【全国高校サッカー選手権大会 決勝 山梨学院vs青森山田】これは11年前のデジャヴなんかじゃない

11年前と同じ顔合わせでも同じ立場ではない

大晦日に開幕した高校サッカー選手権もこの日が決勝戦。

対戦カードは11年前の88回大会と同じ顔合わせとなる、山梨学院と青森山田。

今から10年前ぐらいの選手権と言えば、中学年代の有力選手が、
高校年代の所属クラブにJクラブのユースチームを選択することが増え、
それによって、これまで強豪とされてきた高校に有力選手が集まらなくなり、
出場校の戦力差がこの大会の歴史上で一番拮抗していた頃。

野洲や盛岡商業、鵬翔と言った具合に、
毎年のように初優勝校が登場する群雄割拠の時代の中で、
2009年度大会を制したのが山梨学院だった。

しかしながら、2011年度に高円宮杯プレミアリーグが開幕すると、
関東のJクラブのユースチームとの激闘を経て成長した青森山田が、
高校サッカー界の横綱的地位を確立していく一方で、
関東プリンスと山梨県リーグを行ったり来たりする、
エレベーター校になってしまった山梨学院。

11年前と同じカードと言っても、
当時と比べると両校の立場には大きな乖離があるので、
順当に勝敗予想すれば多くの人が青森山田の優勝を予想するだろう。

とは言っても、予定調和はつまらないので、
山梨学院に頑張って欲しいところだったけど、
内心、厳しいだろうなと思っていただけに、
この試合の結末は驚きでしか無かったね。

試合を支配した青森山田と少ないチャンスをモノにした山梨学院

試合は戦前の予想通りキックオフから青森山田が主導権を握り、
山梨学院がカウンターを狙うという展開。

青森山田は、3回戦の帝京大可児や、
前回大会の決勝で対戦した静岡学園のように、
しっかりと繋いでくるチームに苦戦しているイメージがあったので、
シンプルに縦を目指す山梨学院のサッカーは、
青森山田にとって組み易いんじゃないかと思っていた。

しかしながら先制したのは山梨学院。

カウンターから広澤が右足を振き、
韮澤が守るゴールのネットを揺らしたのは前半12分のこと。

11年前の決勝で山梨学院が先制点を挙げたのが前半11分だったので、
当時の再現を期待させるものがあったね。

しかしながら、その後は攻撃の圧を強めた青森山田が、
一方的に山梨学院を押し込み、
山梨学院は自陣からボールを出すのも精一杯という展開に。

今大会でも猛威を振るった青森山田のロングスロー戦術は、
山梨学院も同じ戦術を得意としていることもあって上手く封じ、
前半を1点リードで折り返すことに成功したけど、このままの展開が続けば、
青森山田にゴールが生まれるのも時間の問題といった感じだったね。

その予感は的中し、後半12分にロングスローの流れから
藤原が決めて試合を振り出しに戻すと、
後半18分に安斎が決めて瞬く間に試合をひっくり返してみせた。

その後も続く青森山田の猛攻に、
山梨学院が勝機を見出すのは難しいなと思っていたのだけど、
またしてもカウンターの流れから10番の野田が決めて、2-2のタイスコアに。

正直、山梨学院の後半のチャンスってこれぐらいだったけど、
その一つのチャンスが得点になってしまうことが選手権の恐ろしさだなと思ったね。

PK戦の結末はいつだって劇的だ

その後、青森山田は左サイドの仙石に絶好の得点機が訪れるも、
これを決めきれず試合は延長戦に突入。

延長戦でも山梨学院の茂木にシュートチャンスが訪れたけど、
シュートを打つことが出来ず、勝敗はPK戦に委ねられることになった。

ただ、PK戦になって喜んでいたのは、延長を含めた110分間の戦いの中で、
終始守勢を強いられていた山梨学院だったんじゃないだろうか。

山梨学院は、今大会3度目のPK戦だけど、
2020年度の公式戦無敗の青森山田は当然初めてのPK戦。

青森山田もPKの練習はしているだろうけど、
実戦でのPK戦では山梨学院に一日の長があるのは明白だったからね。

110分間の戦いを経て辿り着いたPK戦は、山梨学院が全員成功したのに対し、
青森山田は2人目の安斎と4人目の三輪が失敗し、山梨学院が勝利。

奇しくもFC東京U-15深川でチームメイトだった安斎と熊倉のPK対決が、
この試合の勝敗の分かれ目になるなんて、
サッカーの神様は小説よりも奇なるストーリーを現実に用意してくれるね。

また、山梨学院に11年ぶり2度目の優勝旗をもたらした、
キャプテンでGKの熊倉は素晴らしかった。

準決勝の帝京長岡戦に引き続き、試合後のインタビューで、
「自分は何もやってない」って謙遜していたけど、
110分間の戦いであれだけ青森山田にシュートを浴びながら、
2失点で食い止めたパフォーマンスは、決して何もやってないなんてことは無い。

高校卒業後は大学に進学するみたいだけど、
将来、Jの試合で見てみたいと思わせてくれるGKだったね。

そして記念すべき100回大会に向けて

成人の日は国立競技場もしくは埼玉スタジアムのスタンドで、
選手権の決勝を見ながら過ごすというのが、ここ10余年の慣習だったのに、
テレビの前で選手権の決勝を見ているのは違和感しか無かった。

おそらく、僕以外の高校サッカーファンも同じ気持ちだろう。

そして、来年度は記念すべき100回大会。

そんな記念すべき大会の決勝戦は、
大勢の観客が入ったスタジアムで行われてほしいなと言うのが、
高校サッカーファンの切なる願いやね。

山梨学院22青森山田
PK()
’12 広澤灯喜
’57 藤原優大
’63 安斎颯馬
’78 野田武瑠