【明治安田生命J1リーグ27節 ガンバ大阪vsベガルタ仙台】いつかは負ける時が来るというのはわかっているけども

最下位侮ることなかれ

世界的に見て実力が拮抗していると言われるJリーグだけど、
2009年の大分や2012年の札幌、2014年の徳島のように、
何をやってもにっちもさっちもいかない状態で最下位に沈むチームも稀にある。

今季のここまでの戦いを見ると仙台がそのカテゴリーに当てはまる感じだった。

17試合連続未勝利、今季ここまでホームで未勝利、
ケガ人だらけで6人しかいないベンチメンバー、
さらには関係団体から天下りしてくる社外取締役に支払われる役員報酬が嵩み、
クラブの財政状況を逼迫しているというピッチ外の話まで出てきた。

しかしながら、今季の仙台の戦力が乏しいかと言うと、個人的にはそうは思わない。

昨季、ベルギーに移籍したシュミットダニエルに代わって獲得したヤクブスゥオビクに加え、
今季はクエンカやゲデスといった実力のある選手も補強しているので、
例年の仙台に比べれば戦力は揃っているように見える。

また、今季から仙台を率いる元ガンバ戦士の木山監督は、
今季の低迷のスケープゴートにされて仙台サポーターにボロクソに言われているけど、
愛媛や山形の監督時代にJ1昇格プレーオフ出場に導いたこともあるので、
そこまで無能な監督ではないと思う。

対するガンバは厚別での札幌戦から12試合負けなしと好調をキープしているけど、
長期間勝利から遠ざかっている相手に勝ち点3をプレゼントしたり、
かつて所属していた選手に恩返しゴールを決められるというのは、
長年、クラブが抱えてきた悪癖だ。

試合前のネットニュースの内容を見る限り、ガンバの選手たちに慢心は無さそうだったので、
足元をすくわれる心配は杞憂に終わるかなと思っていたのだけど、
悪い予感ほどよく当たるという定説をここまで見事に体現した試合がお目にかかれるとは、
正直なところ思ってもみなかったね。

こんなに返されるほど恩を売った覚えはない

前の試合から中5日の仙台に対し、中2日のガンバ。

コンディション面では仙台が有利とは言え、
この試合が終わったら次節の浦和戦まで中7日空くので、
極端なターンオーバーは不要かなと思っていたのだけど、
出場機会の少ない選手を起用するという意図もあったのか、
宮本監督は神戸戦からスタメンを5人変更。

渡邉千真、唐山、矢島、昌子、藤春が入る代わりに、
パトリック、宇佐美、小野瀬、キムヨングォン、福田がスタメンから外れ、
宇佐美とキムヨングォンに関してはベンチからも外れていたね。

対する仙台は、DAZNの中継では4−1−4−1と言う風に紹介されていたけど、
アンカー+インサイドハーフと言うよりは中盤に5人が横一列に並ぶような布陣。

前節の仙台は4−4−2で戦っていたため、スカウティングが外れたガンバは、
試合に上手く入れずに仙台に主導権を握られてしまった。

すると前半17分、髙尾がクエンカに突破を許すと、
マイナスのクロスを元ガンバの長沢にワンタッチで合わされ、先制点を献上。

さらに前半終了間際のセットプレーでも長沢にヘディングシュートを決められ、
前半だけで2点ビハインドを背負うことになってしまった。

それにしても長沢は、
昨季のユアスタでのガンバ戦でも後半アディショナルタイムに決勝ゴールを決めているし、
古巣のガンバ戦になると異常に張り切るのは何なんだろうね。

試合後のインタビューでは「古巣だからと言って特別燃えていたとかはない」と言ってたけど、
いつぞやのホーム最終戦セレモニーでブーイングされたことを
根に持っていたりするのだろうか。

後半も躍動したアウェイチーム

2点ビハインドを逆転すべく、宮本監督は後半頭から
矢島と唐山に代えて小野瀬とパトリックを投入。

この試合の前半のガンバの右サイドは矢島と髙尾の組み合わせだったけど、
4バックにしても3バックにしても、ガンバの右サイドって、
小野瀬と髙尾という組み合わせじゃないと機能しないんだよな。

リオ五輪予選を戦っていた時の日本代表で、
当時の指揮官だった手倉森が、矢島を右サイドで起用していたけど、
左サイドにボールがある時に斜めの動きでペナルティエリアに進入して決定機に絡むなど、
その時の矢島のプレーはとても良かったと記憶している。

同じ動きをガンバの右サイドでもやってほしいのだけど、なかなか難しいのかね。

小野瀬とパトリックを投入して、多少、チームパフォーマンスは改善されたものの、
1点返したかと思われた倉田のゴールがオフサイドの判定になるなど、得点にまでには至らず。

なかなか状況を打開できない宮本監督は、
藤春に代えて福田を投入し、左サイドの攻め方を変えようとしたのだけど、
交代を終えた矢先、長沢にハットトリックとなる3点目のゴールを喫し、万事休す。

試合終了間際に柳にゴールを許し0−4とされたけど、
戦意を喪失しているかのような菅沼の対応を見る限り、
ガンバが仙台対し一矢を報いる期待は持てそうになかったね。

高すぎる授業料を生かす必要がある

ガンバが長期間勝てていない相手に勝ち点3を献上したり、
かつての所属選手に恩返しゴールを許す悪癖があるというのは先述の通り。

しかしながら、17試合勝ちがなかった仙台に敗戦しただけでなく、
深刻な攻撃力不足に陥っていた長谷川健太監督時代末期を象徴するFWである長沢に
ハットトリックを許すなんて、まさに悪癖のフルコースのような試合だった。

2位の座を争っているセレッソが清水に敗れたことで、
勝ち点差が縮まらなかったことだけが不幸中の幸いか。

これで負けなしは12試合でストップしたわけだけど、
ホームで最下位の仙台相手に大敗を喫したからと言って、
今季のこれまでの戦いを全て否定するのも違うと思う。

宮本監督が試合後に語っていたように、
この試合で学んだのは気を引き締め直す必要があるということ。

随分と手荒いレッスンではあったけど、
仙台のおかげで22日に埼玉スタジアムに乗り込むガンバの選手たちからは、
慢心や油断といった感情が排除されていると信じたい。

ガンバ大阪04ベガルタ仙台
’17 長沢駿
’44 長沢駿
’75 長沢駿
’89 柳貴博