【明治安田生命J3リーグ31節 アスルクラロ沼津vsガンバ大阪U-23】明るい青は青黒を好転させる

王国の郊外

サッカーが盛んであることから王国とも称される静岡だけど、
その静岡の中でもヒエラルキーのようなものが存在するように思う。

J開幕以前から清水商業や藤枝東などの名門校が全国に名を馳せ、
清水エスパルスや藤枝MYFCが本拠地を置く中部エリアがサッカー王国の都心だとすれば、
J開幕以降、ジュビロ磐田の黄金期到来により格が上がった
西部エリアが副都心といったところだろう。

そんな静岡の中部、西部エリアと比べると、地味な印象を拭えないのが、
アスルクラロ沼津が本拠地を置く東部エリアだ。

Jリーグに所属している静岡の4クラブの中で、唯一、サッカー専用スタジアムを持たず、
くたびれた陸上競技場をホームスタジアムとしているのは、
サッカー王国・静岡のクラブとして少し寂しい感じがする。

ただ、沼津はホームスタジアム建設に向けて動いているみたいだし、
昨年度の高校サッカー選手権の静岡県予選で富士市立高校が決勝に進出するなど、
徐々にそのヒエラルキーも変わりつつあるように思う。

アスルクラロ沼津が、今季のブラウブリッツ秋田のような躍進を見せられれば、
その流れはドラスティックに動くようにも思うのだけど、
その時が来るのはもうちょっと先の話だろうか。

図らずとも握ったイニシアチブ

前節の藤枝戦に続き、2週連続で静岡でのアウェイゲームを戦うU-23は、
GKにオーバーエージの石川、DFラインは右から當間、松田、タビナス、
中盤は右から村上、伊勢、芝本、山口、2シャドーに中村仁郎と高木を置き、
1トップに坂本を配す3−4−2−1の布陣を採用。

21節の富山戦以来の勝利を挙げるべく、良い形で試合に入りたいところだったけど、
前半4分という早い時間帯に失点し、出鼻を挫かれてしまった。

しかしながら、失点したとは言え、敵ながら見事なゴラッソだったので、
その後は上手く切り替えて戦えていたように思う。

そんなチームを上手く操縦していたのは、
ここ最近、トップチームに帯同する機会も増えてきた芝本。

今季、トップチームで大卒ルーキーの山本が高い評価を受けているけど、
個人的には芝本の攻撃のセンスも山本のそれに負けずと劣らないと思っている。

厳しく寄せられても簡単にはたいてパス回しのリズムを作り、
好機と見るや厳しい縦パスを通すプレーを見ていると、
この選手をJ3の試合に出場させ続けるのは少しもったいないなという気にさせてくれる。

また、この試合では沼津のDFラインでのビルドアップがあまり上手くいっておらず、
高い位置でボールを奪える場面が多かったことも相まって、
ここ最近の試合では記憶にないほどU-23のペースで試合が進んでいたので、
前半21分に中村仁郎のゴールで試合を振り出しに戻すのは時間の問題だったように思う。

輝いたガンバ大阪Uー17

しかしながら、沼津もやられてばかりだったわけではなく、
ハーフタイムで修正をかけてきた。

序盤はU-23の選手を自陣の守備ブロックに引き込んでボールを奪うと、
3バックの横のスペースに2トップを走らせ、ロングフィードを送るという攻撃をしてきたけど、
後半は前線から積極的にプレスを掛けてくるようになった。

これにより、U-23のビルドアップにミスが頻発。

特に、左CBのタビナスの縦パスは次々にカットされ、
沼津に何度も決定機を与えてしまっていた。

タビナスの身体能力を生かしたディフェンスや、
積極的に縦パスを狙う姿勢は評価しているのだけど、
ここ最近は一か八かのプレーを選択して逆にピンチを招いている場面が多いように思う。

幸い、石川の好セーブや沼津の選手たちのシュートミスに助けられて失点するまでには至らなかったけど、
攻撃力にストロングポイントがあるとは言え、本分は守備の選手なので、
もっとセーフティにプレーしてほしいと思うね。

後半に入っても守勢を強いられる時間帯が長く、
これは引き分けに持ち込めれば御の字かなと思っていたのだけど、
後半の終盤にDFラインの裏へ抜け出した坂本が倒されてPKを獲得。

このPKを坂本本人が決めてU-23に値千金の勝ち越しゴールをもたらしてみせた。

唐山がトップチームに帯同するようになって以降、
U-23で出場機会が増えている坂本だけど、正直なところまだまだプロのスピードや、
インテンシティについていけていないなと思う場面が多かった。

しかしながら、年代別の日本代表に招集されて気合が入っていたのか、
この試合では前線から積極的にプレスを掛け、攻撃の局面では体を張って起点になるなど、
これまで出場したJ3の試合の中では一番良いパフォーマンスだったように思う。

坂本と同じ高校2年生の中村仁郎もこの試合でゴールを挙げたし、
同世代で切磋琢磨してお互いに高いレベルを目指してほしいね。

J2昇格のためのただの踏み台になってはいけない

今節の勝利はU-23にとって21節の富山戦以来の勝利で、
何気に沼津相手にはシーズンダブルになる。

思えば、前回、ホームで沼津と対戦した時も6連敗中だったことを考えると、
ちょうど沼津戦を契機にチーム状態が好転するようにも思えるので、
今後の戦いに期待したいね。(まあ、言っても今季はあと3試合しかないけど)

次節は中2日で長野と対戦。

長野はちょうどJ2昇格戦線の真っ只中にいるので、
絶対に落とせない試合だという位置付けで大阪に乗り込んでくるはず。

そんな生活がかかって本気モードになっている相手との対戦は、
育成年代の試合では経験できないことだと思うので、
相手の気迫に気圧されないように、こちらも相応の心構えで立ち向かってほしいね。

アスルクラロ沼津12ガンバ大阪U-23
’4 佐藤尚輝
’21 中村仁郎
’86 坂本一彩