【YBCルヴァンカップ 決勝 名古屋グランパスvsアルビレックス新潟】タイトル請負人・長谷川健太の面目躍如

星に辿り着くのは鯱か白鳥か

リーグカップ名物の秋晴れ・・・とはいかなかったけど、
鈍色の空とのコントラストで暖色の赤とオレンジが映える国立競技場。

赤は、今季限りで退団する守護神への餞に聖杯を送りたい名古屋グランパス。

オレンジは、99年のJリーグ加盟以降初のタイトル獲得に挑戦するアルビレックス新潟。

激闘を終えた後、聖杯を掲げるのはどちらのチームになるのか?
2024年11月2日の昼下がり、福島孝一郎主審のキックオフの笛が鳴った。

勝負は前半で決したか・・・

まず試合の主導権を握ったのは、
大挙して国立競技場に詰めかけたオレンジのサポーターの大声援を受ける新潟。

自陣の低い位置からでもリスクを冒して勇敢にパスを繋ぎ、
名古屋の選手の前からのプレスをいなしていく姿に、
松橋監督の下で3シーズンかけて積み上げてきたポゼッションサッカーに対する、
信念のようなものを感じたね。

長谷川健太監督の代名詞であるファストブレイクを狙うも、
なかなか良い形でボールを奪えない名古屋だったけど、思いがけない展開でスコアが動く。

ビルドアップの過程で稲村のバックパスを受けたGKの阿部が、
稲村と舞行龍の間に落ちてきたボランチの秋山に縦パスをつけようとしたところ、
パスがずれて秋山の隣にいた永井に渡してしまい、
そのままガラ空きのゴールにシュートを蹴り込まれ、前半31分に名古屋が先制。

正GKの小島に代わってルヴァンカップでゴールマウスを守り続けてきた阿部には、
厳しい洗礼となってしまったけど、
新潟のような自陣から繋ぐサッカーを志向するチームにはこの手のミスはつきもの。

その後の阿部のプレーを見る限り、上手く切り替えは出来ていたように見えたのだけど、
永井の先制ゴールの余韻がまだ残る国立のピッチで、
今度は名古屋が新潟のお株を奪うようなパスワークを見せる。

椎橋のロビングの縦パスを稲垣がペナルティエリア内で和泉に落とすと、
和泉の横パスを受けた永井が冷静に空いているコースに流し込み、
前半で名古屋が2点リードを奪う。

ここまで書いていると、名古屋が優勢に試合を進めているように見えるけど、
実際は前半の名古屋のチャンスらしいチャンスは得点に繋がった2回のみ。

新潟としては良い形で攻撃できている前半のうちに先制出来なかったことで、
常に追いかける展開を強いられることになってしまったね。

する必要がない残業を強いられた名古屋

前半で2点ビハインドを許した新潟だけど、
僕自身、2014年のナビスコカップで2点ビハインドを逆転し、
ガンバが優勝した試合を見ているので、まだ諦めるのは早いと思っていた。

ただ、後半の早い時間に訪れた藤原のシュートチャンスで、
大きく枠を外してしまった時は、ちょっと厳しいかなと思わざるを得なかった。

この状況で大きく試合の流れを変えたのは、
松橋監督の宮本、長谷川、太田に代えて長倉、ダニーロ・ゴメス、星という3枚替え。

右サイドで突破力のあるダニーロ・ゴメスが幅を取ることで、
名古屋のDFラインがピン留されて上げられなくなってしまい、
新潟の選手たちが敵陣でプレーする時間が増えていく。

すると、そのダニーロ・ゴメスが右サイドから左足であげたクロスに谷口が飛び込み、
後半26分に新潟が1点を返す。

その後も新潟は、小野と谷口に代えて小見と奥村を投入し引き続き攻勢をかけるのに対し、
名古屋も和泉、永井、野上に代えて山岸、菊地、中山を投入し、
逃げ切るために運動量を補充していく。

