【全国高校サッカー選手権大会 3回戦 前橋育英vs尚志】連覇することの難しさ

選手権連覇というミッションインポッシブル

前橋育英は、今大会で唯一、選手権の連覇に挑むことができるチームである。

ただ、同一のコンペティションを連覇するというのは、
プロスポーツに於いても難易度の高いものであることは言うまでも無いけど、
学生スポーツのコンペティションとなればその難易度はさらに上がる。

なぜなら、学生スポーツは1年ごとに選手が大きく入れ替わるため、
前年度の優勝に貢献した選手が翌年度も同じチームにいるとは限らないからだ。

事実、前橋育英が前年度の選手権を制することが出来た大きな要因として、
ほとんどの選手たちが”2回目”の選手権だったというのがある。

と、言うのも、2016年度のインターハイの群馬県予選で1回戦負けという、
名門校にあるまじき屈辱を味わったことを受け、前橋育英の山田監督は、
レギュラーのほとんどを3年生から2年生に入れ替えた。

これが功を奏し、同年度の選手権は下馬評を覆し決勝進出。

決勝戦では青森山田に5-0というショッキングな敗戦を喫することになったが、
この惨敗を経験した2年生たちを主体としたチームが、
2017年度に選手権を制したことは偶然ではないだろう。

しかし、2018年度の前橋育英のチームで、前年度の優勝に貢献した選手と言えば、
14番の秋山と前年度のファイナルで決勝ゴールを決めた9番の榎本ぐらい。

ほとんどの選手たちが初めての選手権を経験するという状況で、
連覇という偉業を周囲に期待されることは、
今年度のチームにとっては高すぎるハードルだったように思う。

プレミアリーグ参入プレーオフにも進めなかったという事実が示すように、
今年度の前橋育英に前年度ほどの力が備わっていないことは明らかだった。

日程の不利を跳ねのけた尚志

過密日程の選手権に於いて、一番過酷なのが、
この1月2日、1月3日の2回戦と3回戦の連戦である。

尚志は12月31日の1回戦で神村学園、1月2日の2回戦で東福岡と、
いずれもタフな相手と試合をしているだけに、
その消耗度は言葉では推し量れないもがあるはず。

実際、この試合も前半から主導権を握ったのは、
1回戦をシードされて消耗度が少ない前橋育英だった。

しかし、東福岡の攻撃をゼロで凌ぎ切った尚志の守備陣は、
この日も前橋育英の攻撃陣に自由を与えず、前半をスコアレスで折り返すと、
後半に沼田皇海の直接FKがゴールネットを揺らし、先制に成功する。

角度が厳しいように見えたけど、壁の下を抜いてくることを警戒し、
ジャンプしなかった前橋育英の壁をあざ笑うかのように
ニアポストに突き刺さった左足のキックは見事だった。

その後、立て続けに染野が2点目のゴールを決めたあたり、
セットプレーは膠着した試合の流れを変えることが出来るというのを、
改めて認識させられた。

連戦の締めくくりは準々決勝

3回戦で勝利し、ベスト8に勝ち進んだチームは、中1日で準々決勝を戦うことになる。

準々決勝から準決勝までは中6日空くので、
過密日程によるコンディション不良に左右されて番狂わせが起きるのは、
準々決勝までと言える。

尚志としては1回戦からタフな相手と3試合続けて戦っているだけに、
コンディションをリセットしてベスト4の戦いに進みたいところだろう。

ただ、尚志と同様に日程の不利を覆して長崎総附を破った帝京長岡は、
来季からプレミアEASTで戦う尚志と言えど侮れない相手である。

5日の等々力ではまた見応えのある試合が見られることは間違いないだろうね。

前橋育英12尚
’49 沼田皇海
’51 染野唯月
’71 高橋尚紀