【天皇杯決勝 浦和レッズvs大分トリニータ】漫画よりも劇的な現実
師走の千駄ヶ谷に映える赤と青
今日は天皇杯決勝。
例年であれば新年の挨拶とともにブログを書き始めるところだけど、
来年予定されているカタールワールドカップのスケジュールに鑑み、
今年は約2週間前倒しての開催。
そんな決勝戦を戦うのは、
我らがガンバ大阪とナショナルダービーなんて呼ばれた試合をしていたこともあったのに、
最近はあまり仲良くしてくれない腐れ縁の浦和レッズと、
来季からガンバの監督就任が決定的になっている片野坂監督率いる大分トリニータ。
片野坂さんにしてみれば、賜杯を置き土産に大阪の地での挑戦を始めたいだろうから、
個人的には大分に優勝して欲しい気持ちはあったのだけど、
それは今季限りで浦和を去ることになっている槙野や宇賀神にとっても同じことだろう。
そんな来る者や去る者の悲喜交々が見られる2021年シーズンの最終戦。
キックオフの笛が6万人近い観衆を集めた新国立のピッチに響いた。
普段着ではないのはユニフォームだけではなかった
浦和の布陣はユンカーを頂点に置いたオーソドックスな4−2−3−1。
対する大分は、スタメンのメンバーの顔ぶれを見ても、
3バックなのか4バックなのか見当がつかなかったのだけど、
蓋を開けてみると中盤を菱形にした4−3−1ー2の布陣だった。
片野坂さんなりに浦和を研究して採用した布陣だったんだろうけど、
この布陣は中盤で選手が逆三角形の配置になる場面を多く作れるので、
パスを繋ぎやすいというメリットがある反面、
ポゼッション出来ないと手薄なサイドを狙われやすいというものだと思う。
片野坂さんは浦和相手にポゼッションで上回ることは可能という見立てだったのだろうけど、
試合が始まってみると試合の主導権を握ったのは浦和で、
サイドチェンジを多用されて左右に揺さぶられる大分。
程なくして関根に右サイドを深い位置までえぐられると、
マイナスのパスを江坂に決められ、前半6分という早い時間に先制を許してしまった。
一昨年、シントトトロイデンから浦和に復帰して以降、パッとしない印象だった関根だけど、
この試合では、先制点の後も右サイドからドリブルでチャンスメイクをする場面があり、
インゴルシュタットに移籍する前のキレキレの状態を彷彿とさせるものがあったね。
先制後、浦和はブロックを敷いて待ち構える守り方にシフトしたこともあってか、
大分がボールを持つ時間帯が長くなったけど、DFラインでのパス回しがほとんど。
たまにアバウトな縦パスが繋がって、チャンスになりそうな場面は作っていたけど、
シュートまで持ち込めたのは1本だけで、
大分のかつての守護神である西川の手を煩わせるような状況は、
皆無といっても差し支えなかったね。
ただ、浦和としては、そんな低調な大分相手に、前半で試合を決められなかったことが、
試合終了間際にヒヤヒヤする状況を招いてしまうことになるんだけども。
置き土産を残したのは浦和の5番
前半を低調な出来で終えた大分は、後半からトップ下の下田のポジションを下げ、
4−4−2にして浦和とミラーゲームを挑むような形に変更。
この布陣変更がハマり、浦和陣内で大分の選手がプレーする時間帯が長くなったけど、
浦和の守備も堅く、試合を振り出しに戻すまでには至らず。
1−0の状況が続く中で、浦和のリカルド・ロドリゲス監督は、
後半27分にユンカーに代えて宇賀神を投入して、左サイドの守備を強化。
さらに後半38分には小泉と関根に代えて槙野と大久保を投入して、
万全な逃げ切り体制を構築した…ように思えたところからスコアが動くのだから、
サッカーというスポーツは面白い。
後半もアディショナルタイムに入ろうかという時間帯に、
下田が利き足とは逆の右足でペナルティエリア内にクロスを上げると、
これをペレイラが頭で合わせて大分が同点。
準決勝の川崎戦で驚異の粘りを見せて国立への切符を掴んだ大分が、
この試合でも土壇場で執念を見せつける格好になったね。
僕は大分側のスタンドで観戦していたので、
僕の周囲は先週の等々力での激闘の再現を期待する空気が俄然高まっていたのだけど、
そんなスタジアムに一瞬にして浦和の歓喜をもたらしたのが、今季限りで浦和を去る槙野智章。
大久保が蹴ったCKのクリアボールをペナルティエリア外から柴戸がボレーで狙うと、
ゴール前にいた槙野がヘディングでコースを変えて、ゴールマウスに流し込んでみせた。
1点リードを守り切るために投入されたはずだろうけど、目立ちたがりの槙野のことだから、
自分の見せ場を作るためにわざと失点したんじゃないかと勘ぐってしまうような、
出来過ぎな試合展開。
まあ、試合後の槙野のインタビューを聞く限りそんなことはなかったみたいだけど、
やはりこういう状況で美味しいところを持っていくのはエンターテイナーだなと思う。
人によって好き嫌いは分かれる選手だと思うけど、
TV出演やSNSなどでの発信力があることは否定できないので、
ファン層が蛸壺化しているJリーグに新規ファンを取り込むためには必要な選手だ。
新天地は神戸という話らしいけど、どこでプレーするにせよ、
引き続きJリーグの盛り上げ役として一役買って欲しいと思う。
腐れ縁との復縁に期待する2022年
101回目の天皇杯は浦和が制し、来季のACL出場権を獲得。
まあ、来季はJ2を戦う大分がACLに出場するよりは、
浦和が出場した方が日本勢の勝ち上がりに期待出来るので、
大分のサポーターには気の毒だけど、結果的にこれで良かったのかもしれない。
ただ、今回の浦和の戴冠で浦和の通算獲得タイトル数が9となり、
ガンバの通算獲得タイトル数に並ばれてしまった。
今のガンバと浦和のチーム状況を比較すると、
10個目のタイトルを獲得する可能性は浦和の方が高いように思えるけど、
だからと言って黙ってそれを許すのも癪に障るというもの。
と、言うわけで来季から頼みますよ、片野坂さん!
浦和レッズ2−1大分トリニータ
’6 江坂任
’90 ペレイラ
’90+3 槙野智章