたガンバサポーターには賛否両論あったけど、
2014年シーズンの3冠や2015年シーズンの天皇杯制覇などの結果を残した。
片野坂知宏を監督として迎えた2022年シーズンに、チーム関係者からよく聞かれた、
「ガンバらしいサッカーを取り戻す」といった趣旨の言葉は、
西野監督時代のパスサッカーを指しているのは明らかだけど、
今のガンバの選手の顔ぶれを見ると、どちらかというと目指すべきは、
長谷川健太監督時代のサッカーじゃないだろうか。
主力選手の移籍が相次いだ影響でチームが弱体化し、
四苦八苦した長谷川健太監督時代の晩年よりも今のチームは選手の質が落ちているけど、
片野坂さんよりも長谷川健太のサッカーに近いスタイルを志向する松田監督が、
チームを正しい方向に導いてくれることに期待したい。
そんな混迷を極める古巣に対し、
名古屋の指揮官は温情をかけるのか、それとも更なるダメージを与えるのだろうか。
再稼動した重戦車
雨のビッグアーチで植え付けられた悪いイメージを払拭すべく、
豊田スタジアムのピッチに送り込まれた青黒の11人は以下の通り。
前節の広島戦からフォーメーションはそのままで、
昌子、奥野、藤春の3人が外れ、クォン・ギョンウォン、ダワン、黒川が入った。
前節に引き続き小野瀬がベンチにも入っていないんだけど一体どうしたのだろうか?
序盤から試合の主導権を握ったのはガンバ。
名古屋の両WBの相馬と森下が高い位置を取るので、
必然的に名古屋の3バックの横に大きなスペースが空いていて、
そのスペースをサイドハーフのファン・アラーノと食野が上手く使えていた印象。
(と、言うか相馬の適正ポジションはそこなのか?)
そして、ガンバが良い流れで試合を進めている時間帯に先制点が生まれる。
ペレイラとパトリックのパス交換が名古屋のディフェンスに引っかかるも、
こぼれ球を回収したファン・アラーノが中谷の股を抜いてパトリックにパスを通し、
このパスをダイレクトで蹴り込んだパトリックが、
4月のホーム名古屋戦以来となる今季2得点目をGET。
本来であればFWの中心にならなければいけない選手が、
この時期になってようやく2点目というのは寂しい限りだけど、
松田監督の下ではパトリックの出場機会は増えそうなので、
ここから1つでも多くのゴールを積み上げてガンバをJ1残留に導いてほしいね。
ただ、この試合のように先制点を取ることはこれまでの試合でも出来ているんだけど、
流れが来ている時間帯にもう1点取れずに、
後半に同点、逆転を許してしまうのが今のガンバの課題。
パトリックの先制ゴールの後も、
ファン・アラーノのFKにダワンがフリーで合わせたヘディングシュートが枠外に外れたり、
ペレイラのゴールがパトリックのオフサイドで取り消されたりと、追加点を奪うことが出来ず。
前半の飲水タイムが明けてからは、コンパクトなガンバの4−4−2の3ラインを間延びさせるべく、
名古屋がサイドチェンジを多用するようになると、
これまでのガンバペースからは一転、名古屋がボールを支配する展開に。
このままズルズルと失点を重ねる未来が脳裏をよぎったけど、
今日のガンバは良い意味で一味違っていた。
前節の広島戦では4−4−2の隊列をキープすることに気を取られすぎて、
ボールを持っている選手への寄せが甘くなっていたけど、この試合ではそこが修正されていて、
名古屋にボールを持たれている割には、危ない場面は少なかった。
結局、ガンバが1点リードして前半を折り返すことに成功したけど、
名古屋には一発があるマテウスがいることを考慮すると、
早い段階で2点目を取れないと安心出来ないなとは思っていた。
鈴木武蔵、ようこそガンバ大阪へ
お互いに選手交代無く迎えた後半も、前半に引き続き名古屋がボールを支配し、
ガンバが自陣で3ラインを敷いて待ち構える試合展開。
後半15分にペレイラのシュートがゴールネットを揺らし、待望の追加点と思いきや、
オフサイドポジションにいた髙尾がプレーに関与したとしてゴールを取り消され、
またしても名古屋を突き放すことに失敗。
ただ、敵将の長谷川監督も仙頭や内田を投入して布陣を3−4−2−1から4−3−3へ変更するなど、
スコアを振り出しに戻すべく手を打ってきたけど、
一発で試合の流れを変えることが出来るマテウスが負傷し、
レオナルドと交代になったのは誤算だったんじゃないだろうか。
負傷した後、一度、ピッチに戻っていたので重傷ではないと思うけど、
負傷箇所が左ヒザのように見えたので大事に至らないことを願いたいね。
その後もガンバの選手たちは粘り強く名古屋の攻撃を凌いでいたものの、
徐々に運動量が落ち、スペースが空きはじめていたので、
これはちょっとマズイなと思いながら試合を見ていたのだけど、
名古屋のマテウスのように一発で試合の流れを変えられるガンバの選手が、
後半27分にペレイラとの交代でピッチに投入されていた。
その男の名は鈴木武蔵。
東口のパントキックを前線で収めると、そのままドリブルで中央に運び、
ペナルティエリア外のゴール正面の位置から右足を一閃。
このミドルシュートは名手・ランゲラックの手も届かない神様コースに突き刺さり、
ガンバに待望の追加点をもたらすことに成功。
そう言えば、2019年のルヴァンカップ準決勝でガンバが札幌と対戦した時、
当時札幌にいた鈴木武蔵にとんでもないミドルシュートを決められて、
敗退に追い込まれたこともあったっけ。
たくさんシュートを外すけど、スーパーゴールも決める、
これが鈴木武蔵という選手なんだなというのを再認識出来た一撃だったね。
リードを2点としたガンバは、
ピッチにいる選手11人全員が意思統一して時間を使い、逃げ切りに成功。
先月のホーム・京都戦で、時間稼ぎを怠ってスタンドプレーに走り、
ウェリントン・シルバと並んで勝ち点2を取りこぼした戦犯となった山見も、
この試合ではゴールへのエゴを捨てて守備に奔走していたのが印象的だったね。
まだまだ勝利が足りない
6月のホーム・広島戦以来、2ヶ月ぶりの勝ち点3を獲得したガンバの次の試合は、
新型コロナウイルスの影響で延期になっていた福岡とのアウェイゲーム。
ルヴァンカップと天皇杯で勝ち残っている福岡だけど、
リーグ戦ではここ数試合勝利から遠ざかっているので、
調子が上向いてくる前に叩いておきたいところ。
中3日なのでおそらく選手の入れ替えが発生すると思われるけど、
誰が出場することになってもハードワークで勝ち点3を掴んで欲しいと思います。
名古屋グランパス0−2ガンバ大阪
’3 パトリック
’87 鈴木武蔵