【全国高校サッカー選手権大会 準々決勝 神村学園vs近江】翔んで駒場 ~近江より愛をこめて~

こっちの物語はノンフィクションです

11月に公開された翔んで埼玉の続編は、埼玉と言いつつ舞台が関西で、
全国大阪化計画を企む大阪府知事に対し、滋賀解放戦線が立ち向かうという話らしい。

まあ、まだ見ていない人もいるので、これ以上書くとネタバレになるから書かないけど、
関西における滋賀は、「琵琶湖以外何も無い」など言われ、
関東における埼玉のように主役を張れないイジられキャラのような立ち位置である。

高校サッカー選手権における滋賀県代表の近江高校の立ち位置も似たようなもので、
この日、浦和駒場スタジアムで行われた準々決勝の2試合に、
近江高校目当てで訪れたという人は果たしてどれぐらいいただろうか。

そんな近江と九州の雄・神村学園の一戦は、
第一試合で青森山田が昌平相手に圧倒的な力を見せつけて凍りついたスタジアムの雰囲気を、
解凍するには十分すぎるほど熱い劇的なゲームだった。

違いを作れる選手はプロは放っておかない

プレミアWESTの神村学園と、プリンス関西1部の近江との試合とあって、
地力で勝る神村学園が試合の主導権を握ると思われたけど、
試合は序盤から実力伯仲の攻防が繰り広げられる。

すると、近江の14番浅井が左サイドからクロスを上げると、
ファーサイドでボレーで合わせた7番鵜戸のシュートが、
ループシュートのような軌道で逆サイドのサイドネットを揺らし、前半12分に近江が先制。

ゴール後の鵜戸の苦笑いの表情を見る限り、シュートを狙ったというより、
ワンタッチで中に折り返す意図だったんだろうけど、結果的に見事なゴールになったね。

ただ、この近江先制点が九州のタレント集団の目を覚ましてしまう。

失点から6分後の前半18分、13番西丸がポストプレーから右サイドの7番有馬に展開すると、
有馬のクロスをペナルティエリア内に進入した西丸が頭で合わせ、スコアを振り出しに戻す。

J2仙台への入団が内定している西丸と、
来年は争奪戦が繰り広げられるであろう14番の名和田といった選手たちは、
体が小さくても簡単にボールを失わない体幹の強さがあって、
プロから目をつけられる選手たちは違うなと思わされたね。

これで勢いに乗った神村学園は、15番の左SB吉永が左サイドをぶち抜くと、
角度の無いところから放ったシュートがGK山崎の足に当たってゴールマウスに吸い込まれ、
あっという間に試合をひっくり返してしまった。

昨年の福田師王の後を追うかのように、
高校卒業後にJリーグを経由しないで欧州に渡ることが決まっているだけあって、
さすがにこのレベルでは違いを見せつけていたね。

その後は、近江の10番金山が、3バックの左から効果的な持ち上がりを見せて好機を作るなど、
一進一退の攻防を繰り広げたけど、結局、前半はスコアは動かず、
神村学園1点リードで試合はハーフタイムへ。

滋賀に力を貸した埼玉

後半に逆転を期す近江のキーマンとなったのは、
前半22分に11番荒砂の負傷交代に伴いピッチに入っていた13番山本。

後半5分に訪れたビッグチャンスは、神村のGK川路に阻まれるも、
後半13分に訪れたチャンスは確実にモノにして、スコアは再びタイに。

しかし、その直後に名和田が直接FKを決め、神村学園がまたも近江を突き放す。

名和田のFKはコース自体は甘くて、山崎もシュートコースに入っていたのだけど、
近江側のゴールはかなり西日が眩しい時間帯になっていたこともあって、
ファンブルしてしまったね。

名和田の3試合連続ゴールでリードを奪った神村学園だけど、
そのリードを広げる余裕は無く、近江相手に防戦一方の試合展開になっていく。

すると後半26分、川上のCKにニアの選手のブラインドから飛び込んだ山本が合わせ、
再びスコアを振り出しに戻し、その後も近江が神村学園陣内で試合を進めるも、
試合を決定づけるゴールは決まらず、このままPK戦かという雰囲気がスタジアムを覆っていた。

しかしながら、後半アディショナルタイムに7番鵜戸がゴール前の混戦から押し込み、
最後の最後で近江が勝ち越しに成功し、そのまま試合終了のホイッスル。

地元の高校でもないのに拍手喝采の浦和駒場スタジアム。

そう言えば、翔んで埼玉の続編は、滋賀解放戦線と、
GACKT演じる麻実麗率いる埼玉解放戦線がタッグを組んで戦う話だし、
初のベスト4進出を懸けて戦う滋賀県代表の近江に、
埼玉の浦和駒場スタジアムが力を貸したのかもね。

夢の続きは開会式以来の国立で

12月28日に開幕した高校サッカー選手権もついにベスト4が出揃い、
選手たちが再び国立競技場に帰ってくる。

第一試合では、市立船橋と青森山田の名門対決が実現し、
第二試合では、近江と堀越という予定調和を乱そうとする両校のカードが実現。

どんな結末を迎えるにしろ、残り3試合も熱い試合が見られることに期待したいね。

神村学園34近江
’12 鵜戸瑛士
’18 西丸道人
’22 吉永夢希
’53 山本諒
’55 名和田我空
’66 山本諒
’80+3 鵜戸瑛士