【YBCルヴァンカップ 決勝 セレッソ大阪vsサンフレッチェ広島】工藤壮人の魂とともに勝ち取った聖杯

エキセントリック壮人

今年のルヴァンカップの決勝はセレッソ大阪とサンフレッチェ広島の対戦なので、
消去法でもともと広島を応援するつもりでいたのだけど、
昨晩、柏や広島でプレーした工藤壮人が水頭症で急逝するという
ショッキングなニュースが飛び込んで来た。

ガンバキラーとして鳴らした柏時代の工藤には何度もゴールを決められ、
柏サポでもないのに「エキセントリック壮人」のチャントを覚えてしまったぐらいなのに、
ピッチ上の振る舞いや試合後のインタビューから誠実な人柄が伝わってくるからか、
なぜか嫌いにはなれない選手だった。

まだ32歳だったので、サッカー選手としてやり残したことはあっただろうし、
父親としてお子さんの成長も見届けたかっただろうし、さぞかし無念だと思うけど、
今はただ安らかに眠ってほしいと思う。

そして、国立のスタンドでピッチを見つめる僕の胸中に、
消去法とかではなくこの試合で純粋に広島を応援する理由が出来た。

「国立のピッチでセレッソを降し、天国に旅立った工藤に向けて聖杯を掲げてほしい」

ピンクに染まりかけた佐々木

先週の天皇杯決勝でヴァンフォーレ甲府と対戦した時は、
3バックの前にアンカー野津田を配置する布陣を敷いていた広島だけど、
この試合では野津田と松本のダブルボランチで3-4-2-1を選択。

ただ、布陣は変えても、前線から積極的にプレスをかけ、
自分たちでボールを動かして攻めるという基本的なコンセプトに変更は無く、
セレッソが自陣に相手を引き込んでカウンターを狙ってきたことも相まって、
奇しくも先週の天皇杯決勝と同じような試合展開になった。

とは言え、甲府とセレッソでは選手個々の能力が違うので、
カウンターから加藤や上門が決定的なシュートシーンを迎えるなど、
ボールを持たれていても決定的なチャンスを作っていたのはセレッソの方。

広島は、アタッキングサードまでは上手くボールを運べても、
そこからスピードが上がらずにボールを後ろに下げさせられる場面が多く、
ボールを持っている割には広島のチャンスらしいチャンスって、
前半終了間際に川村のクロスに満田が飛び込んで触れなかった場面ぐらいじゃないだろうか。

結局、スコアレスで前半を折り返すことになったけど、
やりたいことを出来ているのはセレッソという印象が強い前半だった。

お互いに選手交代無く迎えた後半も、
前半の鈍重な雰囲気が続いていて、試合が動く気配が無かったのだけど、
そんな折、佐々木が大迫に返したバックパスがずれて加藤にカットされると、
加藤は大迫をかわしてゴールネットを揺らし、セレッソが先制。

先制点が重要な一発勝負のカップ戦の決勝で、
よりによってキャプテンのミスで先制点を献上するという、
痛恨という一言では表しきれないプレーだったね。

キプロスよりの使者

1店ビハインドとなった広島は、松本に代えてソティリウを投入し攻勢を強めるも、
ベン・カリファやソティリウのシュートは枠をとらえられず。

「とことん広島はカップ戦の決勝には縁が無いんだな」と思っていたら、
競り合いの中で、マテイ・ヨニッチがベン・カリファの顔面にグーパンチをお見舞いすると、
これがVARのオンフィールドレビューの結果レッドカードと判定され、
セレッソは後半34分から10人の戦いを強いられることに。

ヨニッチはこの試合にVARが入っていることを知らなかったのか?
と思うぐらい、あからさまなラフプレーだったね。

ただ、CBのヨニッチが退場になったことを受け、
セレッソの小菊監督はサイドハーフの為田に代えてCBの西尾を投入。

後ろの枚数を揃えてきたセレッソに対し、広島は数的有利を生かすことが出来ず、
アディショナルタイムは9分と長めに取られたとは言え、
このままセレッソが逃げ切るかなと思っていたら、
広島のCKの場面で鳥海がハンドを犯し、広島がPKを獲得。

このプレッシャーがかかるPKをソティリウが決め、
土壇場でスコアを振り出しに戻すことに成功。

数的有利なので、このまま延長に持ち込んだら広島が有利だなと思っていたら、
今度は満田のCKからソティリウが右足でゴールネットを揺らし、
なんと後半のアディショナルタイムの間にスコアをひっくり返してしまった。

今夏の移籍市場で広島にやってきたキプロス人ストライカーは、
カップ戦のタイトルからことごとく見放されてきた広島のトロフィールームに、
Jリーグカップをもたらしにやってきた使者だったようだね。

相応しいもののところにもたらされたタイトル

試合後の表彰式。

ゴール裏に一目散に駆けて行ってサポーターと喜びを分かち合う青山や、
スタンドに向かって工藤のユニフォームを掲げる川浪の姿がピッチにある一方で、
審判団に向かってブーイングを浴びせるピンクの連中。

ヨニッチのラフプレーも鳥海のハンドも明らかな反則だったのに、
まさか「お前らが余計なことをしたから俺たちはタイトルを獲れなかったんだ!」
とでも思っているのだろうか?

一方で生前の工藤がそうであったように、思うようにプレー出来なくてもラフプレーに走らず、
ひたむきにゴールを目指した広島の選手たちや、ビハインドの時間帯でも声が小さくならず、
選手を鼓舞し続けた広島のサポーターこそルヴァンカップのタイトルに相応しかったと思う。

昨日今日の話なので、ショックが残っている選手も多いだろうけど、
今夜は工藤との思い出に触れつつ、勝利の美酒に酔いしれてほしいね。

セレッソ大阪12サンフレッチェ広島
’53 加藤陸次樹
’90+6 ピエロス・ソティリウ
’90+11 ピエロス・ソティリウ