【全国高校サッカー選手権大会 決勝 前橋育英vs流経大柏】歴史に残る名勝負の果てに群馬へ向かった優勝旗

7年ぶりにトーナメント表の一番上で相まみえた黄と赤
12月28日に開幕した高校サッカー選手権もいよいよ決勝の日を迎え、
前橋育英と流経大柏が優勝旗を懸けて戦う舞台となった国立競技場には、
大会史上最多となる5万8347人の大観衆が駆けつけた。
奇しくも今回の決勝カードは、前橋育英が選手権初優勝を飾った96回大会と同じ。
7年前の決勝では、当時の流経大柏の本田監督が、
前橋育英の飯島と田部井涼にマンマークをつけるという奇策を仕掛ければ、
対する前橋育英の山田監督は、飯島のポジションをサイドハーフに変更し、
宮崎と榎本のツインタワーで応戦。
結果、この山田監督の采配が的中し、
榎本の決勝ゴールで前橋育英が勝利するというものだった。
当時埼玉スタジアムで見た試合も名勝負だったけど、今回国立で行われた一戦は、
7年前と同様、もしくはそれ以上とも言えるベストバウトとなった。
竜虎互いに一歩も譲らず
試合の立ち上がりは、流経大柏がいつものように前線から激しいプレスをかけるのに対し、
前橋育英はリスク回避で早めにロングボールを前線に送るという試合展開。
なんだか前橋育英の準決勝の東福岡戦と似たような展開だなと思っていたら、
どういう偶然か東福岡戦と同じような時間帯に流経大柏にゴールが生まれる。
9番山野とのワンツーで抜け出した14番飯浜のパスを受けた8番亀田が、
小刻みなステップから冷静にゴールネットを揺らしたものだったけど、
前線からのプレスをウリにしているチームに対し、
22番竹ノ谷から13番柴野への緩い横パスは軽率だったかなと思う。
2日前の東福岡は1点リードした後攻撃の手を緩めたけど、
流経大柏の攻勢の時間帯はさらに続き、
10番柚木のCKから19番粕谷がフリーで合わせるなど、
流経大柏に追加点が入りそうな展開で試合が進んでいく。
前半は守勢の時間帯が長かった前橋育英だけど、
8番オノノジュの左サイドからのサイドチェンジを受けた11番黒沢が、
見事なターンで流経大柏の21番宮里を置き去りにすると、
黒沢のクロスをゴール前に走り込んでいた柴野がヘディングで決め、
前半31分に前橋育英がスコアを振り出しに戻す。
その後は同点になったことで息を吹き返した前橋育英が攻勢に出るも、
前半はこのままスコアは動かず、タイスコアでハーフタイムを迎えることになった。

ナンセンスと思われたPK戦のドラマチックな結末
お互いに選手交代なく迎えた後半で、先に動いたのは山田監督。
準決勝に続き精彩を欠いていた10番平林に代えて、
東福岡戦の活躍によりスーパーサブの快足ドリブラーとして名を馳せた7番白井を投入。
しかしながら、流経大柏が白井に対して何も対策を講じていないはずがなく、
白井がボールを持った時の寄せが早く、思うように前を向かせてもらえない。
それでも後半は前橋育英のペースで試合は進んでいたけど、
流経大柏の榎本監督が柚木、11番堀川、宮里に代えて、
7番和田、3番富樫、13番幸田を投入するという3枚替えを敢行。
満を辞して送り出した和田が投入されて8分後に脚を痛め、
18番安藤と交代になるというアクシデントはあったものの、
その交代で入った安藤がキレキレなのに加え、
前線にフレッシュな選手が入ったことで強度が上がった流経大柏が押し返す。
対する前橋育英は、後半39分にオノノジュがベンチに下がり、
その3分後に準決勝で2得点を挙げた15番佐藤が負傷交代するも、
引き続き流経大柏のゴールを目指して前に出ていく。
相撲で例えるなら土俵の中央でがっぷり四つで組み合い、微動だにしない状態となった試合は、
延長前後半20分でも決着が着かず、勝敗の行方はPK戦に委ねられることに。
これだけ素晴らしい試合がPK戦で決着するのは無粋のように思えたけど、
この緊張感溢れる決勝戦のPK戦でチップキックを決めたり、ど真ん中に蹴り込んだりと、
本当に高校生なのか?と疑うほどの両校の選手たちのメンタルの強さには脱帽するばかり。
(日テレはこのPK戦の途中でCMを挟んだそうなのでもしTV観戦していたら憤慨していたと思う)
その中で、110分の試合の中でも好セーブを見せていた前橋育英のGK藤原が、
流経大柏の7人目のキッカーの幸田のシュートを止めた時は、勝負あったかに思われたけど、
これを決めたら前橋育英が勝利というPKで白井が大きく枠を外してしまう。
前橋育英にしてみれば流れを手放してしまいそうなプレーだったけど、
藤原が流経大柏の10人目のキッカーの安藤のシュートを止めると、
前橋育英の10人目のキッカーの柴野はきっちりとGKの逆をついて勝負あり。
7年前と同じカードとなった今回の高校サッカー選手権の決勝は、
7年前と同じく前橋育英に軍配が上がり、優勝旗が群馬にもたらされることになったね。

来年の話をするのは気が早いとは言うけども
前橋育英の7年ぶりの戴冠で幕を閉じた103回目の高校サッカー選手権。
この試合の前橋育英のスタメンには5人の2年生が名を連ねていたことから、
次回の104回大会でも優勝候補に挙げられると思う。
一方で、選手権の決勝戦で3連敗となった流経大柏は、
次回こそは優勝旗を手にしたいはずだろうし、
よもやの早期敗退を強いられた青森山田や大津も黙っていないだろう。
とは言え、今大会が終わったばかりで次回の話をするには気が早すぎるので、
まずは春から始まる新しい戦いに向けて、ゆっくり休んで英気を養ってほしいね。
前橋育英1ー1流経大柏
PK(9−8)
’12 亀田歩夢
’31 柴野快仁