【全国高校サッカー選手権大会 開幕戦 関東第一vs中津東】新国立の章へ入った高校サッカーの歴史

2年ぶりにファンの元に帰ってきた冬の風物詩

日本サッカーの冬の風物詩、高校サッカー選手権も今大会が記念すべき100回目。

そして、そんなメモリアルな大会で、
92回大会以来、8年ぶりに開幕戦と準決勝、決勝の舞台が国立競技場に戻ってきた。

正直なところ、新しい国立競技場はあまり好きではないので、前々回大会までと同じように、
開幕戦は駒沢、準決勝と決勝は埼スタでいいんじゃないかと思っているのだけど、
だからと言って莫大な税金を投入して建設したこのスタジアムを、
無用の長物にするのも気が引ける話。

この場所に多くの歴史を刻み続けることで、
国立競技場がまた高校サッカーにとって特別な場所になるというのも、
それはそれで悪くないのかなと思う。

そんな新国立で行われる記念すべき開幕戦のカードは東京都B代表の関東第一と、
大分県代表の中津東の対戦。

例年の大会であれば、ベンチに入れない部員の応援歌や、
ブラスバンドの演奏、チアリーダーの掛け声などがスタジアムに響いているけど、
感染症対策で上記の応援の全てが禁止になったことで、
拍手の音とスタジアムの上空を飛ぶ中継ヘリのプロペラの音が異様に大きく聞こえるという、
不思議な雰囲気の中で試合が行われた。

年の瀬の千駄ヶ谷で躍動したイエロー

早速試合の主導権を握ったのは関東第一。

3−4−2−1の1トップに入った9番の本田が、
中津東のDFラインの裏を牽制してDFラインを押し下げると、
2シャドーの11番坂井と10番肥田野が、
中津東のCBとボランチの間のスペースでボールを受けてチャンスを作り出していた。

前半13分にCKのチャンスを得た関東第一は、ゴール前に自軍の選手を配置せず、
大勢の選手をペナルティエリアの角の辺りから勢いをつけてゴール前に走り込ませるという、
トリッキーなセットプレーを敢行。

スカウティングに無かったのか、中津東のDF陣はこのセットプレーに対応出来ず、
ペナルティエリアの外に溢れたボールを、左WBの8番若松が叩き込んで、
関東第一が早々に先制点を挙げることに成功したね。

その後も着実にゴールを重ね、前半でスコアを3−0とし、
最初の40分で試合の大勢は決してしまった。

今年度の関東第一は負傷者続出によりメンバーや布陣の選定に苦労したとのことで、
コンバートや2年生の抜擢で乗り切ったみたいだけど、
この試合を見る限りそんな影響は感じられなかったね。

特に、ボランチからシャドーにコンバートされた10番の肥田野は、
この試合の最後のゴールを決めただけでなく、
懐の深いボールキープで前線で時間を作るなど、
チャンスメイクでも非常に効いていたね。

7年ぶりの選手権のピッチはほろ苦い味

対する中津東の布陣はオーソドックスな4−4−2。

関東第一は3バックなので、
カウンターから3バックの脇のスペースを狙おうという意図は見えたけど、
関東第一の攻撃から守備への切り替えが早く、
ゴールに迫る前にチャンスの芽を潰されてしまっていた。

その中でも1人気を吐いていたのが、左MFの10番国広。

緩急のつけたドリブルや意表をついたパスは、関東第一のDF陣の脅威となっていて、
自身のドリブル突破で得たFKがポストを叩いた場面は、
中津東のこの試合一番のチャンスだった。

たらればだけど、あのFKが決まってスコアが振り出しに戻っていれば、
結果的にこんなに大差がつく試合にはならなかったんじゃないかなと思うね。

ただ、関東第一の小野監督は、
国広とのマッチアップに苦戦していた右WBの1年生川口を前半の終了間際で代え、
2年生の小谷を投入すると、国広はそれまでのように自由にプレー出来なくなり、
中津東は打つ手が無くなってしまった。

メンバー全員が地元出身者の公立高校なので頑張ってほしい気持ちはあったけど、
流石に実力差が大きかったように思う。

中津東を降した関東第一の次なる相手は、尚志と瀬戸内の勝者と。

順当に行けば強豪の尚志との対戦になるだろうから、
鬼門の2回戦突破を目標に掲げている関東第一にとって難しい挑戦になるけど、
今日のような試合ができれば、3回戦のフクアリのピッチも夢じゃないと思うね。

当たり前の日常があることの素晴らしさ

熱戦の火蓋が切って落とされた100回目の選手権。

新型コロナウイルスの感染第3波の真っ只中に開幕した昨年度の大会は、
選手の父兄と学校関係者のみ観戦可という条件で開幕したものの、
大会期間中に感染状況が悪化したため最終的には無観客開催になってしまったけど、
今大会は有観客での開催に漕ぎ着けることが出来た。

ここ数日も、TVを点けるとオミクロン株関連のニュースを目にする機会は多いけど、
諸外国に比べれば日本の感染状況は落ち着いているし、
このまま有観客開催の状態で1月10日の決勝戦を迎えて欲しいね。

それまでに1試合でも多く熱い戦いが見られることを期待しています。

関東第一60中津
’13 若松
’22 坂井航太
’40+1 藤井日向
’43 本田
’76 平形京太
’79 肥田野蓮治