逃げ切りたい状況で、本職CBの野上に代えて本職ウインガーの中山を右WBに入れる采配は、
慎重派の長谷川健太にしては理に適って無いなと思っていたのだけど、
特に名古屋の守備に問題が生じることはなく、試合は後半アディショナルタイムへ突入。

これはもう名古屋が逃げ切りかなと思っていたら、
後半アディショナルタイムも5分を過ぎようかといった時間帯で、
小見がペナルティエリア内でドリブルを仕掛けると、
マッチアップした中山がたまらず小見を倒してしまう。

一度はノーファウルの判定が下るも、OFRの結果判定が覆り、新潟がPKを獲得。

このPKをファウルを受けた小見が自ら決めて新潟がスコアを振り出しに戻し、
土壇場で延長戦に持ち込んだ。
(小見の独特の助走のPKの蹴り方は昌平高校の時から変わらないのね)

先述で懸念していたWBが本職でない中山の守備対応でPKを与えてしまったこともそうだけど、
後半アディショナルタイムに入っても名古屋がコーナーキープなどで時間稼ぎをせず、
普通に試合をしていたのもこの同点PKに繋がったように思うし、
最後の最後で詰めの甘さが出てしまったね。

勝敗の決着は得てして残酷なもの

最後の最後で同点ゴールを許し、延長戦を戦うことになってしまった名古屋だけど、
不本意な残業にもめげず、再び新潟の前に出る。

山中のクロスをペナルティエリア内でユンカーと競り合った舞行龍がクリアし切れず、
真上にボールが上がると、これを拾った山岸が中山に繋ぎ、中山の勝ち越しゴールをアシスト。

新潟の同点ゴールに繋がるPKを与えてしまった中山だけど、
まるでマッチポンプのように自身のゴールで帳消しにしたね。

今度こそ逃げ切りたい名古屋は、延長前半の新潟の攻撃を凌ぎ、延長後半の戦いに臨むも、
藤原の縦パスを受けた長倉が見事なターンで稲垣のマークを外して前を向き、
ゴールに向かって疾走する小見にドンピシャのスルーパスを送ると、
小見がランゲラックとの1対1を制してゴールへ流し込み、
延長後半6分に再びスコアは振り出しに。

結局、雨中の中の激闘は120分間でも決着が着かず、
勝敗の行方はPK戦に委ねられることになった。

120分の戦いで活躍した選手がPKを外してしまうことは往々にしてあるものだけど、
この試合でもそれは例外ではなく、
新潟の2番手のキッカーとしてペナルティスポットに立った長倉が、
コースを読み切ったランゲラックのプレッシャーに負けてシュートを枠外に外してしまう。

新潟の3番手以降のキッカーは全員PKを成功するも、
名古屋は5人全員がPKを決めて、勝負あり。
(福岡在籍時代に散々PKを外してきた山岸が名古屋の5番手としてPKを決めたのには、
福岡のサポーターが一番納得いってないんじゃないかと思うけど・・・)

この試合は、新潟がクラブ初タイトルに挑むとあって、
名古屋がヒールのように扱われている感があったけど、
アウェイのような雰囲気の国立で声を枯らしてチャントを歌い続けた名古屋サポーターも含め、
この試合の名古屋はタイトルに相応しいチームだったと思う。

また、個人頼みのクソサッカーだの守備的すぎるなど言われながらも、
またしても指揮を取ったクラブにタイトルをもたらした長谷川健太は、
なんだかんだで名将だなと思わざるを得なかったね。

3週間後の国立は青黒

かくして名古屋の3年ぶりの戴冠で幕を閉じた2024年シーズンのルヴァンカップだけど、
3週間後にこの地で行われる天皇杯の決勝で、次はガンバが勝利の凱歌をあげる番。

何やら神戸側のチケットが全然売れていないようなので、
この試合の新潟サポーターのように国立をガンバカラーに染め上げ、
宇佐美貴史が賜杯を掲げるのに最高の舞台を作り出そうじゃありませんか。

名古屋グランパス33アルビレックス新潟
       PK(
’31 永井謙佑
’42 永井謙佑
’71 谷口海斗
’90+11 小見洋太
’93 中山克広
’111 小見洋太