【全国高校サッカー選手権大会 決勝 岡山学芸館vs東山】晴れの国から始まる次の100回

優勝旗が届くのは備前の国か京の都か

101回目を数えた高校サッカー選手権もこの日がファイナル。

NEXT1♾と銘打ち、次の100回へ向けて気持ちを新たにした大会の最後を飾るのは、
岡山県代表の岡山学芸館と京都府代表の東山の対戦。

ここ数年、高校サッカー選手権は強豪校が順当に勝ち上がってくる傾向が続いていたし、
両校で目ぼしいタレントと言えば、セレッソ入団が内定している東山の10番阪田ぐらいと、
それほど傑出した選手もいなかったため、
正直なところ、決勝まで両校が勝ち上がってくるとは思いもよらなかった。

今大会が始まる前に、岡山学芸館と東山の決勝を予想した人がいたら、
この試合が終わった後に表彰式で表彰してあげてもいいぐらいだろう。

そんな予定調和を乱した両校の決勝は、
国立競技場の上空を覆った冬晴れの空のような清々しい好ゲームだった。

試合の行方はバックスタンド側のサイドが握っている

岡山学芸館は左サイド、東山は右サイドと、
お互いのストロングサイドがマッチアップする形になるので、
そのサイドの攻防を制した方がこの試合の主導権を握るだろうと思っていたのだけど、
序盤、そのサイドの攻防を制したのは東山。

右サイドの阪田のドリブルから何度も岡山学芸館のゴールに迫るなど、試合を優勢に進める。

反撃したい岡山学芸館だったけど、
前日に開催された大学ラグビーの決勝の影響で国立競技場のピッチがボロボロだったせいか、
地上戦を避けてロングボール主体の攻撃を仕掛けるも精度を欠き、
自分たちの攻撃の時間を作れない展開が続く。

これは東山が先制しそうだなと思っていたのだけど、試合を動かしたのはなんと岡山学芸館。

6番田口が自陣から右奥のスペースへロングフィードを送ると、
これに抜け出した9番今井が右サイドからGKとCBの間に速いクロス。

このクロスが東山のCB4番新谷の足に当たってゴールに吸い込まれ、
なんとオウンゴールという形で岡山学芸館が前半25分に先制に成功する。

東山としてはアンラッキーな形での失点になってしまったけど、
全力で自軍のゴールに戻っている中で起きた事故だったので、
新谷を責める理由はどこにもないと思う。

先制した岡山学芸館だったけど、その後は時間を使うようなプレーが散見されるなど、
慎重に試合を進めることを選択したため、
チームに勢いが出ることはなく、東山が試合の主導権を握る展開は変わらず。

それでもなんとか1点リードで前半終了間際まで時計の針を進めたものの、
左サイドを破った14番北村のグラウンダーのマイナスのクロスを、
7番真田が右足を一閃すると、これがクロスバーを叩いてゴールマウスに吸い込まれ、
東山が試合を振り出しに戻し、試合はハーフタイムへ。

岡山学芸館としてはリードして前半を終えることが出来なかったのは痛かったけど、
GKとしてもあのコースにシュートされたらノーチャンスなので、
あの場面は真田を褒めるしかないだろうね。

この優勝にマグレ要素なんて1つもない

お互いに選手交代なく迎えた後半。

前半に続き東山が主導権を握る展開になるのかなと思っていたら、
岡山学芸館が準決勝の神村学園戦で見せたような攻撃力を発揮し始める。

左サイドで田口を追い越してパスを受けた左SBの5番中尾がクロスを上げると、
これをファーサイドに走りこんでいたボランチの7番木村が、
ゴール左上隅のコースにコントロールしたヘディングシュートを決め、
後半6分に岡山学芸館が勝ち越しに成功。

岡山学芸館のダブルボランチは10番山田が攻撃的なポジションを取り、
木村は下がってバランスを取るという形が基本のようだったので、
そのバランサーの木村がクロスに対しゴール前まで走りこんでいるあたり、
岡山学芸館の高原監督は後半に勝負を仕掛けるというプランだったようだね。

1点ビハインドとなった東山は、得意のサイドアタックに加え、
8番松橋のロングスローなども交えながら岡山学芸館のゴールを目指すも、
阪田のクロスを受けた真田のシュートが枠外に外れたり、
阪田のヘディングシュートがクロスバーに弾かれるなど、チャンスを生かせない。

対する岡山学芸館も、11番田邊に代わって投入された2年生19番木下のドリブルから、
チャンスを作り出すも、こちらも追加点とまではいかず。

リードしているとは言え、その差はわずかに1点なので、
前半の新谷のオウンゴールのような事故が起こらないとも言い切れないので、
岡山学芸館としては追加点を奪いたいところだったけど、その瞬間は後半40分に訪れる。

右SBの2番福井がゴール前にロングスローを入れると、
ファーサイドまで抜け通ったボールの先にいたのはまたしても木村。

右足で放ったボレーシュートがゴールネットを揺らし、勝負あり。

準決勝の神村学園戦を見るまでは、
岡山学芸館はくじ運に恵まれてベスト4まで勝ち上がってきたんじゃないかと思っていたけど、
今となってはとんでもない思い違いをしていたようだ。

今大会が彼らが見せたプレーは決してフロックではなく、日々の努力の賜物。

101回を数える高校サッカー選手権に於いて岡山県勢初の優勝校として、
晴れの国へ優勝旗を持ち帰るのに相応しいチームだったと思う。

かつての日常が戻るのはいつの日か

新型コロナウイルスが流行し始めたのは2020年の春からなので、
今の高校3年生の選手たちは、高校時代のすべての時間をコロナ禍として過ごしたので、
色々と制限の多い中での高校生活だったと思う。

ただ、そんな高校生活の最後に、
観客の声援のあるスタジアムの中でプレーさせてあげられたし、
今大会は昨年度の関東第一のようにコロナで出場辞退する高校が無く、
全ての高校がピッチで勝敗をつけることが出来たのも良かった。

感染症対策でまだ色々と制限がある状況なので、コロナ前に戻ったとは言い難いけど、
来年の選手権決勝は、コロナ前に限りなく近い形で開催してあげたいなと切に思うね。

そのスタジアムでプレーするのはどの高校になるのか?
ちょうど1年後の話なので気が早すぎるけど今から楽しみでならないね。

岡山学芸館31東山
’25 オウンゴール
’44 真田蓮司
’52 木村匡吾
’85 木村匡吾