【全国高校サッカー選手権大会 準決勝 神村学園vs岡山学芸館】乱打戦の果てに
成人の日の国立は何色に染まる?
12月28日に始まった高校サッカー選手権も、いよいよ準決勝の2試合と決勝戦を残すのみ。
毎年この段階まで来ると、いよいよ優勝校が決まるという昂揚感と、
楽しかった時間が終わってしまうという寂寥感が混在して何とも表現し難い気持ちになる。
そんな準決勝の第一試合に臨むのは、世代No1ストライカーと評される福田師王を擁し、
準々決勝で昨年度の王者である青森山田を降した鹿児島県代表の神村学園と、
比較的くじ運に恵まれた感はあるものの、國學院久我山や佐野日大といった強豪を破り、
準決勝まで勝ち進んできた岡山県代表の岡山学芸館の対戦。
神村学園は福田以外にもセレッソへの入団が内定している大迫や、
1年生10番の名和田などタレントが揃っているので、
彼らがどんなプレーをするのか楽しみにして国立競技場を訪れたのだけど、
僕がそこで目をしたのは思いもよらぬ結末だった。
なるほど確かにこいつはすごい
いきなり試合を動かしたのは岡山学芸館。
左サイドから送られた低いクロスを6番田口が合わせて、前半6分に先制に成功。
クロスをダイレクトでシュートしようとしたものの当たり損ねてしまったことが、
結果的に絶妙なシュートフェイントになった感じだったね。
ただ、今大会無失点の試合が1試合も無い神村学園にとっては、
先制点を取られることぐらい想定内だったようで選手たちに動じる気配は無い。
プレミアWEST昇格を勝ち取ったチームの評判に違わぬ地力の強さを見せ始め、
すぐさま試合の主導権を引き寄せてみせると、
13番福田のポストプレーから1年生の23番金城が強烈なシュートを放ち、
そのこぼれ球を福田がプッシュして前半38分に試合を振り出しに戻してみせた。
福田のプレーは初めてみたのだけど、
ちょっとやそっとのコンタクトではビクともしない体の強さもさることながら、
自分でドリブルで運べるし、ミドルレンジ、ロングレンジのパスも難なく通すしで、
何でも出来る選手という印象を受けた。
高校を卒業したらドイツのボルシアMGに入団するとのことだけど、
中京大中京からアーセナルに入団した宮市や、
同じく中京大中京からグルノーブルに入団した伊藤翔などの前例はあるものの、
高校からJを経由せずに海外の主要リーグに直接行くパターンって、
正直成功例があるとは言えない。
ただ、福田がその成功例の1号となれる可能性は十分にあると思うので、
日本サッカーの未来を担う若者の勇敢な決断にエールを送りたいね。
試合がタイスコアになってからも試合の主導権は神村学園が握り、
いつ逆転ゴールが決まってもおかしくないような試合展開だったけど、
結局、試合は1-1のまま前半を折り返し。
神村学園の有村監督は、まだ前半にも関わらず終盤に名和田を投入するなど、
積極的な采配を見せていたので、後半にスコアが動きそうな予感は大いに感じられたね。
両軍合わせて6ゴールが生まれた試合の行方は
後半は両校とも比較的落ち着いた立ち上がりを見せたものの、
後半14分にゴールまで25mといったところで神村が直接FKのチャンスを得ると、
これを14番大迫が得意の左足で決めて神村学園が勝ち越しに成功。
岡山学芸館のGK、12番平塚はシュートコースを読んでいたけど、
壁に当たってコースが変わってしまったのはアンラッキーだったね。
もともと試合の流れは神村学園だったので、
神村学園がリードを奪ったことでここから一気に突き放すのかなと思っていたら、
岡山学芸館が左サイドを崩すと、9番今井が見事な反転から右足でゴールネットを揺らし、
わずか3分後に試合を振り出しに戻す。
試合が始まるまでは岡山学芸館がどんなサッカーをするのか見当もつかなかったのだけど、
1点目と2点目を生み出した左サイドの崩しは、まさに阿吽の呼吸といった感じで、
さすがプリンスリーグ中国を戦っているだけあるなと思ったね。
しかし、神村学園が再び突き放す。
大迫のCKにCB20番の中江が打点の高いヘディングシュートを叩き込んで、
後半24分にまたしても神村学園がリードを奪う。
さすがにこれで勝負ありかなと思っていたら、
岡山学芸館が左サイドからカウンターを仕掛けると、
右サイドから駆け上がってきた8番岡本へパス。
ところが岡本のファーストタッチが決まらず、一旦チャンスを逸したように見えたのだけど、
岡本は冷静にボールを中央へコントロールし、
左足のインフロントでカーブをかけたシュートを放つと、
GKの手が届かない見事なコースに突き刺さり、
後半28分に再び岡山学芸館が試合を振り出しに戻した。
乱打戦の様相を帯びてきた試合で、
試合時間もアディショナルタイムを含めると残り20分ぐらいあるという状況だったので、
もう一波乱あるかなと思っていたのだけど、その後はスコアは動かず3-3のまま試合はPK戦へ。
お互いに3回戦をPK戦で制しているので、
どっちが精神的に有利とかは無いと思っていたけど、
この試合で冴えていたのは岡山学芸館の平塚。
神村学園2人目のキッカーの12番西丸のシュートコースを見事に読み切り、
ポスト直撃のシュートを誘発すると、ど真ん中を狙った神村学園3人目の福田のシュートに対し、
体は左に飛んでいたものの、中央のコースをケアして残していた右足で防いでみせた。
対する岡山学芸館のキッカーは全員成功し、
岡山県勢は2006年度大会の作陽以来、16年ぶりの決勝進出。
岡山学芸館、ノーマークだったけど非常に良いチームだという印象を受けたね。
たまにはこういう決勝があっても面白い
準決勝の第2試合では、東山が昨年度大会準優勝の大津をPK戦の末に破り、
決勝のカードは岡山学芸館vs東山という誰も予想だにしないカードになった。
言葉は悪いけど、これだけ決勝のカードが地味なのは、
それこそ前回岡山県勢の作陽が決勝に進出した2006年度大会の、
作陽vs盛岡商業以来じゃ無いだろうか。
まあ、ここ数年は強い高校が順当に勝ち上がってくるというのが続いていたので、
予定調和をぶち壊すという意味でたまにはこういう大会があっても面白いと思うけどね。
ただ、試合後の選手インタビューで、GKの平塚に対し、
「福田選手のPKを止めましたが、お気持ちはどうですか?」なんていう、
ヘドが出るような不躾な質問をしたように、
日テレは今大会の決勝のカードを歓迎していないように見えたけどね。
まあ、TV局の大人がどう思っていようと、
決勝の舞台への切符を勝ち取った選手たちは何も悪い事をしていないので、
成人の日の国立では、「地味な決勝のカードだけど試合はすごく面白かったよね」
と観客に言わせるような素晴らしい試合を見せて欲しいと思います。
神村学園3−3岡山学芸館
PK(1−4)
‘6 田口裕真
’38 福田師王
’59 大迫塁
’62 今井拓人
’69 中江小次郎
’73 岡本温叶