【全国高校サッカー選手権大会 準決勝 東福岡vs前橋育英】ハーフタイムで目を醒ました上州の虎が赤い彗星を飲み込んだ

決勝で北側スタンドを染めるのは赤かはたまた黄か

12月28日に開幕した高校サッカー選手権は準決勝の日を迎え、
各会場で激闘を勝ち抜いてきた4校が開会式以来となる国立競技場に戻ってきた。

そんな準決勝の第一試合に組まれたのが、東福岡と前橋育英のプレミア勢対決。

9年前に高校年代3冠を達成した時と比べると派手さは無いものの、
地区大会から7試合連続無失点の堅守で勝ち上がってきた東福岡に対し、
2回戦の愛工大名電戦や3回戦の帝京大可児戦で苦戦を強いられたものの、
7年ぶりの戴冠まであと2つというところまで勝ち上がってきた前橋育英。

名門と呼ばれながら近年の選手権では存在感が薄くなっていた両校だけに、
自らの価値を証明するためにも決勝の舞台に勝ち進みたいところだろう。

先手を取って試合を塩漬けにした東福岡

準々決勝から準決勝まで中6日空いたことで、
休養十分な両校のインテンシティの高い試合が見られることを期待していたのだけど、
そんな期待とは打って変わってお互いにリスクを冒さない慎重な試合の立ち上がり。

これはなかなか試合が動かなだろうな・・・と思っていたら、
その予想に反して前半11分という早い時間帯に東福岡が先制。

前橋育英が中盤でボールを奪うために人数をかけたところで奪い切れず、
ガラ空きになった左サイドに流れた20番塩﨑に展開されると、
塩﨑のグラウンダーのクロスを9番伊波が合わせてゴールネットを揺らした。

塩﨑のクロスの精度と伊波のシュートは良かったけど、そもそも前橋育英の左SB29番牧野は、
あそこまで自分の持ち場を離れてボールを奪いに行く必要があったのか?と思う場面だったね。

その後は、1点リードした東福岡が前に出てこなくなったことで、
敵陣にスペースを見つけられない前橋育英が縦パスを入れられず、
後方でのパス回しが増えるという試合展開になり一気に凡戦に。

それでも前橋育英は、クロスや裏のスペースへのフィードが、
8番オノノジュや15番佐藤に通りそうな場面は作るものの、
東福岡のカウンターを警戒してか前に人数をかけておらず、
攻撃が単発で終わってしまう場面が多かった。

結局、前半は東福岡の1点リードで折り返し。

前述の通り、東福岡は地区予選から7試合連続無失点と強固な守備を誇るので、
いくら攻撃力のある前橋育英といっても後半の早い時間帯に同点に追いつくことが出来ないと、
苦しい試合展開になりそうだなと思った前半だったね。

試合の行方を左右した後半の最初の15分の攻防

1点を追う前橋育英の山田監督は、
後半頭から牧野と10番平林に代えて7番白井と13番柴野を投入し、
前半はボランチでプレーしていた22番竹ノ谷を左SBへポジションチェンジ。

すると、思いもよらぬ形から試合が動く。

東福岡のCB4番大坪がプレスをかけにきた前橋育英の佐藤にクリアをぶつけてしまうと、
ルーズボールを拾った佐藤がそのままゴールネットを揺らし、
後半3分という早い時間に前橋育英が同点に追いつくことに成功。

さらにその6分後には、左サイドに流れてキープしたオノノジュが佐藤にパスを送ると、
佐藤のシュートは美しい弧を描いてファーのゴールポストに当たり、
そのままゴールマウスの中へ吸い込まれ、前橋育英が逆転。

一方、あっという間に逆転されてしまった東福岡は、
前半の先制点以降、自陣で守備ブロックを形成して試合を進めていたところで、
前に出てゴールを奪いに行くというゲームプランの変更を余儀無くされる。

つまりそれは東福岡陣内にスペースが生まれ、
後半から投入された白井のスピードが存分に発揮できる状況でもあるということ。

すると、その白井がピッチの中央をドリブルで駆け上がり、
右サイドに流れたオノノジュに展開すると、
オノノジュのマイナスのクロスをペナルティエリアに走り込んだ白井が決め、
東福岡にとっては重すぎる3点目を叩き込んでみせた。

1点リードして後半に入ったのに、
後半に入って15分もしないうちに2点ビハインドを背負うことになった東福岡の平岡監督は、
後半も半分ぐらいを過ぎたあたりから選手交代で流れを変えようとするも、
テコ入れするのに遅きに失した感は否めず。

その後は前橋育英が決勝戦を見据えて選手を入れ替えながら試合をコントロールし、
危なげなく試合終了のホイッスルを聞くことに。

準々決勝の静岡学園戦では試合を塩漬けすることに成功した東福岡だけど、
同じやり方でプレミア勢の高校を立て続けに破れるほど甘くはなかったということね。

7年前の再現か雪辱か

第二試合では、流経大柏が前半のPKでの1点を守り切って東海大相模を降し、
決勝は2017年度大会と同じ流経大柏vs前橋育英というカードに。

今甲府にいる飯島が挙げた1点を守り切って前橋育英が初優勝を果たした96回大会の決勝は、
自分がこれまで観戦した高校サッカー選手権のベストバウトと言ってもいい試合なので、
再び両校が決勝の舞台で相まみえることに言葉にし難い熱い思いがこみ上げてくるね。

前橋育英が7年前と同様に流経大を退けて優勝旗を手にするにせよ、
当時の雪辱を期す流経大柏が栄冠を手にするにせよ、
明後日はあの埼玉スタジアムでの一戦を再現するような熱い試合に期待したいところだ。

東福岡13前橋育英
’11 伊波樹生
’48 佐藤耕太
’54 佐藤耕太
’58 白井誠也