【AFCアジアカップ 準々決勝 イランvs日本】道半ばで途切れたアジアの頂への旅路

背番号14の魂は今も日本代表にいる

ラウンド16のバーレーン戦から中2日、
息つく暇もなく今大会の優勝候補のイランとの準々決勝の日がやって来た。

バーレーン戦は快勝だったとは言え、選手たちには少なからずダメージが残っていると思うけど、
それ以上に、バーレーン戦当日にスクープされた性加害疑惑により、
伊東純也がチームを離脱するという出来事が与えたインパクトの大きさは想像するに難くない。

まあ、被害者がいる話なので白黒はっきりするまでは、
想像で色々と話をするのは控えた方がいいんだろうけど、
昨年の6月に起きた話をアジアカップ開催期間中というタイミングでスクープするなんて、
週刊誌側に代表チームに動揺を与えようという意図があるとしか思えない。

外野が騒がしくなっているけど、カタールに残った選手たちは自分たちの戦いに集中して、
イランを降して準決勝へ駒を進めて欲しいと思う。

勝てる試合運びだった前半

グループステージでイラクに敗れた地でもある、
エデュケーションシティスタジアムに戻ってきた日本のスタメンは以下の11人。

バーレーン戦のスタメンから旗手、中山、中村敬斗が外れ、守田、伊藤洋輝、前田が入った。

旗手はケガしたし、中山もそこまで良いパフォーマンスではなかったので、
守田、伊藤洋輝の起用に関しては想定内だけど、前田の起用には驚かされた。

前田と伊藤洋輝の左サイドで臨んだ試合ってあまり記憶に無かったので、
正直なところ、「連携面でどうなんだろう?」と思ったのだけど、
攻撃面では2人の連携で崩す場面などは見られなかった反面、
守備面では、前田の前線からのプレスが効きまくりで、
イランが明らかに日本の左サイドから攻めるのを躊躇っていたからね。

しかし、昨シーズンのポルトガルリーグ得点王のタレミを累積警告で欠いていても、
逆サイドの堂安と毎熊のサイドからチャンスを作ってくるあたり、
今大会のこれまでの対戦相手とは一味違うなと思わされた。
(タレミは前回大会の日本戦も累積警告で出場停止だったし、日本と試合したくないんだろうか?)

毎熊がファーサイドのシュートコースを消してミスを誘った、
13分のジャハンバフシュのシュートや、
板倉との競り合いを制して裏へ抜け出して狙った39分のゴッドスのシュートなんかは、
決められていてもおかしくなかったしね。

対する日本は、ボールを保持しながらもなかなかシュートの場面を作れずにいたけど、
28分に上田のポストプレーからの落としを受けて左サイドから切り込み、
ゴールネットを揺らしたのはなんと守田。

シュートの前で軸足が滑ったので強いシュートは打てなかったけど、
相手のGKの足に当てながらも執念でゴールにねじ込んだ感じだったね。

その後、追加点は奪えなかったものの、イランの攻撃も抑え、
1点リードでハーフタイムを迎えることが出来たので、
合格点を与えられる前半だったように思う。

耐え忍んだ末に待っていたもの

お互いにハーフタイムでの選手交代無く迎えた後半。

日本は今大会ここまで全試合で失点しているので、
早い時間帯で追加点を奪いたいところだったけど、
久保の左サイドからのクロスをフリーの上田がヘディングシュートを狙う場面や、
久保が左サイドから切り込んで右足でシュートを狙う場面など、
立て続けに日本にチャンスが訪れるも、ここで決め切ることが出来ず。

決められる時に決めておかないと痛い目に合うというのは、
サッカーというスポーツにおいてよく語られる言葉だけど、この日の日本も例外は無く。

鈴木彩艷のキックをハーフウェイライン付近でカットされ、
イランの主砲・アズムンに縦パスを通されてしまうと、
アズムンは見事なターンからモヘビへラストパスを供給し、
後半10分にスコアを振り出しに戻されてしまう。

同点に追いついたイランは、
前半と比べて日本のDFラインの裏をシンプルに狙う攻撃を多用してくるようになると、
これにより、DFラインを下げさせられた日本はコンパクトな陣形が保てず、
選手間の距離が広がってパスが繋がらなくなり防戦一方の試合展開に。

久保と前田に代えて三笘と南野を投入するも、
イランに傾いた試合の流れは食い止めることが出来ず、
アズムンに立て続けに決定的な場面を作られるも、
なんとかオフサイドで難を逃れるというのが続いたけど、
いつ勝ち越しゴールを許してもおかしくないような状況だった。

特に板倉に関しては、前半から競り合いには勝てないし、
相手のスピードにはついていけてないしで、散々なパフォーマンス。

もしバーレーン戦の終盤に負った打撲がまだ治ってないのなら、
前半にイエローも1枚貰っているし、交代させた方がいいんじゃないかと思ったけど、
この試合展開でCBを途中投入しても試合に入りにくいだろうなとも思ったので、
森保監督としては難しい判断だったと思う。

ただ結果論としてはこの判断は悪手だった。

毎熊とモヘビが競り合ってペナルティエリア内にルーズに飛んだ浮き球に対し、
板倉と冨安が被ってしまうと、
これに反応したカナーニを板倉が後ろから倒してしまいPKを献上。

鈴木彩艷がこのPKをストップしたら、
グループステージから続く批判をチャラに出来るシチュエーションだったけど、
ジャハンバフシュの強烈なシュートはGKノーチャンスの神様コースに決まり、
後半アディショナルタイムに痛恨の勝ち越し点を献上。

予定されていたアディショナルタイムの4分を超えてから、
堂安と守田に代えて浅野と細谷を投入するという采配も、
メンバー表の名前を書き変える以外の効果は無く、
無情にも試合終了のホイッスルを聞くことになってしまった。

アジアカップに敗れても日本代表の戦いは続く

史上最強の呼び声高く、3大会ぶりの戴冠を期して臨んだ日本のアジアカップは、
ベスト8という不本意な結果に終わってしまった。

冒頭に書いたように、試合前に伊東純也の件があったので、
外部からの雑音に負けずにこの大会で優勝して欲しかったけど、
優勝したいのはイランをはじめ他のチームだって同じだし、そんなに簡単に行く話じゃないね。

まあ、今大会の日本は全試合で失点し、グループステージ2節のイラク戦でも敗戦するなど、
優勝の可能性は高いと言えるような安定感のある試合は出来ていなかったので、
この結末はある意味妥当だったのかもしれない。

2022年のカタールワールドカップではドイツとスペインを破り、
2023年から今大会のグループステージ初戦のベトナム戦まで、
国際Aマッチで10連勝を達成している中で、どこかで自惚れのようなものが出てしまい、
アジアの戦いの難しさを忘れてしまっていたように思う。(それは自分も含めてだな)

この敗戦からすぐに切り替えるのは難しいと思うけど、
来月から北米ワールドカップのアジア2次予選の戦いが再開されるので、
もう一度兜の緒を締め直して、また強い日本代表を見せて欲しいと思う。

イラン21日本
’28 守田英正
’55 モハメド・モヘビ
’90+6 アリレザ・ジャハンバフシュ