【全国高校サッカー選手権大会 2回戦 帝京長岡vs市立船橋】PK戦で市船が勝つってどういう風の吹き回しですか?

そのブランド多くの人を惹きつける

2023年の大晦日に柏の葉で行われた高校サッカー選手権の2回戦は、
入場ゲート前に出来た長蛇の列を受け、開門時間が15分早められるという盛況ぶり。

そんな観客のお目当ては、
その名を語らずして高校サッカー選手権の歴史を語れないと言ってもいい名門・市立船橋。

そんな市船だけど、近年は、千葉県内で長年に渡り覇権を争ってきた流経大柏に加え、
日体大柏も実力をつけてきたことで、今大会の出場も3年ぶりになり、
いささか選手権での存在感が薄れてきているように思う。

それでもこの日の満員のスタンドは、市船というブランドに対する期待の表れでもあるので、
今大会の戦いぶりで市船ここにありという姿を、
日本中のサッカーファンに再認識させて欲しいものだ。

また、この日の対戦相手はすっかり選手権の常連校となったプリンス勢の帝京長岡なので、
レベルが高い試合が見られることにも期待したいね。

熱い気持ちは勝利への執念の表れ

そんな市船の注目選手は何と言っても10番郡司璃久。

伝統的に守備が堅い市船だけど、決定力不足に泣かされ、
スコアレスドローのまま突入したPK戦で敗退する姿を選手権で何度も見てきているので、
この年代別代表に名を連ねるストライカーが市船を高みに導けるかが注目だ。

試合はお互い4-4-2のミラーゲームで、
市船は郡司、帝京長岡は14番堀が1.5列目の位置で自由を与えられているという、
特徴が似通ったチームのように見受けられた。

前半、まず試合の主導権を握ったのは市船。

1トップの15番の久保原の周りを衛星のように動く郡司を起点にチャンスを作り、
何度もセットプレーのチャンスを得るも、ゴールを奪うまでには至らない。

個人的に郡司のプレーは初めて見たのだけど、
相手のディフェンスに引っかかってもなぜか自分のところに戻ってくるドリブルや、
小さい振り幅で強烈なシュートを放つところなど、
市船の先輩である鈴木唯人に似ているなと思うところが多くあったね。

ただ、それ以上に、自身のミスや味方のミスに対して感情を露わにする場面が多く、
最近では珍しいタイプの選手だなと思った。

まあ、FWはこれぐらい負けん気が強くないとやっていけないと思っているので、
その熱い気持ちが間違った方向にだけ行かないように気をつけて欲しいね。

しかしながらその郡司を筆頭とした市船の攻撃陣は、
前半で多くのセットプレーのチャンスを得るもそれらをモノにできず、
スコアレスでハーフタイムを迎えることになった。

PK戦の相性の悪さを払拭した2年生GK

低調だった前半のパフォーマンスを受け、帝京長岡の古沢監督は、
4番池田に代えて、12番香西を投入し、ボランチタイプの選手を最終ラインに入れてきたけど、
それでも市船が優勢に試合を進める展開は変わらず。

すると、後半8分に市船がCKのチャンスを獲得し、
前半は一度も見せなかったサインプレーで右サイドを崩すと、
最後は右SBの2番佐藤がゴールネットを揺らし、先制に成功する。

これで勢いが出るかに思われた市船だけど、
試合を決定づける2点目のゴールが奪えぬまま試合終盤まで時計の針が進むと、
帝京長岡の左サイドで再三ドリブルでチャンスを作っていた10番原から、
最後は6番水川が押し込み、後半32分にスコアが振り出しに戻ってしまう。

その後は、帝京長岡がパスワークで市船を自陣に押し込み、
市船は可能性の低いロングボールとロングスローに勝機を見出すという、
これまでの試合展開と逆の展開になるも、結局、決着がつかないまま勝敗の行方はPK戦へ。

先述の通り、市船はPK戦と相性が悪いので、
この日も市船の4人目のキッカー・3番内川のPKが止められた時は、
「この大会もPKで敗退するのか・・・」と思ってしまった。

ところが、絶体絶命の状況から2年生GKのギマラエス・ニコラスが、
22番谷中と、8番橋本の立て続けにストップし、土壇場で市船の3回戦進出を手繰り寄せたね。

橋本のPKを止めた後、まだ後攻の4番宮川のPKが残っているのに、
勝ったと思って市船のファンが陣取るスタンドに駆け出していったところは面白かったけど、
もし今大会で市船が選手権を制するとなったら、
このニコラスのPKストップがターニングポイントの一つになるだろうね。

本年もありがとうございました

3回戦は年明けの1月2日。

前橋育英や静岡学園、尚志といったプレミア勢が敗れ、
青森山田もPK戦の末に辛くも勝利を収めるなど、
どのカードも一筋縄ではいかない戦いが見られているね。

高校サッカー選手権はまだまだ熱戦の最中だけど、2023年のサッカーは今日で終わり。
2024年はスタジアムでどれだけ熱狂の瞬間に立ち会えるか、今から楽しみでならないね。

それでは皆さま、よいお年をお迎えください。

帝京長岡11市立船橋
   PK(
’48 佐藤凛音
’72 水川昌志