【全国高校サッカー選手権大会 決勝 青森山田vs近江】正木監督が記しはじめた青森山田の新たなページ
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絶対王者に死角はあるのか?
102回目を数えた高校サッカー選手権の決勝は、
2大会ぶり4回目の全国制覇を期す青森山田と、初優勝を狙う新進気鋭の近江の対戦となった。
四半世紀以上にわたりチームを指揮した黒田剛監督が町田ゼルビアの監督に転身したことは、
近年の高校サッカー界で絶対王者として君臨する青森山田にとって、
大きな変化だということに異論は無いけど、その変化がネガティブなものではないことは、
今年度の高円宮杯プレミアリーグでの成績が証明している。
そんな付け入る隙が見当たらない高校年代のチャンピオンを、
近江のテクニカルなサッカーがどこまで苦しめるか。
今年も成人の日の14時5分にキックオフの笛が鳴った。
戦いの引き出しの多さが強さの証明
近江の選手たちは比べられるのを嫌がるかもしれないけど、近江のサッカーは、
かつて滋賀県勢で唯一全国制覇を果たした野洲高校のサッカーを彷彿とさせる。
選手同士が近い距離を取り、細かい連携で相手ディフェンスをすり抜けてゴールを目指し、
たとえボールを失っても近くにいる味方がすぐにサポートに入って奪回するので、
攻撃が単発で終わらない。
そんな近江のサッカーに序盤の青森山田は手を焼いていたように見えたけど、
歴戦の強者の青森山田の選手たちはさすがの適応力を見せる。
近江の選手たちの土俵である狭いスペースでの戦いを避け、
マイボールになると早めに広いスペースへ展開することで試合の主導権を得ると、
14番杉本が右サイドから左足で上げたクロスにニアで10番芝田がスルーすると、
背後に走りこんでいた13番福島がDFを背負いながらハーフボレーを突き刺し、
前半33分に青森山田が先制に成功する。
1点ビハインドとなった近江は、自分たちのスタイルを貫いて同点を目指すも、
この日も青森山田の3番小沼が1対1を止めまくる平常運転で、近江にチャンスを作らせない。
青森山田も前半のうちに追加点を奪いたいところだったけど、
近江もGK1番山崎を中心に粘り強い守備を見せ、前半は青森山田1点リードで折り返し。
青森山田が優位な展開ではあるけど、今大会の近江は後半に強い傾向があるので、
後半に見どころを残した状態でハーフタイムを迎えることになったね。
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優勝旗を手にした王者にも勇敢な挑戦者にも拍手を
そんな近江の後半の強さはいきなり証明される。
14番浅井が中央をドリブルで前進して右サイドに展開すると、
変幻自在のポジショニングで右サイドに流れた10番金山のクロスに対し、
中で合わせたのは後半頭から投入された13番山本。
好連携を見せても前半はなかなかシュートまで行けない場面が多かった近江だけど、
後半はファーストチャンスを決めてきたね。
ここから近江のギアが上がるかと思いきや、失点後、すぐさまピッチ上で集まり、
修正をかけてきた青森山田の選手たち。
ゴールキックはセットプレーだと言わんばかりのダイレクトプレーで、
11番米谷がDFラインの裏へ抜け出すと、
飛び出してきた山崎をかわしてゴールマウスに流し込み、後半15分に勝ち越し。
その10分後には杉本のシュートが近江の選手に当たってゴールマウスに吸い込まれ、
試合の大勢は決することに。
まあ、近江は準々決勝の神村学園戦で後半に3点取っているので、
試合時間残り20分少々で同点に追いつけるだけの力はあったと思うのだけど、
この日の近江は、前半から相手陣内まで攻め込むもシュートを打てず、
カウンターを食らって長い距離を背走して守備に戻るというのを繰り返していたので、
後半の最後の方は疲労からか試合序盤のような華麗な連携は見られなかったね。
それでも最後まで青森山田という巨大な敵に対し、
自分たちのスタイルを崩さずに挑んだ姿勢には拍手を送りたい。
もちろん、4度目の全国制覇を成し遂げた青森山田も素晴らしい。
かつては他の地域から優秀な選手を集めていると言われることもあったけど、
近年は青森出身の選手が増えてそういった雑音も封じ込めているので、
もはや文句のつけようがない。
試合後に涙を流していたあたり、
黒田監督から偉大なチームを引き継いで少なからずプレッシャーを感じていたんだろうけど、
監督して初めて全国制覇を果たした正木監督が、
この先の青森山田にどういう歴史を刻んでいくのか興味深いね。
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高い壁ほど越えた時の達成感は大きいもの
今大会は新型コロナウイルスの感染症対策が全て撤廃された状態で開催されたので、
4年ぶりにあるべき姿の高校サッカー選手権が戻ってきた。
部員が歌うチャントに加え、ブラスバンドとチアリーダーが応援を彩るスタンドの光景に、
やっぱり高校サッカーはこうでないとという気持ちになったね。
2024年の高校サッカー界も、
絶対王者・青森山田を止めるのはどこになるのかという構図は変わらないだろうけど、
この試合の近江のように勇敢な挑戦者の登場に期待したいね。
青森山田3ー1近江
’33 福島健太
’47 山本諒
’60 米谷壮史
’70 オウンゴール