【全国高校サッカー選手権大会 3回戦 帝京大可児vs青森山田】選手権を去る美濃の赤い戦士たちに拍手を

最高峰の戦いが開催されなかった影響

普段、高校年代の試合を見ない人にはあまり馴染みが無いと思うけど、
本来であればこの世代の最高峰の戦いは、
高校サッカー選手権ではなく高円宮杯プレミアリーグEASTとWEST。

2010年までは各地方で開催されているプリンスリーグが、
高校年代最高峰の戦いだったけど、
2011年からプリンスリーグの上位のカテゴリーとして、
東日本と西日本に分けてプレミアリーグが創設されている。

このプレミアリーグ創設によって最大の恩恵を受けたのは、
今回の選手権でも優勝候補の筆頭に挙げられている青森山田。

プリンスリーグ時代は東北の強豪校に過ぎなかった青森山田が、
高体連の絶対王者と目されるほどの強豪校に成長したのは、
お世辞にもレベルが高いとは言い難いプリンスリーグ東北から、
プレミアリーグEASTに参入したことにより、
エリート揃いの関東のJクラブユースとリーグ戦が出来るようになったから
と言うのはあながち間違いじゃないだろう。

ただ、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、
プレミアリーグが開催されなかったため、青森山田は、
10年ぶりに東北地方に限定したリーグ戦を戦うことを強いられ、
例年のようなチーム強化が出来なかった。

まあ、例年のようなチーム強化が出来なかったのは他の高校も同じだし、
もともと実力のある選手たちが揃っているので、問題は無いと思うけど、
絶対王者に付け入る隙をあえて挙げるとすればここになるのかなと思う。

アップセットを予感させたのはどこかで見た光景

高校サッカー選手権の3回戦の第2試合は、
東福岡と矢板中央という好カードもあったのに、
あえてこの帝京大可児と青森山田というカードを視聴したのは、
良い試合を見たいというよりは、
今年の青森山田はどれぐらい強いのかという確認の意図だった。

しかしながら、帝京大可児が、
良い意味で期待を裏切るサッカーを見せたことで、
まさかの好ゲームとなり、東福岡と矢板中央ではなく、
こちらのカードを視聴したことが正解だったと思わされたね。

青森山田のような圧倒的な力を持つ高校との対戦であれば、
引いて守ってカウンター狙いという戦術を安易に採用しがちだけど、
帝京大可児は、前回大会の決勝で青森山田を降した静岡学園のように、
ショートパスとドリブルを用いて”サッカーをする”ことを選択。

その勇気だけでも拍手を送りたいのに、先制点まで挙げてしまうのだから、
語彙力の乏しい僕にはこれ以上称賛する言葉が見当たらない。

ただ、自分がマークすべき選手を放り出して
インターセプトを狙うもボールを奪えず、
マークを外した選手にゴールを決められたタビナス弟の姿に、
ガンバ大阪U-23の試合でのタビナスのプレーがフラッシュバックして、
やはり血は争えないんだなと思ってしまったけどね。

どのような成長曲線を描くか

幸先良く先制した帝京大可児だったけど、
個人的には大嫌いなロングスロー作戦から、
青森山田のキャプテンの藤原優大が決め、すぐさま試合は振り出しに。

その後の交錯プレーで股関節を痛めながらも、
チームを鼓舞し牽引し続けた藤原の姿からは、
青森山田初優勝時のキャプテンである住永翔を思わせるような、
キャプテンシーを感じられたね。

ただ、この春からの入団が内定している浦和は、
この逸材を大成させられるのだろうか。

浦和には昨年度の青森山田のエースだった武田英寿も所属しているけど、
昨年のJ1リーグで、あまり出場機会を与えられていないところ見ていると、
なんとなく不安になってくるのだけども。

同点になってからも自分たちの戦い方は変えず、
ショートパスとドリブルで青森山田に挑んでいた帝京大可児だったけど、
前半終了間際に松木に勝ち越しゴールを許し、
後半20分にもCBの秋元にゴールを許して2点差となったときは、
もはやこれまでかと思った。

しかしながら、その直後に帝京大可児のエースである大森がゴールを決め、
1点差としたときには、その諦めない姿勢に胸が熱くなるものがあったね。

出揃ったベスト8

最終的には後半36分に藤原がPKを決めて2-4とし、
戦前の予想通り青森山田が順当に準々決勝に進出。

ただ、青森山田が何点差で勝つのだろうと思って見始めた試合で、
思いもよらぬ好ゲームを演じてくれた帝京大可児の選手たちの健闘には、
拍手を送りたいと思う。

また、帝京大可児のボランチの鈴木淳之介は、
2年生ながら湘南への入団が内定しているとあって、
レオシルバを思わせるような懐の深いキープ力が魅力的で、
来年度の選手権でも見たいと思わせるような選手だったね。

大晦日に開幕した高校サッカー選手権も次が準々決勝。

相変わらずの過密日程で選手は大変だと思うけど、
準々決勝までの中1日でしっかりと体を休めて臨んで欲しいね。

帝京大可児24青森山田
‘7 三品直哉
’13 藤原優大
’39 松木久生
’65 秋元琉星
’67 大森涼
’81 藤原優大