【全国高校サッカー選手権大会 3回戦 昌平vs大津】プレミア勢対決の勝敗を分けたのはGKの指先の差

笛が鳴ったらピッチ外のことは頭の隅に置いておく

元日の夕方に能登半島を襲った大地震から一夜明け、
関東の各地で開催された高校サッカー選手権の3回戦。

柏の葉では、石川県代表の星稜高校の応援団が来れなくなったことを受け、
既に敗退した日大藤沢高校のサッカー部が応援に駆けつけるなど、
垣間見えるサッカーファンの絆に胸が熱くなる中、
浦和駒場では昌平vs大津という東西プレミア勢対決が行われた。

昌平は部員の飲酒問題、大津は部内でのいじめ問題と、
今季はスキャンダルに見舞われ、お互いに監督が交代した両校とあって、
世間からはポジティブに受け入れられていないように思う。

過ちを犯した生徒は罰せられるのは当然だけど、
1人の過ちにより部員全員が責任と取らなければいけないという、
日本の部活にありがちな連帯責任は個人的にはナンセンスだと思っているので、
この大会に参加している選手たちは、
気兼ねすることなく優勝旗を目指してプレーして欲しいと思う。

スタイルのコントラストくっきりな1stハーフ

安易なロングボールやロングスローを使わず、
ドリブルとショートパスをベースに確固たる哲学の下でプレーする昌平と、
練習のほとんどが個人練習ということでチームとしてはあまり変わったことはせず、
オーソドックスな4-4-2の戦い方を志向する大津という、対極なスタイルにある両校。

ここ数年、プロ選手を輩出し続けていた昌平だけど、
今季はプロに進む選手がいないようなので、
この試合のピッチに立っている中でプロに進むのは、
水戸ホーリーホックへの入団が決まっている大津の10番碇のみ。

碇は1年の時から試合に出ているけど、1年の時はボランチ、2年の時はCB、
そして3年の今季はFWと、適性ポジションがどこなのかよくわからない選手なので、
水戸がこの選手をどうやって育てていくのか楽しみやね。

小雨が降る中行われた前半は、拮抗した展開で終盤まで進み、
このままスコアレスでハーフタイムかと思われたけど、
大津の7番古川が左サイドから上げたクロスをファーサイドで碇が落とすと、
中央で待っていた9番山下がゴールネットを揺らし、前半37分に大津が先制。

昌平の2年生GKの佐々木は、ゴールを空けてパンチングに行ったのであれば、
ボールに触らないといけない場面だったね。

前半終了間際に嫌な形で失点した昌平だったけど、
前半アディショナルタイムに昌平らしいパスワークで中央をぶち抜くと、
最後は9番小田がゴールネットを揺らし、タイスコアでハーフタイムを迎えることが出来た。

PKで決着がつくのが勿体無い好ゲーム

お互い選手交代無く迎えた後半も、
両校とも一歩も引かない一進一退の攻防が繰り広げられる。

この膠着状態を打破すべく、今季から昌平の指揮を執る村松監督は、
先制点を挙げている小田に代えて15番鄭を投入。

その鄭が、ピッチに入るやいなや大津のGK坊野に猛烈にプレスを掛け、
フィードキックをカットしてチャンスを作るなど、
交代選手としての役割を十分に理解しているプレーを見せる。

昌平に勢いが生まれそうなワンプレーだったけど、
皮肉にもその直後に勝ち越しゴールを奪ったのは大津。

CKを碇が中央で合わせると、
ゴール前にいた11番稲田がコースを変えてゴールマウスに流し込み、
後半28分に大津が勝ち越しに成功する。

1点ビハインドで試合の残り時間は、
後半のアディショナルタイムを入れても15分ほどというところで、
焦って縦に急ぎたくなる状況だけど、そんな中でも昌平の選手たちは、
10番長準喜を中心にドリブルとショートパスを用いるスタイルを崩さない。

すると後半37分、右サイドから抜けてきたクロスを、
ファーサイドで受けた11番長璃喜がゴールネットを揺らし、再びスコアを振り出しに戻す。

そんな東西プレミア勢の両校のつばぜり合いは最後まで決着がつかず、
勝敗の行方はPK戦に委ねられることに。

どういうわけかGKにとって西日が眩しい側のゴールでPK戦が行われることになったけど、
この試合でハイボールの処理で不安定なプレーを見せていた佐々木が、
大津の4人目のキッカーの稲田のシュートをセーブして面目躍如。

そんな佐々木の活躍に昌平のキッカーは全員成功という形で応え、
昌平の過去最高成績に並ぶベスト8に進出。

大津は市立船橋に敗れた夏のインターハイに続いてPK戦で姿を消すことになったけど、
昌平の4人目のキッカー8番大谷のシュートは、坊野の手に当たっていたので、
勝敗の分かれ目は細部にあったように思う。

アップセットか予定調和か

準々決勝は中1日置いて1月4日。

この日の第2試合で広島国際学院相手に7得点を奪った青森山田をはじめ、
市船や神村学園など、プレミア勢が順当に勝ち上がってきている一方で、
愛知県屈指の進学校である名古屋が、前回大会の優勝校である岡山学芸館をPK戦で破るなど、
面白い顔ぶれが揃ったベスト8になったね。

地震が発生した能登半島では、
未だ心中穏やかでない日々を過ごしている人たちが多いと思うけど、
無事だった人たちは安易な自粛ムードに乗らずにいつも通りの生活を送るのみ。

明後日の試合でも高校生の溌剌としたプレーが、
多くの人たちの気持ちを熱くさせてくれると思います。

昌平22大津
PK(
’37 山下景司
’40+1 小田晄平
’68 稲田翼
’78 長璃喜