【全国高校サッカー選手権大会 準決勝 市立船橋vs青森山田】これぞ高校年代のトップオブトップの戦い
これぞまさに事実上の決勝
12月28日に開幕した高校サッカー選手権も準決勝を迎え、
トーナメントを勝ち抜いた4校が再び国立のピッチに帰ってきた。
この日、国立競技場で行われた2試合で注目を集めたのは、
何と言っても市立船橋vs青森山田の名門対決。
”事実上の決勝戦”という言葉を嫌う人もいるけど、
その言葉の意味を説明するにあたって最適なシチュエーションが第一試合に訪れた。
両校が所属するプレミアEASTでは2017年以来青森山田に勝利が無い市船だけど、
この日国立に詰めかけた多くのファンの期待に、7年ぶりの勝利という形で応えられるだろうか。
明暗を分けた試合の入り方
まず試合の主導権を握ったのは青森山田。
前線からの激しいプレスで市船を押し込みCKを獲得すると、
190cmの長身CB・5番小泉が打点の高いヘディングシュートを決め、
前半11分に青森山田が先制に成功する。
CBでコンビを組む4番山本の方に注目が集まりがちだけど、
この小泉も空中戦と対人の強さがあって相当良いDFだと思ったので、
高校卒業後に進学する明治大学の4年間でどういう成長曲線を描くのか今から楽しみだね。
幸先良く早い時間でリードを奪った青森山田だけど、
それを差し引いても市船の試合の入り方は良くなかった。
12年ぶりの準決勝のピッチに慎重になりすぎていたのか、
青森山田のプレスに屈して安易にパスを戻したり、
簡単に前線にロングボールを蹴ってしまったりで、
10番郡司と15番久保原の2トップに良い形で縦パスが入る場面は皆無。
青森山田の屈強なCB2人を相手に、
アバウトなロングボールを競らなければいけない状況になっている久保原が、
不憫でならなかったわ。
ただ、1点リードしたことで青森山田がプレスの強度を緩めたこともあって、
その後は徐々に市船が7番太田を起点にパスを回し、青森山田陣内に攻め入る回数が増えていく。
なぜこのサッカーをもっと早くできなかったんだとも思ったけど、
調子を取り戻したところでそんなに簡単に破れるほど青森山田の守備陣は甘くない。
特に青森山田の左SBの3番小沼が、サイドの1対1の守備で無類の強さを発揮して、
市船の右サイドからの攻撃をシャットアウト。
前半の途中から市船が調子を取り戻すも、結局ゴールは奪えず、
青森山田1点リードで最初の45分を終えることになった。
くじ引きのようなものとは言うけれど
後半に同点、逆転を期す市船は、後半の頭から11番佐々木に代えて13番須甲を投入し、
前半からの良い流れを継続してゴールを目指す。
対する青森山田は、後半13分に8番川原に代えて16番後藤を投入したけど、
ドリブル突破で市船の守備を苦しめていた川原がベンチに下がったことで、
青森山田の攻撃に迫力が無くなったように見えた。
川原は準々決勝の昌平戦で前半で交代していたので、
もしかしたらコンディションが万全でなかったのかもしれないね。
そんな青森山田を尻目に攻勢を強める市船にようやく歓喜の瞬間が訪れたのは後半34分。
右SBの佐藤が裏へスペースへ走った太田にスルーパスを送ると、
太田の技ありの左足アウトサイドの折り返しに中で久保原が合わせ、市船が同点に追いつく。
市船の右サイドからの攻撃は、対面の小沼にことごとく止められていたけど、
ドリブルではなくスペースへのランニングで攻略した見事な攻撃だったね。
さらに市船が同点に追いついてすぐ、左サイドからの浮き球のパスに抜け出した久保原が、
青森山田のGK1番鈴木と1対1になる場面が訪れるも、
この場面は逆サイドから猛烈な勢いで絞ってきた小沼のシュートブロックでゴールを割らせない。
久保原と小沼、お互い2年生ということで、
今年のプレミアEASTでもこの2人の熱いマッチアップが見られそうやね。
結局、その後の攻防で勝敗をつけるゴールは生まれず、勝負の行方はPK戦に委ねられることに。
市船のGKニコラスは「PK戦に苦手意識は無い」と発言しているだけあって、
青森山田の4人目の2番小林のシュートを止めてみせたけど、
対する鈴木は、1人目の太田と4人目の16番岡部のシュートをセーブし、青森山田に軍配。
まあ、正直なところPKで決着をつけるのがもったいないぐらいの好ゲームだったけど、
一点気になったのが、後半アディショナルタイムに久保原に代わって投入され、
ろくにボールに触らないままPK戦を迎えた岡部が、
試合に入ることができていたのかということ。
未来のある2年生に業を背負わせるよりも、
エースの郡司が外して負けた方がみんな納得いったんじゃないかと思うのは余計ですかね。
そして今大会も残り1試合
第2試合で近江が堀越を降したことで、決勝のカードは青森山田vs近江に。
高円宮杯プレミアリーグファイナルで優勝している青森山田と、
関西プリンス1部の近江の対戦なので、青森山田有利と考えるのが自然だけど、
3年前にはプリンス勢の山梨学院が青森山田に勝ったりしているし、
試合はやってみないとわからない。
準決勝が終わった後の恒例である、
優勝旗を手にするのはどちらの高校になるのかというワクワク感と、
大会が終わってしまう寂寥感の両方が混在する複雑な心境を抱えながら、
明後日の成人の日も国立に向かおうと思います。
市立船橋1ー1青森山田
PK(2ー4)
’11 小泉佳弦
’79 久保原心優