【全国高校サッカー選手権大会 2回戦 富山第一vs宮崎日大】国立の夕陽は斯くも遠い
新国立での再現を期す旧国立の最蹴章
旧国立で行われた最後の高校サッカー選手権で、
北信越のライバルである星稜を降し、緑の優勝旗を手にしたのは富山第一だった。
今冬、仙台からマリノスへ移籍した西村をはじめ、
大塚監督の息子の翔や左SBの竹澤などのタレントを擁したチームが、
後半40分過ぎから2点ビハインドを追いつき、延長戦で逆転勝利を飾った劇的な試合は、
今でも脳裏に焼き付いているね。
あれから8年が経ち、
新国立で行われる最初の高校サッカー選手権での戴冠を期す富山第一が相対するのは、
選手権での初勝利を狙う宮崎日大。
「もう一度、国立の夕陽を見に行こう」という今季の富山第一の合言葉を実現し、
今大会を最後に富山第一の監督を退任して、
モンゴル代表監督に就任する大塚監督の有終の美を飾れるのだろうか。
リスペクトはしても臆することはしない
富山第一の布陣は守備時は5-4-1で、
攻撃時に両サイドが上がって3-4-3になる可変型システム。
先述の優勝時には三浦俊也監督のチームのようなフラットの4-4-2を志向していて、
ボールの場所を基点に3ラインが等間隔で上下左右にスライドしていく様は、
様式美が感じられて好きだったのだけど、
ここ数年、大塚監督はこの可変3バックを好んで採用しているね。
対する宮崎日大は、4-2-3-1。
予選では4-3-3を採用していて、4-2-3-1はあくまでオプションだったみたいだけど、
格上の富山第一と対戦するにあたり、守勢の時間が長くなると見てか、
オプションの布陣の方を採用してきた。
その見立ての通り、
どちらかと言えば富山第一がポゼッションで上回る試合展開になったのだけど、
宮崎日大もマイボール時には最終ラインからしっかりと繋ぐサッカーをしていた。
第一試合で静岡学園相手に善戦していた近大和歌山は、
愚直なまでに弱者の戦いを遂行して静岡学園を苦しめていたけど、
宮崎日大は布陣こそ相手をリスペクトして変更したものの、
いつも自分たちがやっているサッカーで富山第一と互角に渡り合っていたね。
今大会が2度目の選手権出場の宮崎県リーグの高校ということで、
正直全然注目していなかったのだけど、非常に好印象のチームだった。
魅せた宮崎日大の”ジーノ”
前半をスコアレスで折り返して迎えた後半も、
富山第一がボールを握るもなかなかシュートまで持って行けず、
逆にカウンターから宮崎日大がチャンスを作るという、
前半と然したる変化は無い内容。
そんな中、富山第一が選手交代で流れを掴んだように見えた後半33分、
宮崎日大がゴール正面やや左の位置でファウルをもらい、FKを獲得。
このFKを、10番芥川が左足でゴール前に入れると、
ゴール前にフリーで走り込んだCB外山の頭にドンピシャで合い、
ついにゴールネットが揺れた。
試合後のインタビューで外山が言っていたように、
完璧なボールだったので合わせるだけという感じだったね。
芥川に関して、手足の長さを生かしたボールキープと、
左足の正確なキックには目を瞠るものがあるけど、
ボランチの割にはあまり体を張らず、運動量も少ないので、
「なんか、ジャイアントキリングのジーノみたいな選手だなぁ」
と思って見ていたのだけど、最後の最後でジーノの良いところが出たね。
かくして先制に成功した宮崎日大だけど、その後の戦いを見る限り、
もう1点取りに行くのか、それともコーナーキープで時間を使うのかという意思統一が、
チームとして出来ていないように見えたので、
富山第一がスコアを振り出しに戻す可能性はあるんじゃないかと思っていたのだけど、
その富山第一は、後半アディショナルタイムに入る前になぜかGKを交代。
この試合で富山第一のゴールマウスを守っていた辰島は、
身長が163cmとGKにしてはかなり小柄だったので、
パワープレーでGKを前線に上げることを見越しての交代かと思ったのだけど、
その後のセットプレーの場面でもGKは自陣に留まったままだったので、
結果的によくわからない采配だった。
結局、富山第一は最後まで宮崎日大のゴールネットを揺らすことが出来ず、
もう一度国立の夕陽を見に行くという合言葉は叶わなかったね。
高校サッカーで終わり、高校サッカーで始まる1年
3回戦は年が明けて1月2日に開催。
例年だと1月2日の2回戦と1月3日の3回戦は2日連続の試合になるので、
コンディションの調整が難しくて波乱が起きやすい傾向があったけど、
過密日程について以前から批判が多かったこともあってか、
今大会は中1日空いたスケジュールになっているね。
(まあ、それでも過密日程には変わりないけど)
そんな3回戦もフクアリに行くつもりなので、
2022年の一発目に相応しい好ゲームが見られることを期待したいね。
富山第一0-1宮崎日大
’73 外山将大